空を飛ぶ事は慣れている。自分の力を使い、とある方法によって重力を操り、自分の体を浮かせる。もちろん背中から(恥かしいけど)五対の翼を生やして飛ぶ事も出来る。容易い事、今やれよと命じられたらすぐにやってあげても良い。皆が驚いている隙にそいつを掴んで、ジェットコースターだ!と無料で体験させるのがちょっとした楽しみでもある

だからと言って、レッドにがっちりホールドされた状態で空を飛ぶのも結構心臓にすこぶる悪い(皆の気持ちがよくわかったよ)。しかもマサラ名物レッドさんはお顔がよろしすな方なので色々心臓あっぶないのよね(ドッキドキですね




「(何処まで飛ぶんだろ…)」




チラッと気付かれない様顔を覗けば、ただまっすぐ向いたレッドの顔。何かを考えていそうな、真剣な顔だ。私を拉致して飛び出してからずっと無言状態。正直困る、無茶苦茶困る。上にいるプテラもただまっすぐに羽を動かしている。私は何もする事が出来ないからただレッド達に従うだけ

遠くを見ると、ポッポの集団が列を成して飛んでいて、下を見れば段々タマムシティが離れていく。風がとても心地よいのは、何処に行ってもどの形で飛んでいようが同じだった


それからしばらくしてレッドとのーんびり無言のスカイ☆ツアーを堪能した後、レッドの指示でプテラは低空飛行を始める。徐々にゆっくりと地面に向かって行き、地面に足が着いた場所は景色の良い原っぱだった

最初に私が足を着き、次にレッド。すりよってきたプテラを撫でた後ボールに戻す。私は(いたたまれない気持ちもあり)原っぱから見える景色をボーッと見つめていた。レッドは私の隣りに並んだ





「景色、綺麗だな」





此所で初めてレッドは口を開いた

チラッと横を向けば笑うレッドの顔。…いつもの普通のレッドだ




「えらいタマムシティから離れたみたいだけど…。ここ、何処?」

「此所、結構良いところだろ?」

「…うん、そうだね?」





…いや、あのレッドさん…

答えになってな(ry




「やっぱりタマムシティにいたんだな。バッチは何個揃ったんだ?」

「バッチは四個、次はタマムシジムリーダーに挑戦するんだ」

「へぇー、エリカとか。つーことはマチスに勝ったんだな」

「うん。訳ありでコロシアムと同じダブルバトルで、マチスさんはヤマブキシティのジムリーダーのナツメと組んで戦ったよ」

「ナツメと戦ったんだな!だからバッチが四つあるのか〜。もしかしたら早くにグリーンと戦う事になりそうだな」

「うん、この調子で頑張るよ」





他愛な話で笑いあう私達


しかし、レッドは一体何を考えて私を此所に連れてきたんだろうか。あの時レッドと再会した時は何か急いでいた様な気がしたが、今の本人にはそれは見られない。むしろ落ち着いている。一体どうしてレッドはこんな行動を起こさせたんだろうか

つーかマジ此所何処だよ←





「そうだ、ミリに紹介したい奴がいるんだ」

「紹介したい奴?」




レッドはそう言って私に一つのモンスターボールを取り出す。何となく出してくるポケモンを想像出来た私の前にポイッとボールを投げる。ポンッ、と出て来たポケモンは、やっぱり私が予想出来たポケモンだった

夢の中で、レッドを助ける前に出会ったポケモン





「…ニョロ、ボン?」

「あぁ、俺の相棒だ」





夢にいたニョロモとは違って、成長し進化したニョロボン

…ポケスペで進化の内容を読んだ事があるのであまり驚かないけど、こうしてちゃんと無事に元気にいてくれる事にホッとする自分がいる。しかしニョロボン…こうして目の前で見ると本当に…たくましいなぁ←





「へぇ、名前とかは?」

「ニョロって言うんだ」





そっか、と私は言いながらニョロボンならぬニョロの頭を撫でる。ヌメヌメしてそうなイメージ(酷)な頭は意外にツルツルしていて気持ちが良い。頬を赤めながら照れるニョロに私の心はキュンキュンだ。ほら、厳つい顔がこうホワーンって

レッドはキュンキュンしている私とニョロを優しい顔で見つめていた。手を伸ばしニョロの頭を撫でるとニョロは嬉しそうに笑う





「握力はどれ位かな。よし、ニョロ握手だ。そして握ってみて」

「え、気になる所そこ?」

「流石はニョロボン。普通に痛い」

「いや、それ当たり前だから!」





しかし…レッドは一体何を考えているんだろう。なんかこの台詞さっきも言った様な気がするが、この際気にしない。ニョロを紹介してくれるのは万々歳のウエルカムだ。だけどなんで今なのか。紹介するなら君の手持ち全て紹介して←

この際、力を使って心の中を探ってみるのもアリかと思う。私はレッドの顔を盗み見ると、赤い瞳が私をまっすぐ向いていた

真剣な瞳だった。顔は笑っているが、瞳はそれを誤魔化さなかった。何かある…そう思った矢先、レッドの口が開かれた





「なぁ、ミリ」

「ん〜?」

「ニョロとミリが…いや、俺達三人がこうして出会ったのって、結構久し振りだよな」




ドキッ




「……、は」

「何時だったかなぁ、俺達が初めて出会ったのは。もう十年くらい前だったな。懐かしいな〜、ニョロはあの時のニョロモなんだぜ?立派に成長したんだぜ」




ドキドキ、トキメキをする様なものではない、嫌な意味で私の心臓は鼓動を速くする。たらり、と汗が伝わる程の危険信号を発する

懐かしむ様に言ってくるレッドに私は驚愕してガン見をする。この人は、レッドは、今一体何を口に出したのか

懐かしい?成長した?

…おかしいね、だってレッド、君は


お ぼ え て い な い ん で し ょ ?





「あぁ、違った」





何もかも分かった、真実を見た者の確信を得た揺るぎない赤い瞳が私を映す。レッドは今度こそ笑わないで真剣な顔をして私を見据えた





「俺達にとってこうして三人でいるのは久し振りだけど…





ミリには、ついさっきの事なんだよな?」






…ありえない

どうしてレッドは気付いたの?





「答えてくれ、ミリ」






逃げたくても、逃げれない






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