灼熱の炎に包まれたトリデプス 相性は、抜群 トリデプスはこの技でかなり効いたらしいが振り切る体力は残っていたらしく、自身の顔を使ってかえんほうしゃを防ぐ。防がれたかえんほうしゃは四方八方に放射された ミリはこれ以上やると無意味だと判断し、黒恋にやめるよう指示をする。黒恋は放射を止め、高くジャンプして白亜の隣りへと移動した 「……トリデプス、イケるか?」 「ガァア!」 アレだけの炎を受けときながらも果敢に立ち向かうトリデプスに感心し口笛を吹く 「やる気満々ですか」 「ブイ」 「分かってるよ、白亜。…黒恋、白亜に向かってかえんほうしゃ!」 「「Σ!?」」 予想だにしなかったミリの言葉に、耳を疑うゴウキとトリデプス 彼らが唖然としている間にも、悠長せず黒恋は白亜に向かってかえんほうしゃを繰り出した。ミリの指示が聞こえなかった観客は黒恋の行動に目を開いた。今見えているのは黒いイーブイが白いエーフィにかえんほうしゃを繰り出している―――ヤケでも回ったか。殆どの人が思ったに違いない でもミリはニヤリと笑っていた それに遅れて気付いたゴウキであったが、既に時は遅く、またゴウキは驚愕する事になる 何せそこには、そう 「進化したはずのエーフィが、ブースターに進化しただと…!?」 真っ白いブースターが、口から灼熱の炎を漏らしながら立っていた トリデプス、その他観客が驚いているにも関わらず、ブースターに進化した白亜はトリデプスに向かってかえんほうしゃを繰り出した。もちろんそれは黒恋のかえんほうしゃよりも威力は倍増――――トリデプスは体ごと威力負けして吹っ飛ばされた 「トリデプス!」 「ブースターの特性は"もうか"…」 「…!?」 「もうかは炎タイプを受けた時、炎が強くなる。黒恋が白亜にかえんほうしゃを命じたのはその為です」 「しかし!攻撃を浴びせた時はエーフィだった筈だ!」 「見えませんでした?黒恋のかえんほうしゃを食らう前の白亜、進化特有の光を放っていたのを」 優れた洞察力と観察眼がなければ、進化したなんて誰も気付かない。実際に光って姿が変わったのは約0.1も満たない。かなりのスピードで白亜はエーフィからブースターに進化したのだ 後ろで見ていたレッドはその進化の速さに驚きを隠せないでいた。レッドも手持ちがイーブイだった頃、クチバの石で三種類の進化が可能だった。が、どうしても進化には1秒の時間はかかっていた。何処の進化よりも断然速かったが、ミリの白亜はそれ以上を上回っていた 「…トリデプス、平気か?」 ゴウキは吹っ飛ばされたトリデプスに声を掛ける 流石に白亜の攻撃が効いたらしいが、何とか懸命に立っては平気だとゴウキに返事をするトリデプス。しかしやはり、辛そうだ。かれこれ後一回が限界か、とゴウキは判断した 「…これが最後らしいな」 「…みたいですね」 「悪くはなかったぞ、お前との戦い」 「私もです」 二人は笑う それが次が最後だと分かったのか、観客は盛大に歓声を上げる ゴウキはビシッと白亜と黒恋に指をさし、ミリもまたバッと手をふり、二人同時に言い放った 「白亜、黒恋!かえんほうしゃ!!」 「トリデプス!はかいこうせん!!」 白亜と黒恋の口から灼熱の炎がトリデプスに襲いかかり、トリデプスの口からも鋭い閃光が二匹を襲った 二つの攻撃は中央でぶつかりあい、その威力は強いと言っている様にたちまち大きな塊に膨らんでいき、そして―――― ドガァァアン!! フィールド中央に、大きな爆発が発生した 爆発はトリデプス、白亜、黒恋を包み、トレーナーのゴウキ、ミリをも飲み込んだ 大きな爆発に大きな煙がフィールド全体に広がり、幸いな事に観客席まではいかなかった 「「――ミリッ!」」 「「ミリさん!」」 控室の入口に入ってきた煙を避ける為に、グリーンの手持ちのピジョットとサトシの手持ちのムクバードがかぜおこしで煙を吹き飛ばしていた 今にも駆け出して安否を確かめたい。その思いを何とか堪えて先程までミリがいたフィールドに目を向ける。もくもくと煙がたち込む中、果して彼女は無事なのか、それだけが心配だった その時だった 「――舞い狂う風の嵐よ、我が名の元に鎮まりたまえ――」 歌う様な声が、フィールドを包み込んだ → |