その音色はとても優しくて

何処か切ない音色だった





「その音色、私は好きです」
「フフッ、ありがとうございます」




――記憶にいる女

――記憶にいる男の人





どうしてこんなに、悲しくて、苦しくて、愛しいんだろうか

そしてあまりに似過ぎていた




――――――――
―――――
―――








「おーい、ミリ。笑い疲れてないで戻って来ーい」

「あ、あは…無理」

「よし、戻ってきたな」






ミナキの発言で私の笑いのツボをいい感じに突いてしまい、爆笑してから約五分後。なんとか治まったはいいけど逆に疲れてしまい満身創痍。若干明後日の方向を向く私にレンは目の前で手を振った。おぉ、視界にイケメンな顔が←

にしてもかなり恥かしい姿を見せてしまったもんだ。レンもそうだけどミナキやスイクンや蒼華が私に対するイメージが落ちちゃったかも(あは気にしないけど)。だって面白かったんだもんさっきの発言←

しかし、久々に爆笑した

ちょっとすっきり←





「いやぁ、お見苦しい所お見せして申し訳ない…プッ」

「そんなに私の発言が面白かったみたいだな、聖燐の舞姫…いや、ミリ姫」

「す、すみませ…ん?姫?」

「まさに姫そのものだろ?スイクンと並ぶ美女、まるで絵に書かれるお姫様みたいだからな。勝手に呼ばせて貰うぞ。呼び捨てだとレンと被るし」

「Σいやいやいや!恥かしいですって!そんな私美女でもないし…むしろブサ「「それはないから安心しろ」」…ふ、二人して言われた…!」





あぁ、穴があったら入りたい!いやマジで呼び捨てでいいからその姫やめて!てかどんだけレンに対抗してんだよ!

ちくしょう、二人だってかっこよくてイケメンじゃないか馬鹿野郎!恥かしくて言わないけどね!←←





「…で?お前は結局何しに此所に、つーかカントーに来たんだ?」

「お前がカントーにいるって聞いてな。後は珍しい色をしたポケモンがカントーに行ったっというマツバの話でな、お前の決着ついでに一度探そうかと思ったわけだ」

「決着ついでってなぁ…暇だなお前」

「お前に言われたくないぜ」






互いに真顔で言い合う二人

何故、真顔なんだ

いや、お前らお互い人の事いえんだろ。大丈夫、君達それぞれ目的あって此所にいるんだから(トレーナーって本当素晴らしい職業だ←


その時、私の隣りでいた蒼華がピクリと反応を示した







「…」

「蒼華?」






珍しい、どうしたの?と蒼華に目線を送ってみると、蒼華はゆっくりとこちらを振り向いた。瞳は何かを秘め、そして私に訴えていた

初めはよく分からず蒼華の瞳を見返していたが、ハッとした






「…まさか、あの子なの?」

「…」





"あの子"

それは、記憶の欠片にいつもいた、赤い色をしたポケモン

蒼華と同じで【昔】の私の手持ちと言うより、仲間だった存在。欠片で見たあの子はポケモンの通訳を担当した、【私】にとって、なくてはならない存在だった…。色違いなのは分かる。しかし、何のポケモンかは…まだ分からない

もし、蒼華の訴えがあの子で、ミナキが言う「珍しい色をしたポケモン」もあの子だったら…もしかしたら…!


私は高ぶる気持ちを抑えながら、未だ言い合う二人(おいおい)の会話に乱入した







「ミナキさん、その珍しい色をしたポケモンって…」

「え、あぁ、あのポケモンの事か。私がジョウトにいた時に目撃したんだ。親友のマツバ…知っているかもしれんがジョウトのエンジュシティのジムリーダー、マツバと一緒にな」

「へぇ、珍しいな。お前がスイクン以外に目をくれるなんてな」

「あのなぁ…お前は私をなんだと思っているんだ」

「スイクンオタク」

「分かっているじゃないか」






いや、認めるなよ






「なんだミリ、そのポケモンが気になるのか?」

「そんなところ」

「…へぇ」





意味深にこちらを見るレン

…あー、さっきもそうだけど、きっとこの先レンには嘘はつけなさそうだし見破られそうだ。堪えろ私、頑張れ私、負けるな私←

とにかく早くミナキから話が聞きたいので私は足速に聞いた






「詳しく教えてくれませんか?」

「構わないぞ。あれは私とマツバが気紛れにジョウトにある、とある森に足を踏み入れた時だったな。森には祠があってな、森の神様が奉られているんだ」

「それって…まさか」

「そうだ。―――ウバメの森だ」






ウバメの森

森の神様


…いやいやいや、ちょっと待って

それってさ、めっさポケモン絞れるよね。うん、ウバメの森で森の神様っていえば…あのポケモンしか、いないでしょ

困惑している私を余所に、ミナキは話を進める






「祠から、ポケモンが現れたんだ。資料で見たポケモンと同じだったんだが、色が違う珍しいポケモンだった。それは驚いている私達の周りを一周した後、パッと姿を消したんだ」

「ミナキ、その話が本当ならお前は一生に一度の奇跡の体験をしたんだな」

「みたいだな。アレには驚いたぜ、何せあのポケモンは滅多に現れない――幻のポケモンなんだからな」





ニヤリと笑うミナキに、フッと笑うレン。レンはもう、気付いた様だ。ミナキが言うそのポケモンが、あのポケモンだと。だからミナキに言ったんだ。「一生に一度の奇跡の体験」と――

敢えて名前を言わないのは、もうお互いがそのポケモンが何のポケモンだと理解している証拠


私はミナキに最後の質問をした









「ミナキさん、その子は――何色、でしたか?」







ニッコリと、私は笑った

ミナキはフッと笑いながら、興奮を抑えながら言ってくれた





「――資料ではそのポケモンは緑だったが、私達が見たのは、そう――燃える様な、赤い色をしていたポケモンだったな」
















「"  "様、僕は貴女に命を救われました。この命は貴女のもの、貴女の膨大な力を僕達が背負い、貴女が失ってしまった"見る力"を、この僕が変わりに見ましょう。そして、どんなに離れていても、僕達が必ず―――」










あぁ、やっと


やっと君の姿が、見えたよ














「そっか…あの子が…」

「…ミリ?」

「フフッ、なんでもないよ」








嬉しくてしょうがないんだ






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