その頃レッドは真剣な面持ちで、ある人物の所に向かっていた。手には二つのボールが握り締められていて、レッドは歩きながらボールを見る。ボールは以前と違ってカタカタと揺れていない。レッドはボールから目を逸らすと、コンコンとドアを叩く

「どうぞー」と元気のいい声が響き、レッドはドアを開ける。そこには旅支度をしているカスミだった





「レッド、まだ此所を出る時間帯じゃないわよね?」

「カスミ、一つ…聞いてもいいか?」

「どうしたの?藪から棒に」

「…昨日、ミリが言った言葉、覚えているか?」

「!……」






旅支度をしていたカスミの手が止まる

レッドの方を見るカスミは―――何処か自嘲した笑みをしていた。まさかレッドがこの話を持ち出すとは思わなかったみたいだ。困惑した顔から小さな溜め息を漏らすと、カスミは口を開いた





「もちろん…覚えているわ。「あなたの心の中に、あなた自身が分かっているはず」…あの時、一体何の事だか分からなかったの。けど眠りにつく前に…分かっちゃった。あの人の言いたい事が」

「それってやっぱり…」

「えぇ、そうよ。昔レッドと初めて出会った時にレッドが捕まえて、ふたごじまでクラブと交換した…ギャラドスの事よ」





ロケット団によって実験台にされた、ギャラドス

始めは凶暴がもっと凶暴だったギャラドスだったが、今はレッドの大切な仲間である。あれだけ凶暴だったギャラドスは今では小さな蝶々を追いかけるくらい穏やかになってくれた←





「カスミとミリが戦っていて、ミリがカスミにあの台詞を言った時…ギャラのボールが揺れたんだ。まるで答える様に。その前には俺のブイもボールが揺れたんだ」

「…エリカに聞いた事があるわ。確かレッドのイーブイはロケット団の実験台として…あ、今はエーフィだったわね」

「あぁ、そうなんだ。カスミの言う通り、俺のブイはロケット団の実験台として…」

「…でも、それがどうあの人と関わりがあるのよ?」

「さっきグリーンと話していたんだ。推測なんだけど…多分ミリのあのイーブイ達は俺達のポケモンと同じ…ロケット団の実験台にされたんじゃないかと思うんだ」

「!?」





驚きに見開くカスミの瞳

信じられないという気持ちの半面、あぁやっぱりと少し心の何処かでは核心があった





「…なら話は分かるわ。あの人の言いたい事…それはレッド、あなたにも言っている事よ」

「うん、分かってる」

「で、どうするの?あの人に聞くの?あのイーブイ達の事を」

「時期が来たら話してみようかなって思ってる」





レッドの瞳の奥では


オレンジ色の服を着た綺麗な"お姉さん"が、自分の頭を優しく撫でている姿



こちらに向ける太陽の様な微笑は、何故かミリと被ってしまう―――







「(俺は、諦めない)」






レッドはギュッと拳を握った








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