「あれ!?タケシ!」

「カスミじゃないか!」

「やっぱりタケシもあそこに?」

「あぁ。カスミもか?」

「えぇ。まさか勝手にジムが閉鎖していてびっくりしたわ。これからあのコロシアム会場に行くつもりよ。タケシはどうする?」

「俺ももちろん行くぞ!急がないとコロシアムが終わってしまう!」





コロシアム会場に二人が到着するまで、後少し





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コロシアム会場はそれはそれは盛大な歓声で溢れ返っていた

空はもう暗闇に、静寂に包まれているのにも関わらず、コロシアムの一角だけまるで昼の様な熱さを感じられる。コロシアムからは昼よりもかなりの盛り上がりを示し、軽く隣り町まで聞こえる位の歓声で溢れ返っていた

完全、別世界だった





『さあさあさあさあ!』





実況を続けるミツハルのことミッチーが興奮を押さえながら言う。午前中からぶっとうしで休む事無く中継をしている彼は、果して身体は大丈夫なのだろうか?





『長い長い一日がこれで終わりを告げようとしています。今思えばかなり長かった!あの炎天下に近かった太陽はもうお山とお山の間に消え、今となれば我らを優しい光で照らす月が除いています。まるで今まで盛り上がっていた熱を冷やしてくれる様に。…ですが我々は止まりません!止まってはならないのです!今この時、この場所で勝者が決まり、そしてこのカントーの新たな風を起こす旋風を巻起こす嵐の者の誕生を、我々は見届けなければならない!』





熱く語るミッチーに答える様に観客も大いに答える。拍手をするもの、叫ぶ者、指を鳴らす者。ここにいる全員は同じ思いだった。ミッチーが言う旋風を巻起こす嵐を全員は見る事になる。全員がそれを望んでいた





『この暗闇に負けない程の熱気を保ったまま、説明させていただきます。これから決勝戦が行われる場所は今まで使わなかった中央にある第五フィールドで行います。最期を飾るバトルはやはりど真ん中が一番!先程まで別々だったバトルでしたが、観客全員一つが、一つのフィールドで行うバトルを、挑戦者達を、ポケモン達を、盛大に応援してあげましょう!』





歓声が続く

あまりに大きくて殆ど何を言っているのか誰にも分からないくらい、観客は熱くなっていた





『それでは、決勝戦への切符を取った両者の二人には登場して頂きます!Aブロックでは、白と黒の色違い且珍しいイーブイを可憐にそして鋭く相手を刺すコンビネーションを従わせる、"白黒のイーブイ使い"!この名前はほぼ知れ渡ったと思いますので私は彼女の事を【聖憐の舞姫】!…と勝手に付けさせて頂きました!挑戦者番号11番、マサラタウンのミリ!!』





ミッチーの言葉の後、一拍置いて現れたのは、この観客全員を黙らせ、魅させ、衝撃を与えさせた完結無欠なコンビネーションを誇るイーブイを持つ絶世の美女、ミリ

昼よりもかなりテンションが高く熱い観客の声援を、緊張する事なく優雅にやってくる。その姿一つ一つがとても滑らかで美しく、声援に答える様に手を振る姿はまさに天女と言ってもおかしくない

トレーナーが立つ位置に着くと、ミリは観客全員にオレンジ色の服を靡かせクルンと一回転をする。それから何度かクルクル回ればまるで本当に舞っている様で観客は見惚れ、歓声を上げる。最後に高く飛び上がりフワリと蝶が舞う如く降り立ち、見ている全員にお辞儀をする。それは観客に対する、此処まで見届けてくれた感謝を示していた。観客は盛大に拍手し、歓声を上げた





『…ハッ!!いけないいけない危うく仕事を忘れる所でした!なんと気前の良い、彼女本人がパフォーマンスを見せて頂きました!しかしなんとも身軽さ!まるで蝶の様ですね!あながち私のあだ名は捨てたもんじゃありませんね!



対するBブロックの挑戦者は、圧倒的なパワーと防御力を兼ね揃え、多くのポケモンを退けた【鉄壁の剛腕】!挑戦者番号15番!ヤマブキシティのゴウキ!』





ミリの反対側の入口からやってきたのは、一人の男性

如何にも武道の道に携わっていると誰もが分かり圧迫をも感じさせる、長身で筋肉質な男だ。なかなか味が深い良い面をしていて、観客の声援なんて意もしていない。黒髪を高く後ろに縛り、顔はちょっと強面だ。名前も異名も本当にそれっぽく、名は体を表すのはまさにこの事だ。彼の銀灰色の鋭い瞳はまっすぐに、ミリを見つめていた


ゴウキが挑戦者の立ち位置に着くと、自然と観客の声援は収まっていき、しまいには誰も口を開かないで一心に二人を見る。きっとこれはゴウキの見えない何かが観客を引き込んだのだろう

ミリは相手を見て―――この人は強い、とただ純粋に思った

ポケモンはどうであれ、彼自身何か見えないオーラが彼の闘志を燃やし立てている。彼が持つポケモンの事だ、きっと他のトレーナーより強いに違いない。ミリは冷静にゴウキを見ていた





「よろしくお願いします」

「あぁ、こちらこそ」





互いに頭を下げ挨拶を交わす

ミリは両手を重ね丁寧に頭を下げ、ゴウキはしっかりと頭を下げる

両者頭を上げるのを確認した審判は「始めます!」と声を上げた







さぁ、始まった






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