場面は変わり...


此所は、マサラタウン




「行ってらっしゃーい!」

「バリバリ!」

「行ってくるぜママ、レッド兄さん!夕方には帰ってくるから!」

「ピッカ!」

「じゃーなーサトシ!シゲルとケンカしないで仲良く行けよー!」

「分かってるって!」




サトシの家の前でサトシとピカチュウに、レッドとサトシの母のハナコとバリヤードが互いに手を振り合っていた

肩にピカチュウを乗せたサトシは笑顔で家を出る。これからサトシは途中でシゲルと合流した後にタマムシティのデパートに行く予定である。ご存じの通り、サトシはシンオウ地方を旅をしていて、今回は里帰りという事で故郷のマサラタウンに帰宅をしていた。それはシゲルも同じだった。そろそろ旅に出る頃合だという事で、ハナコのお使いもかねて荷物の調達をする為に、共にタマムシティへ。空を飛ぶポケモンを持っているので、そう時間はかからない筈だ。何かあれば(暇な)レッドが迎えに行く話になっているため、まずは安心

上機嫌な足取りで進む里帰りの後ろ姿を、レッドは姿が見えなくなるまで見送った




「サトシったら、シゲル君と一緒なら安心だけど、それでも心配なのよね〜」

「あー、ちょっと否定出来ないかな…でもアイツもやるときはやる男ですから大丈夫だと思いますよ」

「そうだけど…ほら、今まではカスミちゃんやタケシ君やケンジ君が一緒だったから良かったけど、今回はカスミちゃんとタケシ君はジムに行っちゃったでしょ?ケンジ君は博士の元にいるし…心配だわ〜」

「ちょ、おばさん。別にまた旅に出る訳じゃないし、サトシだって夕方には帰ってくるって言っていたから」

「あら、それもそうね」

「バリバリ〜」

「はははっ」






ハナコは「さぁて、お掃除お掃除」と元気ルンルンに家の中に入って行く。エプロンを着たバリヤードも「バリバリ〜」と箒を掃きながら同じ様に家の中へ入って行く。レッドはその姿を笑って見ていた




「タマムシティかぁ〜…今頃ミリもタマムシティかな。もしかしたら合流したりしてな」





コロシアムの一件により仲良くなったミリ。あの日から別れてもレッドの脳裏には必ずいたミリ。レッドの中にいるミリは太陽の様な笑顔で、白と黒のイーブィを抱えて楽しそうに笑っている。誰もが魅入る笑顔が、見ているこっちも笑顔になり、心が温かくなる




「また、会えるかな」




そう考えると自然と口元に笑みが出来てくる。端から見ればニヤニヤしている様で若干怪しい

そこで、レッドの脳内に最近出会った銀髪青年のレンが現れる。イケメンで格好いいレンは何故かレッドの脳内では勝手に悪夢の角や羽を生えた姿で現れて、ニヤニヤしながらこっちを見ている

哀しきかな、そんな変人あるまじきレンに運悪く気付いたミリは、笑顔でレンに向かって歩き出す…




そんな夢を見た





気分は最悪だ

あれ以来、レンの名前を出すだけグリーンが荒れ狂う気持ちが分からなくもない、そんなレッド


渇いた笑いしか出来ない

いや、マジで



まぁそれは置いといて






「ニョロ」




ポンッと一つのボールを投げれば、ボールから出てきたのはニョロボン

レッドの古株で、一番の相棒だ



「なぁニョロ…ニョロは覚えているのかな。ニョロと初めて会った時、一緒にいたあの綺麗なお姉さん…」




レッドの脳内では、ミリと被ったある人物が浮かんでいた




「俺さ、会いたいんだ。あの綺麗なお姉さんに。でも、あの綺麗なお姉さんをミリなんかじゃないかって思っちゃうんだ。ハハッ、おかしいよな、だってミリは俺より少し年上の二十歳位で、あの綺麗なお姉さんはそれよりも越えているんだもんな…。俺、どうすればいいかな。分からないんだ」




ニョロボンは困った様な、哀しい様な、そんな顔をレッドに向けていた。レッドはそんなニョロボンの頭をポンポンと軽く叩いた




「でも……だからって、だからって諦めたくない





はぁ〜…せめて顔や声の他に名前だけでも知ってりゃなぁ〜」


『あら、それ位なら構わないわよ』







何処からか、不思議な声が響いた

けどそれは人の耳には聞こえないのか、レッドは何も気付いていない





『そうね、最初はこの子にしようかしら。この子、意外にあの子に執着があるみたいだから、何かの進展に期待が出来そうね』



「つーか今日俺達何しようか〜」



『丁度あの子の力も動き出す時期だし、これぞまさにナイスタイミングね』



「とりあえず飯食うかー……ってアレ?なんだか急に眠くなってきたぞ」





レッドの視界が段々かすんでくる。込み上げてくるのは自分の欠伸で、視界に入るニョロボンがアワアワと慌てている姿があった

アレ、おかしいな。俺元気ピンピンなのに…、そう思っている中、徐々に瞼が重くなっていく。しまいにはガクッと体が崩れていく。慌ててニョロボンが自分の体を支えている姿を、まるで他人事の様に見つめていた

フフッ、と女の笑う声がレッドの頭の中に響いた





『貴方の願い、このフレイリが聞き届けたわ。さぁ、貴方の思うがままに進みなさい



赤く燃える様な瞳を持つ、苦難を乗り越えてきた少年レッド。今此所で、過去に逆上り真実を観ていきなさい』




その言葉は、はっきりとレッドの頭の中に聞こえてきたのだった




そして目の前が真っ黒になる









* * * * * *








ミリは様々な力を扱い、我が物にまで扱う事が可能だ。扱い方が分からないだけで、コツさえ覚えればそれは膨大な力に変わる程に。その体に宿る膨大な力は勿論、力を求める者達には恰好の的なのは、ミリ本人承認済みだ。ミリは力を制御をし、力を使う事を覚える為に様々な世界に足を踏み入れる事になる。…今のところ、は

師であり親友でもあるフレイリからも色々アドバイスや実際に不思議な力で色々助けられている為、その膨大な力は爆発せずに済んだ。ミリの体に宿る膨大な力にとって、フレイリの存在は精神安定剤の様な物である。勿論それはミリ自身にとってもそうであり、フレイリに幾度となく生命が危うい危機にも命を救ってくれた事がある

しかし、フレイリの力でも、どうしようも出来ない事があった





「ふぁぁー…」

「どうした。今更になって眠気が襲ってきたか?」

「あー、ぽい」





力の影響か、普段は睡眠を取らなくてもいい体が、急に眠気を欲する





「大丈夫か?…いや、大丈夫じゃないな。休憩するぞ」

「う…ごめん、レン」

「気にするな。タマムシティには目の先だ。何も問題はないぜ。時間が経ったら起こしてやる」

「ありがと…」

「…寝るの早いな」





ミリの力は膨大だ

それ故に、不安定だ


ミリの中の不安定な力が意思関係なく働き、ミリは夢の中へ引きずり込まれる。その夢はタチが悪くて、度々ミリを悩ます原因にもなる


その夢は、空間を造り、時空を繋がらせ、時をこえる








今回は、何処へ行くのか






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