手持ちのポケモンをジョーイさんに預けた私は、色んな人と交流を深めながらフラフラと彷徨い、人通りが少ない廊下のソファに腰を掛けていた。ジョーイさんの言う通り色んな人の話は面白くて、その人の旅の一つ一つがどれだけ貴重で充実しているのが手にとる様に分かる。コロシアムは広いし、人込みに長くいた為少し疲れていた






「…何かが近付いて来る。何だろう、良い予感だけどそうもいかない妙な予感は…」






遠くからだけど、感じる

風に流れる様に、誰かの心の波長が私を求める歓喜の声を上げている

そして色んな人の足音に紛れ、微量だけど確実に私を探している。一体誰が、何故私を?







『――――あ?どうかしたか?』

「あぁ、ごめんなさい。何でもないよ、レン」





嗚呼そうだ。私、レンと電話していたんだった

慌ててポケギアに声を掛ければ、声の主は笑った。ソファに座ったと同時にレンから電話がかかったのだ。数日振りに聞いた彼の声は元気そうで、電話越しでもやっぱかっこいいイケメンオーラ垂れ流しだった←






『第二ステージ進出おめでとう、ってとことだな』

「あがとう。ふふん、どう?あの子達のコンビネーションは?」

『イーブイだからって思っていたが、どうやらそれぞれの能力が高かったんだな』

「よくわかったね。イーブイの能力にも限界があるから、いくら発展途上なあの子達とはいえ、無理な事は体の負担にもなるから、それを補う為に」

『ダブルバトルでお互いを支えあう、ってか?』

「その通り」

『へぇ、よく考えているな。この調子で進んでいけば決勝までイケるんじゃないか?』

「まだ一回戦で勝っただけだからねー、これがまた通用するとは限らない。油断は禁物だと私は考えている。次も気を引き締めてバトルに臨むよ」





いくら自信があっても過信した戦いをすれば、足下をすくわれる可能性があるかもしれない。唯一の手段を考えていても、勝てるかどうかは運次第。負けるつもりは毛頭ない、私達はこのまま優勝をもらっていくのみ

ポケギアの向こうにいるレンは『流石だな』と言って私を褒めて、また笑った。きっとあの時の爽やかでニヒルな笑みを浮かべて笑っているのかもしれない






『にしても、白と黒のイーブイか…』

「人は珍しいって言ってきたけど、確かに白と黒の対象の色は珍しいかもね」

『それもあるんだが…』

「?」





考え込んだのか、数秒声が聞こえなくなった。私は頭を傾げた

彼の名前を呟けば、またたっぷりと間を開けてからレンの声が流れた






『そのイーブイ…何処で捕まえたんだ?』

「え、捕まえたって…」

『答えてくれ』






真剣な声だった

有無を言わさない、真剣な声色で

きっとその表情も、真剣な面持ちでポケギアを通して私を見ているに違いない


しかし、一体何故レンがそんな事を…






「―――あの子達は私が保護をしたの」

『保護?』

「野生か誰かの手持ちのポケモンか分からないけど、襲われてたの」

『そのポケモンは?』

「グラエナ。二匹のね」

『…なら、何でイーブイ達はお前の手持ちになったんだ?』

「懐かれた、かな?」






大半真実 残りは嘘

あの子達がこの私、【異界の万人】の力に惹かれ着いてきた。私自身かどうかは分からない。まだあの子達の過去は知らないから、何も言えない

レンに【異界の万人】と言っても、分かるかどうかは分からない。ポケモンは、私の【異界の万人】の存在を知っていた。だからトキワの森のポケモン達は私を見て泣き、そして懐いた。しかし人間は私という存在を殆どの者は知らない。…知らなくて、いい話だ


だからいくらレンだからって言う必要はこれっぽっちもない。そもそも、誰にもあの子達の事も私の事も口に出すつもりはサラサラ無いのだから






「レン、こっちからも質問ね」

『…あぁ。大方予想つく。"何故そんな事を聞いてくるか"、だろ?』

「そう、それよ」





尋問は得意ではない

何処の世界に行ってもそれは変わらない

尋問される事は何度かあるけど、逆はどうも駄目みたい。尋問される側の気持ちが分かるから、深く追求するのをためらってしまう






「私、あまり人に追求するのは苦手なんだ。だから普段人に深く聞く事はしない。…でも、今回はそうもいかない」

『…』

「レン、正直に答えた方が身の為か、それかスッキリするよ」

『おい、半分脅しが含まれている気がしたんだが』






何の事でしょう、うふふ

と笑えば、レンの吹き出した声が聞こえた

まぁこの私を前に秘密にする事はあまり意味のない事だからね。色々力を使っちゃえばプライバシーなんて関係ないし?色々余計な事まで曝け出される前に言っちゃった方がいいと思うんだよね。うん


そう思っていた私の耳に、小さかったが『参った』の声が聞こえてきた

どうやら話してくれるらしい。やったね






『風の噂だ。試合前のお前にあまり言うつもりはなかったんだが…』

「構わない。それがあの子達の為だから、風の噂でも有効利用させて貰うから」





言えばレンは観念した声で『了解』と言った











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