『つかお前、時間は大丈夫なのか?』

「なんとかなるでしょ〜」

『良くないだろ』

「なら手短にしてちょ」

『命令かよ』






時間と近くのモニターを見ればまだ私の番までは来ていない。なんとか話は聞ける時間はある

その前にあの子達をジョーイさんから受け取らなくちゃいけない。数日前の事もあるからきっとあの子達私を心配しながら待ってくれているに違いない





『回りは誰もいないか?』

「…うん、いない」

『イーブイ達は?』

「ジョーイさんに預けてある」






…なんだろう、この慎重さは

そんなに回りに聞かれたくない事なの?


質問された事を素直に答えてれば、レンはまた沈黙する。それくらい重大な話だと訴える様に。ドクドクと心臓が少しずつ速くなっていくのが分かる。全神経を集中させてレンの言葉を待った

しばらく待っていれば、電話先のレンは重い口を開いた







『―――――あるポケモンは、研究所で実験体で使われていた。何時だったかは忘れたが、逃げ出したらしい。そいつらが逃げ出したと同日に研究所は爆発して跡形もなく消えたって話だ。もちろん中に研究者がいて、ほとんどの人間が死んだ。…生き残った奴等が、逃げ出したポケモンを血眼に探している






その逃げ出したポケモンは、お前が手持ちとしている白と黒のイーブイだ』






――――あぁ、やっぱりね


カチカチっとパズルのピースがはめ込まれていく。この話を聞いているうちに、何処かで私はこの話はあの子達の事じゃないかなと思っていた






『研究自体極秘だったらしいから、表舞台にはさらされなかったのが幸いだったな』

「…情報通だと思っていたけど、よくそこまで分かっているね。けど、なんであの子達だって気付いたの?」

『"珍しい色違いをした対象的なイーブイ"って話を耳にしてな。まさかとは思っていたが、実際テレビに映っているお前の手持ちを見た時、ピンときた。あぁ、こいつらだってな』






――――噂でしかない噂を元に判別し、確信したその観察力と推察力は並以上にあるんじゃないかと思う。自称といっていたけど本職にしてもいいんじゃないかな?

同時にこういった能力をかね揃えている者は何処の世界に行ってもかなり手こずらされる。敵だったら尚更ね。つくづくレンが私の敵じゃなくて、イケメンな友達でよかったと思う





『核心を突いたのは、黒いイーブイが繰り出した技だ。お前、どさぐさに紛れてあのイーブイに"かぜおこし"を使っただろ?』





ドガースが黒恋にスモッグを食らわした時、激しい風が吹き荒れた

実はあれは回りに気付かれない様に黒恋に指示していたからだ。邪魔なスモッグをかぜおこしで吹き飛ばし、転機を一気にこちらに向ける。人はただの風だと思っているのに、レンは気付いていた






『実際本当かどうかは分からないが、黒いイーブイは見た技が可能な限り繰り出す事が出来るって話を聞いた事がある』





ここまでくると、感心を通り越して畏怖をしてしまう


今まさに、彼を敵に回したくないと改めて思った






「…そこまで知っていたんだ。そう、あの子は色んな技を使える。まだ何が使えて何が使えないかは知らないけど」

『…気をつけろ、ミリ。お前の手持ちは強い、そして珍しい。誰もが欲しがる恰好の的だ。研究者にも気をつけろ。研究所が無くなったとしても警戒しといても損はない






 …そして、お前自身もな』






ここにレンがいなくても、私には分かる

レンのあの、鋭いピジョンブラッドの瞳が真っ直ぐ私を貫いていて―――その鋭さに、一抹の恐怖を感じた



貴方は何処まで知っているの?






(どの世界に行っても)(私は追われる身なんだね)



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