「さて、皆」 センターに戻った私は自室に移動し、自室で仲良く戯れている自分の手持ちのポケモン達に声を掛ける 白亜と黒恋、そして昨日仲間になった…水色の色違いをしたスイクン、蒼華 「そろそろ私達も行こうか」 「「ブーィ!」」 白亜と黒恋はなんやかんやで昨日出会ったばっかの蒼華に最初は警戒心を持ったらしいが、私と蒼華が(訳有りな)知り合いと分かると、既に仲良しに 蒼華は警戒心はからっから無く、むしろ慣れた様にやってくる二匹の双子を相手にしている。目を細め、慈悲が溢れる瞳を見ると自然と安心する自分がいた あぁ、また私は彼と一緒にいられるんだ、と 「蒼華」 「…」 「改めて、私の名前はミリ、紫蝶美莉。【異界の万人】の十代目、です。君の事は記憶の欠片で見させてもらった」 忘れちゃいけないのは私自身は蒼華と初対面だと言う事 私は蒼華の美しいたてがみを撫でながら微笑む 「転生しても私はミリという人格で、私と蒼華は初対面。記憶の欠片と言っても断片的で君の事はまだ全てを知っている訳じゃないから、そこは知ってもらいたいんだ」 「…」 「…こんな右も左も分からない私だけど、私達に着いてきてくれる事に感謝するよ」 既に蒼華の意志はオツキミヤマで確認済みだ 彼は私に着いて行く、としっかりとした目で訴えてきた。それは私としてなのか、【私】としてかなのかは分からない まぁ…そこは深く考えないでおこう 私は【私】だし 【私】は私だからね …今はこうして置き換えて考えられるけど(つまり客観的に)、その内錯覚が起きる程定着するからなぁ、怖いものがあるぜ 「…あの子達、どう?」 「…」 あの子達、つまり白亜と黒恋の事を指す 蒼華から視線を外し、二匹を見てみれば、もうじき出発にも関わらず気持ち良さそうに寄り添って寝ていた 「無事、生まれたよ」 「…」 「生まれた後色々あったけど、こうして私達は会う事が出来た」 「…」 「…まだ昔の【私】としての人格を思い出していないけど、これだけは私でも言える ――ずっと、待っていてくれて、本当にありがとう」 私は蒼華を抱き締めた 抱き締めると言うよりもしがみつくって言った方が合っていて、ひんやりとする体が心地よい 蒼華の方はしがみついた私の体温を感じながら、自身の取り巻く紐を動かし私の頬を触った。その紐は私を安心させ、いつの間にか私は頬に涙を流していた これは私が流している訳じゃない 「…」 蒼華は静かに流れる涙を見つめていた → |