殺風景な家だった 必要最小限な物しか無く、家の広さは大人の四人家族が住めるか住めないかが限度といったところ。リビング、台所、浴室、トイレ、寝室、小部屋、和室―――それぞれの部屋はまるで何も無く、まるで建てたばかりの新築の家だった 人が住んでいる気配はまるでなかった。でも何で外の花壇の花が瑞々しさを保っているかが分からない。かといって警戒してあの子達を放っておくわけにもいかない。お邪魔します、小さく呟きながらブーツを脱ぎ中に上がり、何か危ない物がないかとある程度確認した私は、何もないと分かると黒恋と白亜を探した 「………」 普通の家だ。可もなく不可もない ただ、この家はあまりにも殺風景過ぎた 私が今現在暮らしているあの馬鹿デカイ豪邸とは違い、あまり探す面積がない為すぐに二匹は見つかった。玄関の廊下の先――――白亜と黒恋はリビングにあるテーブルの上に乗って、二匹寄り添って何かを見ていた 私は二匹の姿を確認し、ホッと息を吐きながら二匹の所に歩み寄る 「こら、君達」 声と同時にヒョイっと二匹同時に持ち上げる いきなり自分の体が浮上った事に驚いた二匹をそのまま抱き締める 「勝手に人の家に入って、もう心配したんだよ?」 「ブイ!」 「ブイブイ!」 「うん、きっとこの子達分かっていない」 キャッキャッと嬉しそうに笑う白亜と黒恋。なんだかもう色々脱帽してこちらも笑うと、二匹は同じタイミングにで私に何かを見せる為に腕を動かしソレを指した 二匹の可愛い小さな手の先に目線を向ければ、テーブルの上にそれはあった 「……バック?」 バックがあった しかも最近見た事のあるバック いやこれ絶対ダイヤモンド・パールに似ているバックって。つーかこれ絶対そうだって。色がオレンジなだけで 「ちょっと失礼しますよ」 白亜と黒恋を降ろし、バックのチャックを開けて中身を調べる バックはダイヤモンド・パールと同じ仕組みになっていた。各場所調べると、殆どゲームの中で手に入る物ばかりだった。こんなバックにたくさん物が入っていて、こんな収納抜群のバックは中々お目に掛かれないと思う …にしてもこの中身、どっかで見た事があるんだよね。私の気のせいかしら? ガサゴソとあさっていると、あるモノが私の目に写った 「…ポケモン図鑑?」 あのポケモン図鑑が無造作にバックの中に入っていた 形はダイヤモンド・パールの図鑑だ 実際に手にした私は感動のあまり「おおぉ!」と目を輝かせる。まさか他人の私物とはいえポケモン図鑑を手にする事が出来るなんて…!なるほどなるほど、図鑑というものは意外にしっかりしているんだね(そこ 「お、図鑑全部揃っている」 つい最近放送されたアニメのポケモンで主人公のサトシが図鑑を使っていた方法をぼんやり思い出しながらピコピコ操作し―――見つけたのはゲームでもお馴染みな、ポケモンの一覧表 ポケモンの名前の隣りにはモンスターボールの印が付いてあり、そこにアイコンが表示されるとそのポケモンは捕まえた事になる。一見見るとソレはずらりと結構な数が表示されていた。下にスクロールしてもしても一向にゴールに辿り着かない――――あまりにもキリがなかったので『つかまえたかず』を見てみたら、…えぇ、もうびっくりだった 493匹、全国図鑑が揃っていた 「すごっ。でも一体これは誰の図鑑だろ」 「ブイ」 一人驚いている私を余所に―――黒恋がバックの中に顔を突っ込み、ガサゴソとあさって何かを取り出す 口に加えられたそれを黒恋から受け取り、私はそれを見た そして驚愕した 「……!?」 それはトレーナーカードだった しかし、ただのトレーナーカードではなかった 「…………うそーん」 ★が四つのゴールドカード カードに貼られてある写真はどう見ても私だ そして決定的なのは、トレーナーカードの名前の欄に『ミリ』と書かれていて 開いた口が塞がらない 「…つまり、これは私の物って事だね?」 聞いてみる必要はなかったが、あえて聞いてみたら二匹は同時に頷いた …二人は分かって私をここに連れて来てくれた事になるのかな。でも何でこれがここにあるって分かるんだろう にしてもニッコニコと同じ顔同じタイミングで尻尾振る姿は可愛いね! 「……ん?」 私はある事に気付いた 「これ…よく見ると私のデータにあるダイヤモンドの道具と一緒…?」 昨日久々にオフという事もあってダイヤモンドのカセットをDSに差し込んで愛しのポケモン達の育成に勤しんでいて、その時バックの中身を確認してあったからまだ記憶に残っているのもあるけど…これは、そう、私がゲーム上で手に入れた道具だった 実際にゲームと実物を見ると違うなぁ。ザックザク色んな道具があるよ。…でも一体何でゲームの中の道具が此所にあるんだろ ま、大体予想つくけど 「どうやら私が困らない様に、ダイヤモンドのデータを引き継ぐ形にしてくれた様だね」 「ブイ?」 「ん?あぁ…こっちの話(そういえばダイヤモンドとか分からないんだっけ)」 「ブイブイ!」 「黒恋、白亜。どうであれ私を此所に連れてくれてありがとうね」 「「ブイ!」」 感謝を込めて私は二匹を抱き上げ、そのままギュッと抱き締める 二匹は褒められた事が嬉しかったのか、キャッキャッと笑いながら私の頬を舐める。私はしっかりと二匹を抱き上げ、ポンポンと頭を撫でてあげた 「(という事は、この家はこの世界の私の家にしてもいいのかな? ――――ね、フレイリ)」 『えぇ、その為に用意したのだから』 頭の中に響いてきた聞き慣れた、私をこの世界に連れて来た元凶であり 私の唯一の相棒であり友でもある、フレイリ・トルーチェ・レイチェル 「(おはよう、フレイリ。怒らないから挨拶ついでに私に何か食べ物出して頂戴)」 『あらあら、ごめんなさいね。そこまで配慮が回っていなかった事に気付かなかったわ』 「(そんなの今更でしょ。…うー腹と背中がくっつく。後少しで腹が鳴っちゃう)」 『あらあらあら』 フレイリの魔法で机の上に食べ物がいきなり出てきた事にかなり驚く白亜と黒恋。驚き方が一緒で私はあまりに面白かったからつい笑った あ、お腹がなった → |