(監視映像監視中…)




「…………」

「ラムダ……流石に引きます」

「最っっ低ねー本当に悪人って感じね。…敵を煽るにはすっごく似合ってはいるけど、流石の私もちょっとラムダに殺意湧いちゃったわ……ラムダだから出来る事ね。アンタ達がアレやっても迫力に欠けるわ」

「聞き捨てなりませんね。私達も本気を出したらアレぐらい余裕ですよ」

「…ナズナ様の怒り心頭な姿の映像を見れただけでも、よしとしましょう」

「ナズナ様もキレる事があるのねー」








さぁ、私達もお仕事お仕事



―――――――
―――――
――







ラムダと偽者のミリ、そして自ら名乗りを上げたレンを広場に残し、苦渋の思いを残しながらさらに地下へと足を進めていくメンバー達

廊下を進み、階段を進み、無機質な白い空間をひたすらに進んでいく。本来だったらあるはずのない地下の存在に、互いに警戒心を研ぎ澄まさせて前に進んでいく。自ずと彼等の口は閉じられ、息遣いしか聞こえなくなる

あの偽者は一体何者だったのか、その答えは謎のまま。唯一、その答えに気付けたゴウキとナズナであったが、彼等の口から語られる事はなかった。彼等は当に知っていた。あの偽者とレンには深い関係があり、レン自身が決着を着けるべき相手だと―――


そして更に辿り着いた、広場にて

自分達が探し求めていた内の"一つ"を、見つけ出す事に成功する






「此処は……」

「…デケェな」

「間違いない。アレが催眠怪電波の装置だ」

「「「「「!!」」」」」






広場の中央に聳え立つ、大きな機械の塔と呼ぶべき存在。現在も起動しているのか多種な色をチカチカと光らせ、重い起動音が空間を響かせていた。機に取り付けられているモニターが怪電波の電波指数を示しているが、その内容は少なくても知識の無い人間が見たところで理解出来ない内容が示されていた

こんな仰々しいモノが現在進行形でシンオウを脅かしているだなんて、末恐ろしい話だ


全員は訝しげに、しかし好奇な眼で装置を見上げた。特に元科学者でもあるナズナは興味津々とばかりに隻眼の眼を鋭く光らせていた。もしこんな状況でなければ色々と調べ尽くしたいといわんばかりの光だった

しかし自分の役目を忘れては無かったのか、ナズナは早速動き出した






「解除に取り掛かる。…ホウエンチャンピオン、ゴヨウ」

「了解」

「分かりました」






ダイゴとゴヨウを呼び、ナズナは装置のモニターの前に立つ。手首に着けていたヘアゴムを手に取り、器用に自身の髪の毛を高く結った。その姿こそ、彼がこの怪電波装置の解除に真剣だという事が伺える

そしてナズナはモニター画面に触れ、息を付く間もなく装置の解除に取り掛かった。凄まじいタイピングで画面のキーボードを打ち鳴らし、その隻眼は更に鋭く光らせながら画面を読み進めている

真剣で真摯な、鋭い覇気を纏わせるナズナの姿に、横に控えるダイゴもゴヨウは眼を張ってナズナ、否―――【隻眼の鴉】を見返した。予想以上の光景をまざまざ見る事で、二人は改めてナズナという男の印象を更に塗り替える事になっただろう

勿論それは少し離れたところで見守っていたメンバー達も一緒だった。ゴウキは今まで見ていたから省くにしても、初めて見た【隻眼の鴉】の凄まじい覇気とタイピングの早さに驚いた事には間違いない






「すげー…見えねぇー」

「まさかあそこまで…」

「ナズナの手に掛かればすぐにでも装置の解除に成功するだろう。解除が確認出来次第、地上に連絡するぞ」

「お、おう、分かった」

「ゲン、波動の方はどうだ?何か見つかったか?」

「―――…まだ下に何かがいるのは分かる。複数の気配だ。相変わらずそこにミリの波動は感じられないが……」

「………」






怪電波装置の解除はナズナのお陰で解決するにしても、次なる問題はミリの安否

偽者の存在は今、レンが戦っている。自分達が求める最終目的こそ、"彼女"だ。ミリの存在が無かったら、そもそも自分達が此処にいる意味は無いのだ

嗚呼、彼女は一体、何処に囚われているのだろうか




ズゥゥゥン―――と、

遠くから地響きがこの階まで響き渡った






「――――派手にやってんな、アイツ」

「…地響きがこっちまで響いている。壮絶なバトルをしている証拠だ」

「波動は感じる。特に問題は感じられないが……あのレンの事だ、簡単にはやられないはずだ」

「私達はミリの方を優先するわ。まずは下の階に続く出口を見つけるわよ。きっとその先にミリがいるはずだわ」

「あぁ。次は偽者なんかに騙されてたまるかよ」






レンの実力は此処にいる全員がよく分かっている。無敗を突き通し、かつてはシンオウチャンピオンを超えるだろうと畏怖されたほどの実力を持つ凄腕のトレーナー。その名こそが【白銀の麗皇】で、レンガルス=イルミールという男だ

―――たとえ蒸発しかけた異名とはいえ、大切な存在を見つけた事で新たにその名を轟かせた男が、簡単にやられるとは到底思えない

今はただ、レンを信じるしかない





とにかく自分達はそれぞれの役目を果たそう。特攻チームとして、救出チームとして、与えられた役目はきっちりこなそう

シロナとデンジは下へ行く入口を見つけ出そうとその場から離れようとする。特攻チームの三人も辺りを探そうと後に続こうとした



その時だった






「――――ッ、これは…!!」

「?…ナズナさん、どうかしましたか?」

「―――ッお前達!!今からこの場所から離れるんだ!!階段に引き返せ!!」


「!?え、何だ!?」

「「「「!!!?」」」」






突如上がる、ナズナの必死な声

顔は驚愕に染め上げ、青くも見える。ナズナの声で驚く周りの者達を無理矢理引っ張ってでもこの広場から離れようとした

そして―――







ドカァアアアァアァンッ!









中央に聳え立つ怪電波装置が、


容赦無く、爆発した










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