闇夜の活躍のお陰もあり、地下へ続く入口を見つける事に成功した突入チーム達。勢いを殺さず、団体行動を守りつつ地下へ進んでいくと―――とある広場へ辿り着く事になる

ジムにある公式のバトルフィールド並に広い広場だった。さぞ此処でバトルしたら気持ちいいくらいだろう。バトルフィールドではないが、さぞ此処では遠慮無くバトルをしても良さそうな空間だった

――――それを、敵は見越していたのだろうか

彼等は手堅い歓迎を受ける事になる






「………ここでやっと、大歓迎ってわけか」







全員が広場に足を踏み入れて、すぐに

至る所からポケモンが現れたのだ。続出と現れたポケモン達は瞬く間に全員を取り囲む事になる。しかもポケモン達は恐れていた症状―――凶暴走化となって全員に牙を向けていた

やっぱり此処にいたか。ゲンは小さくそう零した。どうやらゲンの波動は此処にポケモンが居た事を読んでいたらしい。ゲンはゴウキに視線を向けるとゴウキは頷き、オーバにも視線を向けると彼もまた頷いた

ゴウキはデンリュウを、ゲンはルカリオを。そしてオーバは腰からボールを取り出し―――ゴヨウから預かった、バリアードを繰り出した


向かう先は―――広場の先にある、更に地下へ繋がる扉に塞がれた階段へ





「ゴウキさん、」

「ゲン、オーバ。行くぞ」

「あぁ!」
「おう!」

「お前達は後に続け。出遅れるなよ!」

「「「「あぁ!」」」」
「えぇ!」
「了解!」
「はい!」






極力無駄なバトルは避けたい。無駄に疲労しては肝心なところで機能は出来なければ、このポケモン達にも酷い傷を与えてしまう。ポケモン達には罪は無いのだから

特攻チームを先頭に、一斉に全員は地下へ続く階段へ走り出した

凶暴走化しているポケモン達は当然襲いかかってくる。牙をむき出しに迫ってくるポケモン、光線を繰り出してくるポケモンと、容赦ない攻撃が彼等を襲った。先陣を斬るのはゴウキが所持するデンリュウ、敵の攻撃を防ぐのはゲンのルカリオとオーバが所持するバリアード。彼等もただやられる人間ではない。ポケモントレーナーとして仲間を守る戦い方を駆使した連携プレイで難を凌いでいく

だがしかし、数は圧倒的にあちらの方が上。中々前に進む事が出来ないでいた。やはり敵意をむき出しにする相手を前に守りながら戦うのは厳しいものがある―――そうゴウキが悪態を吐こうとした時、足下の影に潜っていた闇夜がズズズッと姿を現してゴウキに言った






《―――効くかは分からんが、時間を稼ごう》

「!?闇夜!」

《行け。必ずお前達と合流しよう》

「ッ、闇夜!」

「お前…まさか!」

「―――任せた。必ず戻って来い」







テレパシー全員の頭上まで現れた闇夜はゴウキの言葉に頷くと―――その金色の瞳を輝かせ、全員の足下にある影から深い深い闇を広げさせた

テレパシーが届かないメンバーは突然闇を広げさせた闇夜の攻撃に驚き、凶暴走化したポケモン達は闇夜が繰り出した闇の波に埋もれていく。唯一、闇は全員を包む事はなく眼前の先にある階段まで道筋の様に光を伸ばし、全員を誘導する形で残っていた

動揺を隠せないメンバーに対し、「行くぞ!」とゴウキは大声で足を動かす様に喝を入れた。弾ける様に足を動かせたメンバーは階段の入口にまで無事に辿り着く事が出来た。入口の重い扉をバリアードの念力で開けて、中に入る―――闇に包まれていく空間の先に佇む闇夜を、全員は苦々しい思いの中で重い扉を閉めるのだった






