「…人間、恐怖症…!?」

「………!」

「そのイーブイ、何かあったのか…?」

「詳しい事は私も分からないの」





カタカタとボールが揺れる

モンスターボールの中にいる二匹が、彼らを威嚇している





「…すみません、俺が我儘を言ったせいで…」

「ううん、サトシ君のせいじゃないよ」





そこから先は、誰も口を開く事はなかった

…うーん、気まずくなったよ。だから避けたかったんだよねーこうなる事を。とりあえずこの子達を戻そう、うん(戻したら戻したでまたサトシとシゲルが驚いていた




カタカタ…






「…ん?」

「レッド、どうかしたか?」

「あ、いや…ブイのボールがいきなりカタカタいいだしたんだけど…」





レッドがおもむろに腰から一つのボールを取り出す





「ブイ…って、兄さんのイーブイの事だよね?」

「確かレッドさんはエーフィに進化したんですよね」

「あぁ、まぁな。…けどこんなにボールが揺れるなんてなかったのに」

「……」





嗚呼、もしかしたら





「(この子達とレッドのブイは、知り合いなのかもしれない)」






レッドのブイはレッドの手持ちになるまでロケット団の実験体に使われていた。白亜と黒恋も実験体としてロケット団の所にいた。この子達がもしかしたら出会っていた事も考えられるはず

今、二匹が入っているボールは別の空間に置いてあるため何を思っているのかはよく分からない。でも先程カタカタと揺れていたのは収まっているのは分かる。もしかしたらあの子達も―――レッドのブイに対して、何か思い出したのかもしれない





「(後で、聞こう)」





聞くとしたら、決勝戦が終わってからかな

今ここで過去を探ったりしたらあの子達や私がバトルに集中出来ない



…でも、気になる

少し、吹っ掛けてみよう





「レッド」

「ん?」

「一つ、聞きたい事があるの」





真剣な面持ちでレッドの顔を見れば、レッドも真剣な目で私を見る。何かを悟ったらしく、私が話す台詞が重大な事だと気付いたらしい

話を吹っ掛けてみるといっても、あまり私にとって対した事じゃない。でもレッド…いやレッド達にとったら重大な事なのかもしれない

それにレッド達はあの子達を知りたがっていた。少しくらい、ヒントを言っても差し当たりはないだろう。…といっても、きっと気付くに違いないけど



真剣な雰囲気になった事によって、グリーンも何かを悟ったのか隣りで真剣な顔をして私を見ている。サトシとシゲルも同じ様に真剣な顔をして私を見る

私は口を開いた





「もし、違っていたらごめんね。でもこれだけは聞いておきたくて」

「うん」

「レッドのエーフィ…





 昔、ロケット団の所でお世話になっていた?」

「…!?」





レッドが目を見開き、息を飲んだ。驚いていた目はやがて核心に迫り、ますますレッドは信じられない顔をこちらに向けた

隣りにいたグリーンも最初は何の事だか分からなかったが、以前レッドが話したブイの過去を思い出し、そして気付いた。レッドと同じ様に驚いた顔をこちらに向けている

唯一分からなかったのはサトシとシゲル。二人は何の事だかサッパリ分からないらしい。どうやらエーフィが昔ロケット団の実験体として暮らしていた事を知らないらしい。見兼ねたグリーンが手早く説明すれば、シゲルは息を飲んだ。遅れてサトシも気付けば同じ様に息を飲む。私はというと、未だにレッドと見つめあったままだ





「まさか…!」





レッドが驚愕な顔で口を開いた


その時だった





『これから決勝戦を始めます。両者フィールドに出て来て下さい!』





タイミング良くアナウンスが入り、レッドは口を閉ざした。私はレッドから目線を逸しモニターを見る

どうやらあまりに集中し過ぎてBブロックのバトルは終わっていたらしい





「レッド、その話はまた今度」

「…分かった」





はい、このお話はこれにて終了!

パンパン!と手を叩いて笑ってみれば空気が和らいだのが分かる。そうさ、君達にはそんな顔は似合わないんだからさ

それぞれに笑いかけてあげれば、向こうも笑ってくれた






「ミリ、バトル、頑張れよ」

「今はバトルに集中しろよ。悔いのないバトルを」

「ミリさん、頑張って下さい」

「ミリさんなら絶対勝ちますよ!」

「ピカチュウ!」

「ありがとう」






とりあえず、あの子達の事は置いといて

私は笑って四人の拳をぶつけあった







(さぁ、決勝戦だ)



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