「ねぇねぇ!今の見た!?」

「見た見た!すっごい綺麗な人じゃんね!隣りにいた人もかなりのイケメンじゃん!つか格好いい!モデルさんかな!?」

「あの女の人って前テレビで映っていた人じゃん!長身でスラリとしていて…あぁ!なんて美しいのかしら!お兄さんも格好いい!イケメンで身長高いからお似合いよ!写メ撮るわよ!写メ!」




「レン、人気者だね」

「お前も人気者だな」




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外はもう夕焼けが広がり、ジムから見える海はオレンジ色一色に染まっていた

ジムの近くにあるベンチに、レンと私は腰を下ろしていた。レンは足を組み疲れた様子でオレンジ色の空を見上げる。私も正直疲れていて、自分の服の色と同じ色をした海を見つめていた

もうすぐ日が暮れる事もあるのか、回りは人やポケモンはいなく、結構静かだった。ポーッと船が鳴らす汽笛が響き渡る位だ




「…疲れたな」

「そう、だね」




レンがボソッと呟いた


今日は、疲れた

精神的に疲れているので、何かもうやる気が起きない。マチスとナツメから聞かされた話は私の精神を磨り減る事ばかりで、本当に殺意が沸いてくる。見ていられなかった。あの写真は。レンがいなかったら多分私は見境なく怒り狂っていたに違いない。そんな自信が、今でもある

今は怒りは収まっているが、逆に冷めているのが分かる。そのせいか、もっと疲れを感じてしまう




「…何か腹も減ったな…そういえば俺昼食ってなかったな。なぁ、何か食い物あるか?飲み物でもいいぜ」

「んー?あ、あったあった。はい」

「サンキュ…ってチョコレートかよ!しかも丸ごと板チョコ!?」

「いやぁ、ほら、よくあるじゃん。どっかの父親が子供の頃夢見てた事に『誰にも取られず一人でがじりつきたい』って言うの。私もその父親の夢に便乗して買ってみたけど食べず終いで」

「誰だよその父親。しかもつまらない夢だな」

「実はそれ私の父親」

「どっかの父親じゃねーだろ完璧お前の身内じゃねーか」

「父親曰く『鼻血を止めるのに苦労した』なーんて言っていたなぁ…」




いつの日か、スーパーのお菓子売り場で板チョコを手にしていた父親が突然言ってきた時にはかなり笑った記憶がある(管理人の実話

思い返してみるとやっぱり笑えてくる。プッと吹き出し笑ったら、レンは安心した様に笑った




「ようやく笑ったな」

「!」

「やっぱりお前はその方が一番いいぜ」




ポンッとレンの手が私の頭に乗る。レンの手が優しく私の頭を撫でる

どうやら私は笑っていなかったらしく、ずっと無表情だったみたいだ。さっき笑って実感した。使わなかった頬がピリピリしている

レンは気を使わせてしまったみたいで、申し訳ない気持ちでいっぱいだった




「レン、ごめん」

「何で謝るんだ」

「…なんとなく」




レンの手は温かかった

安心感を感じさせる手で、ずっと撫でて貰いたいと思ってしまうくらいで




「(でも、何でだろう…)」








何で、こんなに懐かしいと思うんだろう







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