ダイゴ兄ちゃんとシロナ姉ちゃんとゲン兄ちゃんとデンジ兄ちゃんとオーバ兄ちゃん! レン兄ちゃんとゴウキ兄ちゃんとナズナ兄ちゃんの匂いもあるね! みんなの匂いがあるね! 一人知らない匂いがあるね! うーん、誰だろうね うーん、分かんない 「ブイブイ」 「ブ〜イ、ブイ」 この匂いをたどればみんながいるのかな? この匂いをたどればあるじ様に会えるのかな? ………… ………… 「「―――ブイブイ!」」 そうと決まれば行こう! みんなとあるじ様に会いに行こう! ―――――――― ――――― ―― 「ッおい…皆、無事か?」 「あぁ……びっくりした…」 「シロナさん、大丈夫ですか?」 「えぇ…」 「さっきのは何だったんだ…?」 突如床から輝き出した不思議な光の襲来により、先程いたはずの広場から知らない広場に飛ばされてしまったレンを除いた突入チーム達 光が落ち着き辺りを見渡したら先程の場所ではない事に気が付いた者達はそれはそれは驚く事になる。ランスも居ない、スイクンによって氷結された氷の山が無い―――先程の光といい、一体自分達はどうなってしまったというんだ 「此処は…」 「何処かに飛ばされたのは、間違いない。…まさかパネルワープで飛ばされるとは流石に思わなかった。『彼岸花』はここまで技術を向上させていたとは驚きだ……」 「パ、パネルワープ!?」 「…それはすげーな。その技術、ナギサにも造ってやりてぇな」 「皆、気をつけるんだ。何が起こるか分からない」 「団体を乱すな。一旦チーム事に纏まるぞ」 唯一あの光の存在に気付いたナズナがそう説明すると、周りの者達は驚いて自分の足下に視線を向ける。この床が、まさかパネルワープ出来る仕組みになっていただなんて、到底信じられるものではない。ナズナの言う通りだったら自分達はそのパネルワープに飛ばされた事になる。一体何処に飛ばされてしまったのか―――今の彼等には知るすべはない ゲンとゴウキの掛け声で再度チームの連携を組もうとした時だった ボールから出ていたスイクンの―――否。スイクンのボールが勝手にゴウキの腰ベルトから外れて、ゴウキの意思に反してスイクンをボールに戻してしまう 「ッ!?―――どういう事だ」 「ボールに触れてもないのに…」 「大変です!今すぐ自分のボールを見て下さい!ボールが開きません!」 「「「「「!!!」」」」」 ゴヨウから出た、普段の彼には似つかない焦りの声。彼の声に他の者達も慌てて自分達のボールを取り出し、開閉ボタンを押してポケモンを繰り出そうとする しかしボールは開閉する事なく、何の変化も起きる事が無かった。どのボールも全て開かれる事がなく、全員に動揺が走った。こんな事が、こういう状況に起こってしまうだなんて、誰が予想したか 「…どういう事なの?」 「開閉ボタンが、壊れたというのか…?」 「いや、それはありえない。年期が入ったボールはともかく、特別変な衝撃を与えない限りボールがそう簡単に壊れる仕組みにはならない。…それは僕が保障しよう、デボン社のプライドにも懸けてね」 「なら、一体…」 「……強い磁場が起きているのかもしれない。もしくは此処はボールに何か細工を施す怪電波が放つ事で、こちらのポケモンを使わせない様にさせている可能性もある」 「ナズナさんの言う事に間違いはない。ルカリオがボールの中から言ってくれている。『強い力によってボールを開かせる事が出来ないと』―――これは、マズい状況だ」 せっかく催眠怪電波の影響を受けないポケモンを見つけ、数少ない戦力で挑んでいたというのに―――そのポケモンですら、このような結末に追い込まれてしまうなんて 先手を打たれた。八方塞がり。緊急事態とも言えるこの状況は、本当にヤバいとしか言い様がない。自慢のポケモンがいたからこそ、自分達はこの場に立っていられた。もしこんな状況で操られたポケモン達の奇襲があったら―――全員に、嫌な悪寒が走った その時だった 「―――フフッ。とうとうこっちにまで辿り着けるなんて、アンタ達も中々やるわねぇ。それか、運が良かっただけかしら?」 「流石はナズナ達、そしてその取り巻きの方々と言うべきでしょうか。一応こちらに到着する事は想定していましたが、あのラムダとランスの手から逃れれた事には評価しましょう」 「「「「「「!!!」」」」」 声が、響いた 女と男、二つの声が ただの無機質な壁だったソコが開かれ、現れたのは二人の男女。水色の短髪の男、真っ赤な髪の女、そして―――Rの文字。先程のラムダとランスと違い、彼等は白い服を着ていた 新たな敵を前に、突入チーム全員は身構えた 「またロケット団…懲りねぇ奴等だな」 「彼は確か、アポロとか言う…」 「今度は知らない女が出てきやがった」 「私の事は聞いていないみたいね。アテナよ。