「あー、そうだったんだ。だから逃げずにいたんだね。あー、んじゃ自己紹介したほうがいいよね


初めまして、私は今の【異界の万人】十代目のミリと言います。まだ記憶が思い出していないから初対面みたいになるけど。そこはまぁ、ね。よろしくね、ミュウ」

「ミュー!」






昔の【私】を知っているなら隠す必要は何もない。なるほど、知り合いだったからこの子は当たり前の様にいて、私はおかしいだろっと思っていても、すんなりと受け入れていたんだね

ミュウは嬉しそうに私に抱き着いてきた。その小さな体を受け止めて、抱き締め返せば懐かしさが一杯込み上げてきた。小さな頭を撫でてあげれば、気持ち良さそうにすり寄ってくる





「…そういえば君って、囚われる事を知らない子で、自由気ままな性格だったようなぁ…」

「ミュー」

「…んーと?…会いに来てくれたって事でいいよね?」

「ミュ!」

「ありがとう」





その時、ベッドの横にある内線電話が鳴り響いた

突然の音で、丁度食べ終えて満足げな白亜と黒恋が飛び付く様に驚き、蒼華は首をそっちに向ける。取り外し可能な受話器を紐で巻き取ると、それを私に差し出した

鳴り響く受話器を受け取り蒼華にお礼の言葉を一言呟き、私はボタンを押した。相手はもう分かっている。私は髪をかきあげ耳に受話器を当てた






「はい、もしもし」

『おはようミリ。良く眠れた?』

「おはようカスミ。お蔭様で旅の疲れが取れた位清々しい朝だったよ」

『それは良かったわ!朝食が出来たから夕飯食べた場所に来てちょうだい』

「了解」










「ミュー」




電話を切り、受話器を元の場所に置いたその時、私の腕の中にいたミュウが腕から離れて宙に浮いた





「行くんだね?」





そう問い掛ければミュウはコクリと頷いた

特別寂しいとか悲しいとかそんな気持ちにはならなかった。まるでそれが当然の様で、私は微笑みながらミュウの小さな手に人差し指を絡めた





「君の名前は、"瑠魅"」

「!」

「ピンクちゃんは流石に駄目だからね。私なんか名前付けちゃっていいのか分からないけど」

「ミュ!」

「気に入ってくれた様で嬉しいよ」





嬉しさを体一杯に表現するかの様に私達の回りをグルグル飛び回る



「ミュウ、おいで」

「ミュー」





…記憶の中では、昔の【私】がミュウの事はニックネームで呼んでいた記憶はない

何でニックネームをつけなかったは分からない。まぁ、付ける付けないはお互い人それぞれだけど。ニックネームを付ける事で私、紫蝶美莉自身の存在を少しでも理解して欲しかったからだ





「またおいで。私はいつでも待っているよ。白亜も黒恋も蒼華も君が遊びに来る事を楽しみに待っているから」

「「ブィ!」」

「…」

「ミュー」

「さぁ、瑠魅。いってらっしゃい」





いってらっしゃい



その台詞を言ったら、ミュウ…いや、瑠魅は驚いた表情をした気がした。でもそれは一瞬で、瑠魅は嬉しそうに「ミュウ!」と一鳴きし、手を振ってテレポートで姿を消した




「いってきます、って言ってくれたのかな」







私の呟きに、黒恋がニコニコしながらすり寄ってきた






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