「ッ、闇夜…!」

「闇夜の能力だから助かった事だな…」

「ッ大丈夫かしら、闇夜……」

「闇夜はミリのポケモンだ。信じよう、闇夜の無事を。…今は私達が前に進まなければならない。止まらずに先に行こう」

「…えぇ、そうね。行きましょう」

「シロナさん、足元に気をつけて」






闇夜は自らの意思で広場に残った。自分達を先へ行かせる為に、彼等を止める為にも

無事でいてくれ。ミリの二の舞いには絶対にならないでほしい


全員は長い階段を足速に降っていった






「ポケモン凶暴化現象―――初めて見ましたが、あれはかなりの脅威でしたね」

「…だけど催眠怪電波の影響は受けている様子は無かった……一体これはどういう事なんだろうね」

「奴等の手に掛かれば怪電波を特定のポケモンに対し、様々な使い方が出来るだろう。勿論、奴等にだって影響が無いわけではない。奴等は必ず、保険を掛けている。…怪電波を防ぐ制御アイテムを持っていたら、それはこちらとしても好都合だ」






階段の先は特に凶暴走化したポケモンのいる気配はないらしい。先頭をゴウキとゲン、最後尾にオーバという陣でカツカツと靴底やヒールの音を鳴らしながら階段をひたすらに降っていく

階段を降りながら、怪電波解除チームは先程の光景を思案に暮れる

今もなお、催眠怪電波はこのハクタイの森に影響を及ぼしている。その証拠に必ず見掛けるはずの野生のポケモン達の姿を一切見ないし、こちらに来る前に他関係者のポケモンが眠ってしまう現象を再確認している

なのに先程のポケモン達は起きている。且つ、凶暴走化の電波で豹変している。奴等は巧みに電波を使い分けているのだろうか






「その点で一つ、気になる事があるぜ」

「なんだ?」

「さっきのポケモン達の身体、彼岸花の形をした何かを着けてたぜ。犯罪名を主張してぇならともかく、アレには何かあるんじゃねーか?」






後ろで三人の会話を聞いていたレンが口を挟む

観察眼と洞察眼がずば抜けて優れているレンの目には、あの広場にいたポケモン全員の身体に彼岸花の形をした―――ブローチを着けていたのが見えていた。しかし流石のレンもそれがブローチだとは気付いていない

アレが一体何なのかはともかくとして、きっとアレが何かしらの手掛かりになってくれるに違いない






「……もしそれを奪ってみたらあのポケモン達は眠るのか?」

「さあな。それを考えるのはお前達の役目だろ?」

「否定は出来ない話だ。もしそうであればバトル法にも有利になってくれるはず。ま、それはゴウキ達に任せる」

「あぁ。もしまた現れたら試してみる価値はありそうだ」





真っ赤な真っ赤な彼岸花

不吉な花は、何を意味する?





















暫く降っていくと、また開けた空間に出る事が出来た。一体此処は地下何階なのだろうか。見取り図には無かった地下通路、まさかこの洋館に地下が存在していてしかも敵のアジトにされていたら、此処に住う幽霊達もさぞいい迷惑だろう。そう思わざるおえない

そんな事よりも、だ

次に辿り着いた空間こそ、全員を動揺と困惑を誘う原因にもなる―――とても異質で、奇妙な広場になっていたのだから





「!……ここは…」

「…なに、この部屋は…」





先程の無機質だった広場とは違い―――そこはまるで、オモチャの世界だった

子どもが遊ぶ遊具がところせましと並び、ポケモンのぬいぐるみが大量に置かれていた。小さい物、大きい物様々に、浮世絵離れした空間が、そこには存在していた

何処かでオルゴールの音が小さく鳴っている。本来だったら心地よいメロディーのはずなのに、何故かとても不気味に感じた。そして何故こんなにも、不愉快な気持ちにさせられるのだろう。一体なんなんだ、あまりの異質な光景に全員の足は止まり、愕然と目の前の光景を見渡してしまう

そして、見つけてしまった

ある場所にある、あるモノを






「「「「「――――ッ!!!!!」」」」」







全員は息を飲んだ


全員の視線の先には―――西洋風のキングサイズのベッドに横たわる、一人の女

敵の趣向かは分からない。否、分かりたくもない。西洋風のドレスを身に纏い、おめかしをされたのか更に美しい姿になっていた―――自分達が切実に探し求めていた大切な存在が、まるで人形の様に美しく眠りについていたのだから






「「「「ミリッッ!!!!」」」」











その姿がまるで

死んでいるかと思ってしまったくらい

美しい姿だった









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