アンタ達の事はよーく知っているわよ?…ウフフ、こうして見るとイケメンばかりだわね!こんなイケメンにチヤホヤされている聖蝶姫が本当にムカつくわ〜」 「私の事は存じているみたいなので敢えて自己紹介はしなくてもよろしいでしょうが、一応しましょう。アポロです、どうぞ宜しくお願いします」 カツリカツリとヒールの音と靴底の音を鳴らしながら、彼等は余裕の姿勢を崩さない。悠長に自己紹介をしつつも、好奇な眼はくまなく全員の品定めに余念がない アテナ、そしてアポロを見るナズナの隻眼が―――鋭く光る 「アポロ、それからアテナ…お前も愚かな事を」 「あらナズナ様、お久し振りです。会いたかったですよ。私もつくづくびっくりしましたわ、貴方が生きていてくれていて、そちら側に成り下がってしまった事にね。………ウフフ!随分イイ男になっちゃって!―――その顔が恐怖に歪む姿を早く見てみたいわ!」 「かつての上司をこうして見下げるのは、中々面白い光景ですよ。手持ちも使えない得意のハッキングも使えない、まさに八方塞がりな状況―――無能に成り下がった今のナズナ様は、なんて滑稽なんでしょうかね」 「―――ッ!貴様等アアアアッ!!」 「Σちょっ、落ち着けナズナ博士!」 「冷静になってくれ!」 「「ナズナさん!」」 遂にナズナの堪忍袋の尾が切れた。否、先程のラムダの件でも十分切れていたというのに、更なる追い討ちを掛けられた事により―――ナズナは完全に冷静を失ってしまっていた 無理もない。今までも彼等部下達の愚行には、ほとほとはらわたが煮えくり返ていたのだ 今にもその顔を殴ってやらないと気が済まない!と駆け出そうとするナズナを全員は制した。お前が一番冷静でいられないでどうするんだ、気持ちは分かるが落ち着いてほしいと――― アテナが面白そうに嘲笑った 「アンタ達が必死になって探していた怪電波装置は、此処にあるわよ」 パッ、とある所に照明が照らされた 暗くて見えなかったが―――自分達の居場所から数メートル離れた雛段の上、階段の先にソレはあった。幻影で造られた装置と同じモノが、静寂を守りながら活動を続けていた。 まさか目の前にあんなモノがあっただなんて、と全員は驚いた。少なくとも幻影で造られた装置は機械音がしていたし、ランプやモニターの光でこの階は薄暗く照らされていたというのに―――理屈はともかく、アレが本物なら問題はない。オーバは駆け出して雛段の上にある装置に向かおうとした ――――が、しかし ドンッ!! 「ブッ!?」 「あらやだ、ブサイク」 「面白い顔してますね」 「ッうるせー!なんだよこれ壁か!?壁なのか!?」 オーバの行く手を塞いだ、見えない壁。顔面強打してヒリヒリ痛む顔を擦りながら、オーバは悪態を吐いた 触ってみると確かに見えない壁がそこにはあり、全員が触る事でソレは円形に自分達をグルリと囲んでいる事が分かった 一体これは何なんだ、一抹の嫌な予感に追い討ちをかける様にアポロが口を開いた 「えぇ、実は私達とお前達の間には見えない壁がありまして―――所謂、見えない檻が存在します。勿論、その檻の中にはお前達が入っているんですけどね」 「「「「!!!??」」」」 「しかもこの壁はこのボタン一つでこちらからはお前達の姿はシャットアウトします。お前達から見たら見えない壁なのは変わりありませんが、こちらは全くただの壁、いえ、マジックミラーと言った方がよろしいでしょうか?勿論、防音完備な壁です。ポケモンも使えないお前達を閉じ込めるなんて動作も無い事です」 「「「―――!!!!」」」 「ッ―――舐めるな!!」 動いたのはゴウキだった その得意な剛腕を振り上げて、見えない壁に向かって叩き付ける。バン!と音を立てるも一切微動だにしない見えざる壁に、もう一度腕を振り上げようとした ――――しかし。愉快そうに笑みを深めたアポロが、小型装置のボタンを押した そして―――― バチバチバチッ! 「ッ―――グッ…!」 「「「ゴウキ!!」」」 「「「「ゴウキさん!」」」」 「流石の【鉄壁の剛腕】も分厚い壁を殴るのは至難の業でしょう。勿論、万が一の事を考えて内側の壁には強い電気を流しておきましたので…感電死されたくなければ馬鹿な事を考えない方がよろしいかと」 「「ッ!?」」 「死にたくなかったら大人しくしていなさい。アンタ達はそこで指を咥えて見ている事ね。そして目の前に怪電波装置があるにもかかわらず、何も出来ない自分を呪ってなさい」 「ふざけた真似を!!」 「ッ待ちなさい!ここから出しなさい!」 「いい加減にしやがれ!!」 ブゥウウン――― 「―――ッ!!、……此処は…!?」 「「「「レン!!」」」」 「レンガルス!」 「白皇!」 「麗皇!」 床下がまた淡く光り、 上で戦っていたはずのレンが、現れた → |