「よく気付いたな」

「大真面目な顔しているくせに口元は笑っていたの気付いていた?」

「っと、」

「今更口元隠しても遅いんだよね〜」

「ククッ…お前ってさ、見た目と違って意外に面白い奴だって事、気付いていたか?」

「えー?しらないなぁ」

「今更顔を背けても遅いぞ」

「プッ…」

「クッ…」


「「はははっ!」」






この掛け合いがお互いにツボだったらしい。プルプルと互いに肩を揺らし、つい笑い声を上げた私達。人は見掛けによらないのは本当で、まさか彼がこんな冗談を言ってきた事が面白くて、笑いを堪えつつレンを見てみれば―――彼もおかしそうに笑っていた。しかも笑い方もかっこいいからただのイケメンにしか見えない

そこで私は気付く

彼は見た目と違い―――揺るがない真っ直ぐな瞳と、屈強な精神力の持ち主だという事に

彼はイケメンだ。稀に見ないイケメンだ。目付きといいルックスといい、人は彼の事をクールな人間だと思ってしまうだろう。実際彼は話をしていても性格的にもクールな人だって事が分かるし、話をしなくても第一印象がどう見てもクールな印象を感じさせる


でも、そうじゃない





「(…そうじゃないんだよね)」





私には分かる

彼の"何か"が



…ここまで分かっていながら答えが出せないんだなんて、私もまだまだって事かな

うーん、残念。もやもやする






「だが、残念な事に全てが冗談じゃないんだ」

「どういう事?」

「本当に不在…いや、出来ないのは二ビとハナダのジムの方だ。安心しろ、他はちゃんと営業してるぜ」

「やっぱりニビとハナダなんだ。まぁ…さっき言葉イヤに現実味があったし」

「そういう事だ。この二つのジムには本当のジムリーダーがいたらしいが、そのジムリーダーは職を離れて旅をしている話があってな。今何処にいるかは知らされていないみたいだが…家族で運営しているみたいだが、その元ジムリーダーの方が色々と自由な奴っつー噂だ。一体何の理由で休業しているかは調べてねぇが…ま、どの道ジム戦は難しい話って事だ」





…あ、なるほど

その噂はあながち間違ってはいないと思うヨ←






「その元ジムリーダーが倒れたり旅行に行ったって話をどっかで聞けば本元が戻って来るかもな」

「だといいんだけど…」

「そんな消極的でどん底に落ちているお前にいい話があるんだなこれが」

「消極的になったけどどん底にまで落ちてはいないかな〜」

「ほら、コレをやるよ」

「…?何これ?」






レンがおもむろにバックから取り出されたそれは、一枚のチラシ

レンに渡されたチラシを受け取って内容を読んでみると――――それには『ポケモンバトル!ゲットせよ!グレー&ブルーバッチ』と書かれていた

うん?なんだろう、これ






「二つのジムが休業中だ、流石に挑戦者を待たす訳にもいかないとリーグの管轄が要請して開かれるコロシアムだ。こんな一石二鳥のコロシアムなんてそうそうないぜ?」

「…『試合形式はダブルバトル、トーナメント式でAとBに分かれて優勝したトレーナーに二ビジムのグレーバッチとハナダジムのブルーバッチを贈呈』…開催場所は…『二ビシティ外れ四番道路の付近の広場』…へぇ、これはいい情報をもらったよ」





この勝負


貰った









「その紙やるよ。詳しくは二ビのジムに行けば分かるはずだ」





チラシを私に渡すとレンは立ち上がった

ソファに置いてあったモンスターボールを腰に着けてバックを持つ姿を見れば、もうお別れの時間だと気付く






「ありがとう、レン。ごめんね、私の為に時間を使ってくれて」

「いいって事よ。お前みたいな奴だったら大歓迎だ。もし何かあったらいつでも連絡しろよな。用が無くても全然構わねぇぜ?」

「うん。是非そうさせて貰うね。もしこのコロシアムに勝てたら報告するからその時はお祝いの言葉よろしく!」

「負けた時の慰め言葉も用意しとくからいつでも報告よろしくな」

「絶対勝ってやる!」

「ははっ!!頑張れよ!」






最後の挨拶として、お礼も兼ねてレンと握手を交わす

レンは爽やかなニヒルな笑みで「またな」と言い、今度こそ私に背を向けてポケモンセンターから出て行った。サラリと靡く白銀色の髪、後ろに縛ってある髪が靡かせるその姿は
とても印象的で、かっこよくて――――私は彼の後ろ姿が見えなくなるまで見送った







「…レン、か




 不思議な人だったな」







同時に何故か懐かしい感じがした








(この懐かしい感じの正体に気付いた時には)(私は記憶の渦に飲み込まれてる事になるとは)(私も)(彼も)(知るはずもなかった)


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