手に取った腕はどこまでも細くて、思った以上にか弱く見えてびっくりする。このまま力を加えてしまえば簡単にも折れてしまいそうなほど、細くか弱く繊細な腕。いきなり腕を取った事で、その綺麗な瞳が驚きと疑問の色を浮かべながら俺を見る。漆黒の瞳は真っ直ぐに俺を見ていて、その瞳に写る俺は酷く滑稽に見えて笑いたくなる





「…どうしたの?レン」

「いや…細いな、と思って」

「…そう?私にしてみればそうでもないよ?筋肉はわりとついているから太い方だと思うんだけど…」

「俺からしてみれば細い方だ」





確かに掴んだ腕はわりかししっかりとしていて鍛えられているのは分かる。でも男の俺からしてみれば断然細い。幾ら鍛えられていたとしても、女同士なら通用すると思うが…男の俺にしてみれば細い事には変わりはない






「か弱い見た目のわりには、こんな細い腕で大の大人をぶん投げれるんだよな…。……カラテ大王も目を飛び出す勢いだな」

「あはは、褒め言葉として受け取っておくよ。何もしていない、ただ拳を向けて話をつけようとする人達の話を終わらすには持ってこいだよ」

「聞こえはいいがお前結構無茶してるだろ」






こんな細い腕でも簡単に大の大人が空を飛んだ時は流石の俺も固まった記憶がある。俺も昔ゴウキにしごかれそれなりに出来るようになったが、そのゴウキも目を点にするほどの滑らかな動き。それでいてかなりの力が込められている―――カラテ大王はおろかロケット団やギンガ団の奴らが逃げ出す位だな、あれは

今俺の手にある、この細い手がそれをやってのける。そう思うと何だか複雑な気持ちになる





「あまり危険な事はするな。…もし怪我でもしたらどーするんだ馬鹿。親から貰った大切な身体をそんな風に扱うんじゃねーよ」

「…なんだかピアスを開けようとする人に止めようとする友人の言葉みたいだよ、レン」

「意味は一緒だろ」





目を離していても離さなくてもコイツは勝手に危ない事をしでかしてしまう。大丈夫だよ、と笑うコイツに何処にそんな余裕があるのかを是非聞き出してやりたい

魔がさしてその手をそっと唇へと持っていく。細い指にキスを落とせば、予想通りビクッと手を震わす。見た目に反して初心なので、ついあまりのおかしさと可愛さに小さく笑う。しかし別に嫌がるそぶりも見せなかったので、チラッと視線を向ければ目が合った

美しく綺麗な頬は紅潮し、恥ずかしさに固まるその姿は愛しさを感じさせる。―――しかし、俺を写すその瞳は、別の光を宿していた







「…自分の身は自分で守れるよ」







どうしてコイツは、人に頼ろうとしないで背負いこもうとするのだろうか


呟かれた言葉は俺の耳にかろうじて届いてきたほど小さくて、その声色もコイツらしくなくて―――目を張る俺に、なんでもなかったかの様に、笑った







ぼそりと呟かれた言葉が、守ってほしいと聞こえたのは俺だけだろうか










守らないと、消えてしまうと思った



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