「なぁ、此所で食ってもいいか?」 朝ご飯を食べている最中、私が座っているテーブルに一人の青年が現れた 私が使っていたテーブルは二人用で丁度一人分空席があった。今、色んな人が食堂にいて殆どテーブルがなかったと言ってもよかった。テーブルが空くのを待つよりも、空席が残る席に座った方が効率的だと考えたのかもしれない。私は箸を止めて青年に顔を向け「良いですよ」と言い、青年は「悪ぃな」といいながら椅子に腰を掛けた 「(…わ、すっごいイケメンが来た)」 高長身でスラリとしたスリムな体型に、長めの白銀色の髪を後ろで縛り、ヘアバンでかっこよくキメている。黒いワイシャツと黒のジーパンが綺麗な白銀色の髪を引き立て、太陽光でキラキラと眩しい印象を受けた。ハッとする端正な顔立ち、目付きはちょっと鋭く、その瞳は綺麗で深いピジョンブラットの色をしていた。まさにイケメンの一言で書片づけられる彼の持つトレーの上には、朝ご飯と自分のボールが乗っていた 推定年齢は…大体、二十歳前半くらいかな …うーん、目の保養 まさかこんなイケメンがわざわざ来てくれるなんて…色んな世界の色んな人間見てきたけど、やっぱりイケメンを前にするとドキドキしちゃうね!テライケメン…てかよくよく見るとべらぼうなイケメンだね!?職業アイドルですか??もしくはホスト?? 「今日に限って寝坊しちゃってよ、来てみりゃこんなにもいてびっくりしてな」 「フフッ、そうでしたか」 「しかも苦手なチョコレートがあるし。なぁ、これいるか?」 「是非!私チョコ好きなんですよ」 「ウゲッ、マジか。こんな甘い物よく食えるな。しかもミルクタイプ。ビターならまだ食えるがこれは食えたもんじゃねぇ」 「えー、美味しいじゃないですか!まあ、好き嫌いは人それぞれとよく言いますしね。お兄さんの嫌いな物は甘いものですか……あ、嫌いな物といえば私チーズ嫌いなんですよ。いりますか?」 「お!そりゃ嬉しいぜ。俺チーズ大好きなんだ。特に固形タイプが」 「ウゲッ、マジですか。一番私が嫌いなヤツじゃないですか。よくあんな臭くてグチョグチョしているやつが食べれますね」 「何言ってんだ!臭みもないし食感が堪らねーじゃないか。…ま、好き嫌いも人それぞれ。貰うぜ、チーズ」 「では私はチョコを貰います」 軽い言葉を交わしつつ、お互い嫌いな物を取り換えっこ まさかお互いの嫌いな物が実は相手にとって好物だったことには驚きだ。中々お互い好感触に会話が出来ていい調子じゃない? いやー、朝からこんなイケメンさんの顔を拝めて嫌いなチーズを食べてもらえるなんて、今日はとことんついてるなーハッハッハー← 「―――そういえば、昨日ゴールドカードがなんたらで色々騒いでいたが…やっぱそれってお前か?」 「あー…、確かにそんなことがありましたね」 「なあ、見せて貰ってもいいか?俺のも見せるから。…って言っても俺のカードなんか大したモンはないけどな」 「良いですよ。どうぞ」 バックの中からゴールドカードを取り出し、青年に手渡す 青年の方もポケットからトレーナーカードを取り出すと、私のカードを受け取りながら私に彼のカードを差し出してくれた 彼は私のカードを手にしてすぐ、目を張ってカードを凝視した 「…すっげー。マジで金ぴかじゃねーか。実際に見たのは初めてだ…この際俺も頑張ってゴールドカード目指してみるか?」 「あはは」 青年の反応に笑いつつ、私も彼のトレーナーカードに視線を落とす 彼の名はレン 本名はレンガルス=イルミール 出身地はシンオウ地方のミオシティの外れ 歳は23歳。独身 ちなみに彼のカードはシルバーカードだった(それはそれで凄いと思う 「レンさん、ていう名前でしたか」 「さんなんかつけなくていーぜ。レンでいい。敬語も使わなくてもいいぜ、疲れるだろ?」 「なら…お言葉に甘えて…レン、と呼ばせて貰うね。レンは…シンオウ地方のミオシティ出身なんだね。…シンオウだなんて、随分遠い所からはるばるやってきたね」 「まあな。…で、お前はミリっつーのか。…は?お前17歳なのか!?…俺はてっきり同い年かと…」 「ちょっと待って。