『―――その昔、お爺さんと孫の少女が近くの町で仲良く暮らしていた

ある日、少女がポケモンを追いかけて誰も住んでいない森の洋館に入ってしまい、帰って来なくなってしまった。お爺さんは孫を心配し、一人で探しに行ったのが運の尽き―――そのお爺さんも姿を消してしまったのだから

それから暫く経つと森の洋館の近くで、人影を見掛けられる様になってしまった。その人影は一体何者か、真相は闇の中。故に森の洋館に入ってしまうと、けして帰って来れなくなってしまうだろう


そう、噂されている』








「ククッ…懐かしいぜ。お前昔、行きたくないって駄々こねて全速力でハクタイの森を抜けたよな。まさか数年越しに行くことになるとはな。ハッ!ざまあねぇなレンガルス!せいぜい回りにバレねぇ様に頑張るんだな!」

「テンメェエエエッッ!!!!ゼルジースお前マジふッッざけんなよ戻ったらぶっ飛ばしてやるからなッ!!!!」





―――――――
―――――
―――











「――――こちらからは以上です。総監、よろしくお願いします」

「あぁ。よし、次だ。突入チーム、乱入してきた馬鹿を加えて九人。さらにお前等を編成し、各自任務を続行してもらうぞ」







一騒動が一段落着き、改めてアジト突入の際の最終会議が行われた

会議室にあるホワイトボードには敵アジト付近の地図、また報告されているアジトの見取り図や各報告書等が様々に掲示されている。会議室を包む空気はとても重苦しく、緊張感でいっぱいだ。誰もがみな、手元にある資料と耳から入る情報に集中している

彼等を指揮するのは総監のゼル。ずらりと並ぶ各関係者の前に立つ彼は物怖じせず、その若さに勝るほどの威厳を携えながら着々と話を進めていく





「まず今発動している催眠怪電波を止めなきゃ警察も突入出来やしねぇ。この催眠怪電波を発動させている装置を止める事を第一優先にするメンバーの名を上げる





ナズナ、ダイゴ、ゴヨウ。ナズナ、お前はリーダーになれ。ダイゴとゴヨウはそいつの補佐に回れ。解除中は動けなくなるからな、そいつを守ってやれ」

「!…いいだろう」
「了解」
「分かりました」







名を呼ばれたのはナズナとダイゴとゴヨウ

仮にこの者達を"怪電波解除チーム"と指そう

ナズナは言わずと知れた有名人、ハッキングを駆使出来る彼には怪電波の解除を担当してもらうには相応しい人材である事は一目瞭然。ダイゴは自社が機械に詳しい専門でもある為、このチームに任命されたといってもいい。ゴヨウは専門ではないとはいえ、二人の補佐には回れるくらいの知恵がある。三人がチームになるのは妥当だといえよう






「次だ。突入する際、凶暴走化したポケモンなりロケット団の残党なり、敵が現れるのは確実だ。さっき言った奴等の阻止をされたらそれこそ意味がねぇからな、進んで攻撃に回れ。だがあの怪電波に操られた奴等はゾンビの様に復活する。体力が尽きねぇ程度に、自分達を守る為の攻撃に徹しろ





ゴウキ、ゲン、オーバ。リーダーはゴウキ、お前だ。シホウイン道場の師範長だか知らねぇが、率先して奴等をぶっ潰せ。ゲン、お前は得意の波動で奴等の居所を探れ。いいな?」

「あぁ、任せろ」
「分かった」

「………、はい総監。俺は?」

「お前は………あー、次行くぞ」

「俺は!?」







ゴウキ、ゲン、オーバ

彼等の事は"特攻チーム"と呼ぼう

一般人であるが警察側の人間でもあり、幾度か犯罪解決に貢献してきたゴウキだからこそ、このチームのリーダーは当然の事。そして波動使いのゲンが波動を駆使して相手の居所を探り入れる能力があれば、鬼に金棒というべきか。二人は気や波動の関係で仲がいい。素晴らしい連携プレイが出来る事が期待されている。ちなみにオーバは戦闘員の一人としてカウントされる為、特別なコメントは特に無し(俺は!? byオーバ







「次だ。俺としたらこっちを最優先にしてもらいてぇが…そんな私情は置いとくにして。奴等に囚われているミリ様を救出するチームのメンバーを呼ぶ





シロナ、デンジ、レンガルス。シロナをリーダーにしてミリ様を捜せ。ルカリオの波動、レントラーの透視の眼でくまなくミリ様の御身を捜すんだ」

「分かったわ」
「おう」
「………」







シロナ、デンジ、レン

この三人は"ミリ救出チーム"としよう

もうこの時点でレン、ゴウキ、ナズナ、ゼルの中でミリの死亡説は払拭されている。勿論事情を知らない他の者達も、希望を失わずミリが生きている可能性を信じている

ミリの波動が感じられない事とレンの腕輪が真っ黒くなっている原因は、きっと奴等が何かをしているに違いないからこそ、望みを掛けてミリを救い出す。この三人はそれぞれミリに対する想いは強い。彼等が救出チームに抜擢されるのも、当然といえよう






