先に動いたのはカスミのスターミーだった 「先手必勝よ!スターミー、こうそくスピン!」 「イワーク!しめつける!」 スターミーに続いてタケシも応戦してイワークに指示を出す こうそくスピンでやってきたスターミーを二匹は同時に避け、イワークが繰り出した長くて岩の胴体をスルリと躱していく 小柄な身体だからこその連携。まぐれだと思いまたカスミとタケシは同じ指示を繰り出すが、二匹はまたもやスルリと躱していく。それを何度か繰り返すと、不意にカスミが口を開く 「…ねぇタケシ、今あの子達…指示無しで避けたわよね?」 「あぁ。ミリさんは一言も何も発してはいないぞ」 少し戸惑った顔をするが、顔は正面に向いたままポツポツと話す。実際にミリの顔を見れば一言も口を開いていなく、冷静に、且つ鋭い目でバトルを見ていた それならこれは!とカスミはスターミーに指示を出す 「スターミー!スピードスターよ!」 「…!考えたなカスミ!」 スピードスターは必ず攻撃が当たる技の内の一つ。しかもスピードスターは二匹同時に攻撃が出来る広範囲系の技だ カスミの指示でスターミーの回りに沢山の星が輝きだした。星はそのまま一直線に白亜と黒恋に向かっていく 「―――白亜、黒恋」 「「ブイ!」」 ここで始めて口を開いたミリの言葉に二匹は頷く すぐさま黒恋は白亜の前に立つと、二人を囲む様な不思議な壁が立ち塞がった。スターミーが繰り出したスピードスターは不思議な壁に衝突し、やがて消えていった カスミは驚きの声を上げた 「嘘!何で効かないのよ!?」 「あれはきっとリフレクターだ!リフレクターでスターミーのスピードスターを打ち消したんだ!」 タケシの冷静な判断にミリは口笛を吹く 「リフレクターは打撃の技を対抗出来る様に強くしたもの。今私の黒恋は一枚のリフレクターだけじゃない。一枚、また一枚はリフレクター、さらにもう一枚はひかりのかべを貼った合計三枚の壁で守られている。頑丈な壁よ?なかなか突破る事は出来ないよ」 「…考えたな、ミリの奴。だが普通リフレクターやひかりのかべはあの様に使う事は難しい…いや、考えた事はなかったな」 「それをやりのけたあのイーブイがすごいね…」 感心しながらも、冷静に分析するグリーンと隣で慄くシゲル 「ならこれはどうだ!イワーク!いやなおと!」 イワークから独特でキィィインと耳が曲がってしまう様な痛い音が、コロシアム会場に響き渡る 殆どの者達は自分の耳を自分の手で隠して耳の痛みを抑えている これは効くかと思いミリを見れば、ミリ自身へっちゃらだと言う様に冷静にバトルを見ていた。タケシは驚いてイーブイ達の方を見てみれば、全然効いていなかった。三重に作られたバリアの中で二匹は平然としていた。回りの皆も彼女らの姿を見て目を見張った ミリは読みが当たって嬉しかったのかニコニコしながら説明した 「やっぱりそうくるかと思って三重バリアの中に、しろいきりとしんぴのまもりをやっておいたんだ」 「…!」 しろいきりは自分の能力を下げない効果、しんぴのまもりは状態異常にさせない効果がある 目を凝らして見てみれば、バリアの中が白い霧で囲まれていた。もっと目を凝らせば妙にキラキラしたものがあった。多分あれはしんぴのまもりだろう すごいことをしてくれたな、とタケシは思った。ただ攻めるでも守るでもなく、ちゃんと先を見て考えて戦っている。すごいトレーナーとも思った。何故、こんな強いトレーナーが表舞台にいなかったのか不思議に思うくらいだ しかもいやなおとをミリ自身食らったのにも関わらず全然へっちゃらときたもんだから驚くしかない 「待って!しんぴのまもりやしろいきりなんて普通イーブイは覚えないはずよ!なんであなたのイーブイは使えるの!?」 カスミの言い分も確かにあった よくよく考えればリフレクターもひかりのかべも覚えないはずだ。覚えるとすればイーブイの進化形のエーフィくらいだろうか。その事を考えるとイーブイ達の偉業の謎が深まるばかりだ カスミが問うと、ミリは一瞬無表情に変わった。でも本当に一瞬で、何事もなかった様にミリは微笑んだ 「カスミさん…それは貴女の心の中に、貴女自身が分かっているはずよ」 「…!わ、私の心…私、自身…?」 困惑し、戸惑った顔をしてカスミはミリに答えを求める。…が、ミリは微笑むだけだった 「(まただ…)」 レッドの腰にあるボールがカタカタと揺れる。前はエーフィのブィのボールだったのに、もう一個増えている。そう、このボールは…カスミから貰った、ギャラドスのギャラだ 「(―――――まさか!)」 「では次はこちらから行かせて貰いますよ」 パチン!とミリは指を鳴らしたと同時にパァアン、と白亜の体が光出した → |