時間も遅くなってきた、という事で今日一日エリカの家にお世話になる事になった。申し訳ない 案内された部屋はカスミのキラキラ洋風な洋室と違い、落ち着いた純和風な和室…日本を思い出す、そんな部屋(当たり前だ)。部屋も充分ってかかなり広く、まるでホテルにでも止まっている様だ。夕飯は私の為に特別に懐石料理してくれたみたいで、かなり豪華で美味しかった。布団はふかふかで、久々に深く眠れそうだ 白亜と黒恋は今日のバトルと昼の遊びで充分らしく、二匹仲良く用意された布団でもう夢の中。蒼華はまだ眠っていなく、部屋から見える夜空を見上げていた 「………」 私はというと、着物から寝間着姿(借りた浴衣)に着替え、明日の準備を終わらせて貰った調査表の中味を確認していた 「…紙一枚なら、淡々と見れるけど、写真を見た後で見ちゃうと…見れない…かな…」 私でも、情はある 履歴の様に縦に一列、日付と様子と実験内容が事細かく記入されてある紙は、本当によく此所まで書いたなぁと拍手を送ってあげたい。その反面、白亜と黒恋を知っていて、しかも二匹がこんな酷い実験を受けている…流石に割り切るなんて、私には出来ない 白亜は実験しても結果が出ない 黒恋はもう、進化出来ない …何も、言えない 「『研究チームリーダー・ナズナ、研究材料を持ち出し逃走』…ここで調査表は終わり…か」 ナズナが白亜と黒恋を持ち出せば、研究のする意味が無くなり、チームは解散。…簡単に想像がつく 私は封を閉じる 「…ん?待てよ。コロシアムの時にレンから聞いた話だと、研究員って普通にいたぞ…?」 レンの話は研究員は不慮の爆発で死亡者続出 しかしナズナは一人であの子達を連れ出して逃走。仲間なんていないはずだ。レンの話と照らし合わせると、火事があったのは逃走してからになる。逃走した後仲間を増やし研究に入ったか、それとも… 「…」 「蒼華、寝る?おやすみ」 空を見上げていた蒼華はそろそろ寝るといい、擦り寄ってきたので頭を撫でてあげれば、満足したのか白亜と黒恋の側に向かう。横で寝るのだろう。それとも、次の私の行動に気を使ってくれたのか 私はバックの中からポケギアを取り出して、とある電話番号を探し、ボタンを押した コールが数回鳴り響き、ガチャリと電話に出る音が聞こえた 私はニヤリと笑った 「はろろ〜んレンちゃん元気ぃ?」 『電話先じゃなかったらデコピンしてる所だぞコラ』 「あはは」 電話に出たのはレンだった 数日振りな彼はどうやら元気そうで良かった。ちょっと気が重かったのが少し軽くなったのが分かる しかしレンのデコピンは地味に痛いから遠慮願いたい← 「無事にグレン島に着いた?」 『あー…まだセキチクシティにいる』 「セキチクシティに?」 『変な野郎に捕まってな…なんとか撒いて、今やっと落ち着いた所だ。そっちは無事バッチ手に入れたか?』 「うん、お陰様で」 そういえばレンは「おめでとう」と言ってくれた。私はつい嬉しくてフフッと笑う しかし、変な野郎って一体…まぁレンは人気者だから、そういう人に追っかけられてもおかしくな(強制終了 『にしてもどうした。なんだ、俺がいなくて寂しいのか?』 「あはは。…まぁ、そんなところ?なんか声が聞きたくて」 ちょっと今の台詞恥かしいなぁと、最後にうふふと茶化して笑うと、電話先のレンの言葉が一瞬止まった いつもの調子で返されるかと思っていたみたいだ。ちょっとやっちまった感が← 『…何かあったのか?』 レンの真剣な声 何かあると、察した様だ 「タマムシジムリーダーエリカの管轄する当時ロケット団の潜入調査をしていた人達のリーダーさんに会ったんだ。マチスやナツメより内部に詳しくて、あの子達の事、ナズナについても結構事細かく聞けたんだ」 『!?』 レンの言葉を飲む声が聞こえ、びっくりしているのが分かる。まさかこんな所で聞けるとは思わなかったみたいだ でも、しかし 「…でも、ナズナがどうして逃走して、あの子達を連れ出した理由は、分からなかったみたいだけど」 レンが探している情報はナズナがロケット団を抜けた理由とナズナ本人 つまり私の情報は、意味を成さない 『内部事情が事細かく、か…』 「優秀な部下で、かなり詳しく記載されていてね。そのリーダーさんに、当時のあの子達の記録とナズナについての情報を調査表として貰ってある。もしナズナについて知りたかったら今度再会したら見せるよ」 『なら近い内に見せてくれ。この後の予定は?』 「シオンタウンに行こうかなって。ラジオ塔とか観光も兼ねてね」 『そうか。なら俺はあのオタク野郎から逃げる為にもそっちに行くぜ。そこで再会だな』 「り、了解…」 オ、オタク野郎って一体… なんだなんだ、レンはそのオタク野郎の対象にでもなっているのか。銀髪か。銀髪なのか← 「用件はとりあえずそれだけだから、レンは今日色々大変だったみたいだからゆっくり休んでね。ゴメンねこんな時間に」 『ミリ』 「ん?」 『無茶、するな』 「…!」 …言葉が詰まってしまった私は、レンの言葉に何も言い返せなかった 『お前も今日はジム戦で疲れているだろ。お互いゆっくり休んで、明日にでも再会しようぜ』 「…そ、うだね」 『後、そうだな…これだけは言っておくか 一人で抱え込むな』 「―――!」 『…さて、俺はそろそろ寝るぜ。おやすみな、ミリ』 私が返事を返す前に、レンが通信を切り、通信が途絶える。ツーツーと鳴り響く音が、私を現実に引き戻す 「……」 私はダラン、と腕を落とせば、ポケギアがポスッと布団の上に落ちる そして崩れる様に布団に倒れ込むと、ふわふわの布団が私の体重によってフシュ〜と沈んだ。なんだかそれが気持ち良くて、逆に笑えてきてしまう 「…」 「…あれ、蒼華起きてたの?」 「…」 寝ていた筈の蒼華が、心配そうにこちらを見ていた 私は身体を布団に預けながら、ひらひらと手を振って笑顔を作った。果たして、その笑顔がちゃんとしているものか、私には分からない 「大丈夫だよ、大丈夫」 だから、知らないよ レンの言っている意味なんて (闇と、比べれば) |