「言っておくが、あくまでも一つの役目として認識していろ。実際に現場に入っちまえばどうなるかは分からねぇ。行動の有無はお前達のその場の判断に任せるが、なるべくチームで纏まっている事が条件だ。いいな?………よし、それから次は――――」










ここまでの確認

簡略詳細及び突入メンバー名一覧



〇〇月〇〇日〇曜日AM9:00 

「聖蝶姫救出及び怪電波阻止」任務始動

犯罪組織『彼岸花』アジト(推定)

ハクタイの森 〇‐T256‐〇〇〇地点





・怪電波解除チーム

ナズナ…考古学博士/【隻眼の鴉】
 フーディン
 アリアドス

ダイゴ…ホウエンチャンピオン
 ルカリオ(親:ジン)
 メタグロス

ゴヨウ…シンオウ四天王
 フーディン
 ドータクン




・特攻チーム

ゴウキ…シンオウ四天王(臨時)/シホウイン道場師範長/【鉄壁の剛腕】
 デンリュウ(親:ナズナ)
 ダークライ(親:ミリ)

ゲン…カンナギ博物館警備員
 ルカリオ
 メタグロス

オーバ…シンオウ四天王
 バリヤード(親:ゴヨウ)
 エルレイド(親:ゴヨウ)
  ※二匹とも使用に時間制限あり




・ミリ救出チーム

シロナ…シンオウチャンピオン
 ルカリオ
 エーフィ(親:ゴヨウ)
  ※エーフィに限り時間制限あり

デンジ…ナギサジムリーダー
 レントラー(親:レン)


レン…情報屋/【白銀の麗皇】
 エルレイド
 ガブリアス
 スイクン






合計九名がミリの奪還及びポケモン凶暴走化現象を断ち切る為に突入&阻止を決行する―――――




















「―――――てっきり、凶暴走化したポケモンが束になって襲いかかってくるかと思っていたけど……」






カー…カー


 カー…カー


何処か遠くから微かに聞こえるヤミカラスの鳴き声が森の中を木霊させる






「…なにもないな!」

「そうね」

「何も起こらないね」

「…ポケモン暮らしてんのか?」

「ポケモンのいる気配はそれなりに感じるんだけどね…」

「静か過ぎて逆に不気味ですね…」

「「「………」」」






此処はハクタイの森

目的地まで歩を進める彼等は、あまりの静けさに不気味なモノを感じていた




――――催眠怪電波は、このハクタイの森を中心に発動されている

まるで自分達の存在を主張しているかの様にアジト発覚後に怪電波を発動させる奴等に、つくづく業腹で大変遺憾を覚えざるおえない。まるで嘲笑うかの様に高見の見物をしているかの様に。勿論怪電波は今もなお発動している。他の野生のポケモン達は一匹も現れる気配なんてしない。微かに聞こえるヤミカラスの鳴き声くらいだ

彼等がこうやってハクタイの森を団体で歩くのも、怪電波が効かないポケモンを所持しているからこそ。他の関係者では万が一ポケモンが現れた時の対処が不可能。ギリギリのラインのところで見送られた彼等九人は、目的地に辿り着くまで黙々と歩いていたのだ






「しかしあの洋館か…敵もまた面倒くせぇところにアジトを構えたな。おいオーバ、お前あの噂知ってるか?森の洋館、別名"幽霊屋敷"」

「知ってる知ってる。こっちじゃ定番だよな。ナタネが何度か挑戦してたって話だよな。…けど今はてっきり聞かなくなったよな、幽霊の話。やっぱアレか?ミリが除霊してやったからじゃねーか?」

「あー……そんな話あったな。ナタネ曰く、うじゃうじゃゴースやゴースト引き連れてそのままロストタワーに行ったって話だったか?」

「え、なにそれ知らない。ミリはこっちでそんな事してたのかい?」

「人聞きだけどそうらしい。ミリもよくやるよ」

「……よくやるよ、で終わらせる話なんでしょうか…」

「あの子らしいわぁ」






あまりの静けさ、そして目的地が色んな意味で有名な場所な故に、自然と彼等の口はミリの話を出す事でこの不気味な空間を紛らわそうとする

森の洋館、別名幽霊屋敷

敵もつくづく厄介な場所にアジトを構えたものだ。罰当たりもいい話だ。だが隠すには恰好のいい場所でもある。ナタネの話が本当ならミリが除霊した後にアジトになってしまったのか―――とにかく奴等をぶっ飛ばせばいい話だ。幽霊なんて知らないし、信じてもいない。何も問題は無い、と彼等は敢えて前向きな思考で自己完結をする


一人だけを除いて






「………麗皇、」

「あ?何だよナズナ。今の俺に話し掛けんな。つーかこっち見るな。さっさと行くぞ」

「………そうだな」

「(気がギスギスしている……!そうかコイツ、こういうの嫌いだったのか。意外だな……)」

「あ!おいレン!歩くの速いぞ!」








一度入ったら、戻れない

謎に包まれた、幽霊屋敷





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