「………サーナイト」

「サー」

「此処は何処だ」

「………サー…」

「おかしい。俺はただ、テレポートに出たところに戻ろうとしただけなのに一向に辿り着きゃしねーじゃねぇか。マジふざけんな。この森は迷いの森か?俺を惑わしたいのか?俺が歩くとこの森も動くのか?意味分かんねーよふざけんな帰らせろ焼き払うぞ」

「……サー……」








かっこよく去ったつもりが迷っていた



―――――――
――――
――










ポケモン催眠怪電波

リーグはこの怪電波の対策として波動ポケモンのルカリオを抜擢し、またエスパータイプのポケモンを起用する事に相成った

ルカリオは得意とする波動を身に纏う事で怪電波の影響を弾き返すという、数ヶ月前に起こった―――鋼タイプを狙った、「こうてつじま怪電波事件」で事件解決に貢献したルカリオ使いのトレーナーの技を採用する事になる。エスパータイプのポケモンに至ったのはルカリオの波動に似た事が出来るのではないか、という四天王の一人が提案した事で採用される事になった。残念ながら他のポケモンであの怪電波に立ち向かえるポケモンはおらず―――これ以上野放しにしておくわけにもいかないと判断したリーグと警察は、このルカリオとエスパータイプのポケモンで臨む事に至った

かといってルカリオは稀少種、エスパータイプでも波動みたいに超能力を身体に纏って防御出来るポケモンも少ない。なるべくリーグ関係者や警察関係者で対応しようにも、やはり限界がある。そうなると自ずと突入チームのメンバーが限定されていき―――ある人物達が、抜擢される事となる






ルカリオを所持し、波動を使って怪電波を防御出来る存在

―――その名はゲン


シンオウチャンピオンであり実力御墨付きなルカリオを所持する存在

―――その名はシロナ


副幹部長から一時的とはいえルカリオを使いこなす事が出来たホウエンチャンピオン

―――その名はダイゴ


難しいとされるエスパータイプのポケモンで怪電波を防ぐ事が出来た存在

―――その名はゴヨウ




他にもゴヨウのポケモンを借りる事でチーム入りを果たすオーバと、ゼルの御指名でチーム入りとなったナズナとゴウキとレンを含めて―――『彼岸花』のアジトの突入、ひいてはポケモンマスターであるミリ救出チームは計八名の凄腕トレーナーに決定する事となった


警察は、突入した八名が無事に怪電波装置を解除したとゴウキの連絡を受けてから突入する話で決まっている

他のリーグ関係者、及び各地の研究所の者達は万が一回りに被害が起こらない様に万全の態勢を整える。警察も協力してい街を守っていく流れである

勿論、ジムリーダー達はそれに含まれている。街を守る為に、ジムリーダーのプライドに掛けて守り通す。本心は自分達も突入チームに加わりたい、しかし自分達には何も出来ない―――だからこそ、突入チームの方々には自分達に変わって頑張ってもらいたい。ジムリーダー達の熱意を受け取った彼等は「必ずミリを連れて戻ってくる」と約束をした



そして彼等は計画を重ねに重ね、数日後

『彼岸花』のアジトへの突入を―――前日に控える事になる












「デンジ、お前もその突入チームに加われ」

「「!!」」





此処は、ナギサシティ

今日も街のパトロールに勤しんでいたデンジとオーバを相手に―――喫茶店で運営していたはずのトムが、出会い頭に唐突と言い放つ

今日も今日とてサングラスを反射させ、足下にヘルガーを従えた彼にデンジは驚いた様子で見返す。この男は今何を言ったんだ?とトムの言葉が飲み込めずにいる。対するオーバはトムの意図に気付いたのか表情が嬉しい意味での驚きの表情を浮かべていて

トムは小さく笑って話を続ける






「ナギサシティに関しては私に任せろ。元ジムリーダーとしてお前の代わりに住民の前に立とう。安心しろ、まだまだ私の人脈は衰えてはいない。私が話せば住民達も理解してくれるだろう。ま、といっても今回の突入の件に関しては極秘にしておくが」

「!……トムさん、」

「お前だけ行かないわけにはいかないだろう?―――行け、デンジ。行ってミリを救い出してこい。無事戻って来たら、喫茶店にでも寄ってくれ。…とびっきり美味しいココアでもてなそうじゃないか」






ポン、とトムはデンジの肩に手を置く

最初こそ意味が分からずといった様子だったデンジであったが―――トムの説明、意図そしてトムの気持ちに気付いたデンジは、そのスカイブルーの瞳を輝かせ、表情も嬉しそうに噛み締めていて






「デンジ!」

「ッ、あぁ!これで、俺も―――」






ミリを、救い出せる――




デンジはジムリーダー、且つ手持ちに怪電波に対抗出来るポケモンを持っていない事もあり、突入チームに加わる事が叶わなかった。やはりジムリーダーという職が壁を阻み、名前すら上がる事が無かったのだ

一般人だが波動使いのゲンさんは百歩譲ったとしてもオーバだって手持ちに対抗出来るポケモンがいねぇのに何でアイツはチームに入ってんだよ!と悪態吐いたのも記憶に新しい。ミリと共に過ごしたメンバーもチームに加わり、(ゼルの指名とはいえ)あのレン達も加わるとなったら黙ってはいられない

ミリを助けたい気持ちは誰よりも強いと自負している。けど自分はチームにすら入れない。悶々と苛立ちと不甲斐ない気持ちがグルグルとデンジの心をかきむしっていく

だからこそトムの言葉はまさに光だった。トムが後光を差して見えるくらい、デンジは嬉しい気持ちでいっぱいだった。感情が高ぶったのも相成ってオーバとハイタッチをしたほどに



嬉しそうに笑い合う二人の姿を、トムは静かに見て笑う


喜んでいたデンジであったが、ハッと正気を取り戻し、トムに振り返る。真剣な表情で、デンジは改めて口を開く






「―――トムさん、俺は必ずミリを救い出して…絶対に、ナギサに連れ戻してみせる!」






だから、トムさん






「俺の代わりに―――ナギサシティを、よろしくお願いします!!!!」






元ジムリーダーであり、恩師でもある男に

デンジは頭を下げた


トムはまさかデンジが自分に頭を下げてくるとは思わなかったらしく、驚いてデンジを見返すも

頼もしそうに、ニヒルに笑った






「―――あぁ、行ってこい」







また、あの三人一緒の姿を見せてくれ

楽しそうに笑う、微笑ましい姿を







「行くぞオーバ!」

「あぁ!」













その前に、大きな壁を乗り越えてから





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