「改めて歩いてみると本当に立派な森だね。かなり長寿な森だよ、トキワの森って。空気が澄んでいてポケモン達には住みやすい環境だね



 白亜、ひのこ」

「ブイ!」




ボォッ




「太陽がよく当たっているから光合成が活発なんだね。ポケモンが吐く二酸化炭素もイイ感じにあるし、土自体の養分も豊富だから森がこんなに元気なんだね



 黒恋、尻尾で火の付いた草にきりさく」

「ブィ!」




バシュッ






森に入ってから数十分後


もうそろそろ出口に着いてもいい時間帯なのに、私達は伸び過ぎた大量の雑草に苦戦をしていた

いや、本当だったら簡単に自分の跳躍で軽々越えられるといいますか。あくまでも私はただの人間、ただのポケモントレーナー。力を使わずに自分の足で進めていたけど…うーん、ちょっと読みが甘かったかな?こんなに伸び過ぎるとここを通るトレーナーが大変だ、という訳で勝手に道の改築もどきをやっていながら前に進んでいた私達

お蔭様で、焦げ臭いながらも通りやすい道になりましたよ皆さん←






「にしてもあんまりポケモンいないなー。ポケモンの気配はビシビシ感じるのに。おかしいなぁ、まるで私を見張っているみたい。ピカチュウとか見てみたかったのになぁ




 お、キャタピーだ」

「ブイブイ」

「ストップ黒恋。攻撃しなくてもいいよ」






私達の行く道に、一匹のイモム…キャタピーがこちらを見ていた






「へぇー、あれがキャタピー…うん、まだ大丈夫。キャタピーってリアルにイモムシだけどまだ大丈夫かな」

「…?!ブイブイ!」





ピン、と耳を立てる白亜

つられて黒恋も何かに気付いて耳をピンと立てるが―――勿論、私は目の前にいるキャタピーに目がいっていて気付かない←






「あのつぶらな瞳、もそもそと動く体、うーん、あれがキャタピー…イモムシなキャタピー…うーん、ダメだなんかやっぱり受け付けない…むー」

「ブイブイ!」

「どうしよう、この場合は手を差し出すべきか、スルーすべきか、それとも火で炙ってみるか…悩み所だなぁ…」






※ポケモンを炙ってはいけません






「ブイ?!」

「ブイブイ!」

「にしてもあのキャタピー全然動かないなー。私達の方を見ているだけで…うん?よく見るとあのキャタピー、涙流して……あだだだだ!ちょ、白亜ちゃん爪立てないの!黒恋ちゃんも頭叩かないの!」

「「ブイブイ!」」

「もう、さっきから何のさ。…え?気配??そういえばさっきより気配が大き




 …あらー」






なんということだ






「…随分と、手堅い歓迎な事ね」






いつの間にか私は

沢山のポケモン達に囲まれていた




見回してみればどれも凶暴そうなポケモンばかりで、普通ここには生息しないはずのポケモンもいた。数はかなりいて、前後左右きっちりと囲まれていた




やっちまった、と後悔

キャタピーに夢中になったとはいえ、これだけの数にこの私が気付かなかったなんて。ちょっと反省






「……ん?」






違和感を感じた


野生のポケモン、こうして私の回りに囲んでいつでも襲いかかっちゃうぞ☆な雰囲気なのに←

殺気を、感じない



白亜と黒恋も彼らが殺気を出していない事に気付いているらしく、戸惑いながら相手を睨み私の指示を待っている






「……………」






おかしい

これはおかしいぞ



こんなに私を囲めば恰好の餌食なのに、何故殺気は出さず襲いかかってこない


それにまた、妙な違和感を感じたと同時に―――私はポケモン達の瞳に、何か光るモノを見つけた


何だろう、と注意深く目を凝らして良く見てみる


それはなんと







「……涙……?」






ポケモンが、此所にいる全てのポケモンが

私達を、否…私を見て涙を流していた






「これは、一体…」










ガサッ、と音がした


今度こそすぐに気配を感じた。気配は私の真上からで、風と共にそれは現れた





ピカチュウを腕に抱いた、麦わら帽子の少女が

背中にバタフリーの羽を広げて




彼女のピカチュウもまた


彼らと同じ様に、涙を流して私の方を見ていた






「―――捕まって下さいッ!!」






私は無意識の内に

彼女の手を取っていた








さようなら、トキワの森






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