こう見えて私、まだ成人式も終えてない未成年なんだけどお兄さん」 「うーわー、マジかよ。人は見掛けによらないっつーのは本当だな。詐欺だ詐欺」 「あはー、怒るよ?」 「ハハッ、悪い悪い。んでマサラタウン出身か。…へぇ、マサラタウンっていったらあのカントーチャンピオンとトキワのジムリーダーと同じ出身地か」 やっぱり私は年増に見えてしまうのね…イケメンにも言われた…お嫁に行けない…!← 一通り見終えた私はイケメンお兄さんもとい、レンにカードを返す。彼も大方見終えたらしく、カードを返してくれた。カードをバックにしまい、さあご飯を食べ進めますかと箸を持とうとしたら―――不意に、彼の好奇心に光るピビョンプラッドの瞳がカチリと合った。イケメンすぎない? 彼はニヤリと口角を上げて私を見ていた 「早速だがミリ、お前今手持ち何匹だ?やっぱゴールドカードの持ち主だから結構強いポケモンでも持っていると見た」 「いやいや、まだまだうちの子達は発展途上。今私の手持ちのポケモンは二匹だけだよ」 「へぇ、あれか?新たな旅と出会いの為に今までのポケモンを置いて別のポケモンを連れているって話か?」 「フフッ、そんなところ」 えぇ、いましたよポケモン いたけどそのポケモン達どっかにいって今は行方不明です(泣 「レンの手持ちは六匹なんだね」 トレーの上に置かれているモンスターボールを数えれば、合計六個のボールがあった レンはご飯を口に運びながら「まあな」と頷いた 「俺、ウオッチャーなんだ」 「…ウオッチャー?…観察者、観測者とかの…?」 「あぁ。ポケモンウオッチャー、簡単に言えばポケモンを観察して生態を調べる奴の事だ」 「へぇー、ポケモンウオッチャー…凄いね、レンって相当観察力が優れているんだね」 「自称な」 「ええええ自称かい」 「そんで、カントーにはどんなポケモンがいるのか気になってな。カントー地方は結構明らかになっているみたいだが、やっぱウオッチャーとして自分の目で見てみたくてな」 「それでわざわざこっちに?」 「あぁ、まぁ…半分は観光気分だけどな」 「あはは」 「お前は?」 「私?私は…とりあえずポケモンマスターを目指してみようかな〜ってね」 「…ゴールドカードならイケるんじゃないか?」 「あはは」 それから話をしていく中で向こうが私の事を気に入ってくれたみたいで、連絡先の交換を 申し込んできた。私は彼の言葉に多少驚くも、彼の人柄や性格を分析し問題無いと判断した私はすんなりと彼の申し出を受け入り、互いのポケナビに番号を登録しあった 色々聞いたところ彼はなかなかの情報通らしい。此処の世界の事を知っていても殆ど何も知らない私にとって、彼みたいな存在はとても重宝する。彼の性格や人柄もそうだけど、なにより彼は話しやすい。彼なら色々聞けるし、聞いても「そんな事も知らないのか?」と言われずに色々教えてくれそうだし。何処の世界に行っても必ず言われていたからね!私の心を何度ボコボコにされてきたか!―――なによりべらぼうなイケメンお兄さんと友達になれて色々一石二鳥だよ!← 別れの際、レンに行き先を聞かれた私は素直にニビシティと答えて、逆に聞き返したらレンはこのままマサラタウンに行くらしい。何もないマサラに何しに行くのかとも聞いてみたら―――チャンピオン達を拝みに行くんだと。一体誰だ、だなんて聞くに野暮だ。野次馬気分で見に行くつもりの彼につい笑ってしまった 「―――また、会いましょう」 ポケギアを登録しあったとはいえ、再会出来るかは分からない。彼が私に連絡してくれるのも分からないのが本音。まあでも同じカントー地方、どこかで偶然会えるかもしれない。こんなイケメンは色んな意味で目立つから、もし再会出来たら色々お世話になろう 食べ終えたトレーを持ってお互いに立ち上がり私はふわりと笑って言った。レンもフッと小さく笑い、「またな」と言ってその場を去ろうとする―――が、何を思い出したのか振り返って私に言った 「ミリ、お前ニビ行った後ハナダに行くつもりか?」 「え?うーん…流れ的にはそうなるね。それがどうかした?」 「あー…、無理だと思うぞ 今オツキミヤマ、通行禁止になっているぜ」 なんですと → |