町はとても澄んでいた マサラは始まりの場所とはよく言ったもので、確かにそんな感じがした。雰囲気は昨日と変わらずの白で、居心地が良い やっぱり自分自身がこうして町に立っていると、ゲーム上で見たマサラとは全然違った風に見える。アニメでもそうだ。私が歩く行く先で遊んでいる子達、立ち話している主婦の皆さん、そしてポケモン。画面上で見るより、やっぱりこっちで見た方が皆が輝いて見えた 「綺麗なお姉さんだ!」 「わあ美人!」 「見た事ない人!」 丁度原っぱの広場に差し掛かった時、そこには子供達が集まっていた 微笑ましいな、そう思いながら通り過ぎようとした時、一人の子と目が合った瞬間私は子ども達に囲まれてしまった 「こんにちは、皆」 「「「「こんにちはー!」」」」 「皆は此所で何をしているの?」 「ぼく、今あのポケモンを捕まえようとしているの!」 一人の男の子が指を指す そこには一匹のニドリーナがいた ニドリーナは戦闘する気満々といった感じで地面を馴らしていた …あらぁ?このパターンどっかで見た事ある様な… 「あれはニドリーナだね」 「ニド!」 間近で見たニドリーナに軽くテンション上がりながらも呟いたその時、パッチリとニドリーナと目が合った そしたらニドリーナはなんと 「…あらー、なんか突っ込んできちゃったり?」 「ニドォオ!!」 「「キャーー!!」」 「「わああああ!!」」 「皆ー、とりあえず逃げてーー」 突っ込んできた あれはきっと、とっしんだ にしてもなんかニコニコしてません?あのニドリーナ 私の掛け声で一目散に逃げ出した子ども達を横目に見ながら、私はボールを出す 「よーし、一発目に派手に行きますか!」 ボールをとっしんしてくるニドリーナの前に投げる。丁度ニドリーナの手前に落ちたボールはポンと音を立て、色違い特有の光を出す 黒い光と共に現れたそれは、光が収まり姿を見せた瞬間にでんこうせっかでニドリーナに攻撃する 黒い光の正体は黒恋で、でんこうせっかを頭から食らったニドリーナは衝撃によって後ろに退いた 「わあ!イーブイだ!」 「黒色のイーブイだ!」 「可愛い!」 逃げ出していた筈の子供達はいつの間にか応援をしていた 度胸あるね、うん。可愛いね← 「そこの君!」 「ぼ、僕!?」 「そう、君よ。ポケモンを捕まえる時、基本はまずダメージを与える事よ。今ニドリーナはひるんでいる、今がチャンスだ!」 「う、うん!」 ニドリーナを捕まえる為に一人の男の子が私の横に駆け出す 私はニドリーナの様子を見て黒恋をボールに戻すと、バックの中からモンスターボールを取り出した 「いいの?」 「いいよ。このボールで大切なパートナーを捕まえなさい。君なら、出来るよ」 「うん!―――でぇえええい!!」 男の子がボールを投げる 投げ方はまるで野球選手のピッチャーの投げ方の様に。しかもまっすぐに。投げられたボールはそのままニドリーナに当たり、ニドリーナはボールの中に入った あんな感じに入るんだ。ふむふむ ボールはしばらくカタカタと動いていたが、ぽぅ…とアニメでよく聞く効果音と共にそれは止まった 「や、やったあ!捕まえた!!」 男の子が喜びの声を上げたのがきっかけで、今まで観戦していた他の子達が一斉に男の子の回りに集まって皆で喜びの声を上げる 「黒恋、お疲れ様」 黒恋が入っているボールに話しかければ、カタカタとボールが揺れる。どう致しましてと言ってくれているのかも知れない。お家に帰ったら美味しいお菓子でもあげちゃおう ニドリーナが入ったボールを私は拾い上げる。アニメのボールなのに何故か中にいるポケモンの様子が見えた。ニドリーナは満足な顔をしていた。うん、これなら安心だ 「お姉さん、ありがとう!」 「どう致しまして。はい、ニドリーナ。大事に育てるんだよ」 「うん、僕ニドリーナを大切にする!!」 嬉しそうに笑う男の子の頭を撫でながら私も笑う 今日のポケモンバトルも調子が良くて絶好調だね 「どーやら俺達の出番は無くなったらしいな」 「あぁ」 子供達の後ろに二人の少年が興味深そうに見ていた事に、私は気付かなかった → |