「レン!最後まで私に分かる様に説明してくれないか?こちらはとても消化不良なんだが」

「ゲン、今はまだ他の奴等にこの事を話すなよ。これは俺達二人だけで調べるぞ。揺るぎない核心を得た時にでも、アイツ等なり警察なり知らせりゃいい。いいな?」

「?――それは構わないが、一体何故そこまで徹底するんだ?何か訳でもあるのか?」

「訳も訳で大アリだ。これは他の奴等は知らねぇ情報、俺達しか知らねぇ話なんだよ。それは――――」






そうして、着々と


――――――
――――
――








ナズナが『彼岸花』のアジトを見つけ出し、警察とリーグ総出で着々と『彼岸花』壊滅に精を出してから、早くも一週間。確かな安全、確実な計画を元に緻密な連携をとって世間に知らされる事なく内密に動いていた

相変わらず世間は「ポケモン凶暴化現象」に怯えている。ミリが行方不明になってから、既に二週間が経過している。このままの規制は限界だ。早々に片を着けなければ、本当の安寧を取り戻す事は出来ないだろう

世間に公にされる前にも『彼岸花』の組織を壊滅させ、ひいては行方不明になったミリの救出しに入る。ミリの死亡説が無くなった以上、奴等に囚われている可能性が大だ。二週間も経ってしまっていたらミリの身が(色んな意味で)危険だ。早く救出してやらなければ、自分達は更に後悔する事になるだろう。記憶を忘却されたシンオウの者達は、必ず助け出すと決意を新たに決める

早々に奴等との決着を着け、ミリを救出し、「ポケモン凶暴化現象」の恐怖を断ち切ってみせると―――


しかし、そう簡単に物事は進まない

また新たな脅威が、シンオウを襲った







それは、とある場所

警察関係者と研究所関係者の者達が、ナズナが見つけたアジトの周辺を調べていた時だった

パタリ、と一匹のポケモンが倒れた

不自然に倒れたポケモンに、持ち主は驚いて確認すると―――そのポケモンは、眠っていた。気持ち良さそうに鼻ちょうちんを膨らませて

ただ眠くなったにしたら時間帯がおかしい。昼寝の時間帯ではないのは確かだし、鍛えられたポケモンだからこそ任務中に寝る事なんてありえない。それとも催眠術にでも掛けられた?変なモノでも食べたのか?―――そう思っていた束の間、他のポケモン達もどんどん倒れていくじゃないか

後から気付いた者達は、それはそれは動揺を隠せず困惑していた






「おい!これは一体どういう事だ!?」

「分かりません!次々とポケモン達が眠っていきます!」

「ッダメです!ねむけざましが効きません!」

「ポケモンをボールの中に戻せ!撤退するんだ!このままでは私達の身が危険だ!退避だ退避!徹底だーーッ!」






なにより此処は敵のアジトの周辺。何が起こるか分からない場所だ。ポケモンが使用不可能になってしまったら、自身の身が危ない。周辺調査していた者達は撤退を余儀無くされた

そしてこの出来事はすぐにでも報告される事になる。知らせを聞いたリーグと警察はそれはそれは驚いた事だろう

すぐに調べを進めたら、この現象の正体に気付く事に成功する。しかし、状況は最悪なものとなってしまう



―――何故なら、ポケモンを眠らせてしまう催眠怪電波が発動していたのだから








「――――状況はかなり深刻だ。まさか今度はポケモンが眠らされてしまう怪電波を送ってくるとは想定外だ…」

「せっかく奴等のアジトが掴んでこれから一斉に突入の段階に踏み切れたというのに………」






リーグ協会シンオウ支部の情報管理部のメインコンピューター前に

此処の幹部長と副幹部長のコウダイとジンが、苦々しい表情のままにモニターに映し出される映像を見上げていた






「怪電波はあのアジト付近が強く濃厚に出ている。怪電波の種類もまた違うモノと言ってもいいでしょう。今詳しい分析をナナカマド博士達を中心に調べてもらっています。確実に言えるのは、奴等は俺達がアジトを突き止めた事を知った。突入を阻止する為に、最大の戦力でもあるポケモンの使用不可能にさせるのが狙いなのでしょう」

「仮に危険を顧みず突入したところで凶暴化したポケモンが待ち受けている可能性もある。安易に人間単身で突入でもしてみろ、たとえ鍛えている警察とはいえ…命の保証は出来ん。勿論、それは俺達リーグ関係者でもな」

「クソッ!俺達のポケモンが使えねーんだなんて!」

「これからだって時なのに!」

「まだ幸いだったのは、電波が届かないところは影響が無かったのが救いだったね……」

「ですが…更に私達は追い詰められた事には変わりはありません。この状況をどう打開していけばいいのか…」

「『彼岸花』…なんて恐ろしい組織なの」






リーグから急遽呼び出されたナズナ、警察の代わりで来たゴウキ、そしてリーグの主戦力でもある四天王及びチャンピオンの者達も苦々しい思いを抱きながらモニターを悔しそうに見上げていた


奴等のアジトが見つかり、警察と連携を取りながらやっとミリを救えると思っていた矢先の出来事。「凶暴化現象」に備え、シュミレーションも計画も緻密に緻密を重ねてきたというのに、肝心なポケモン達が動けなくなるとなったら全てが水の泡

後少しのところだったのに、もう少ししたらミリを救えるのに―――煮え湯を飲まされた思いだった。それは彼等だけではなく、全ての関係者に言えた事だった






「まるで挑戦状を叩き付けられた気分だ。逃げも隠れもしない、この状況下の中でどう立ち向かってくるのか―――私達は高見の見物をされている。実に業腹だ、実に不愉快極まりない」

「奴等はこの状況を楽しんでいる。…犯罪組織『彼岸花』、奴等は他の組織の脅威を上回った恐ろしさです」






嗚呼、本当に

なんて不愉快で、忌々しいんだ

奴等は今でも高見の見物をして、嘲笑っているんだから







「ねえねえナズナ博士!この怪電波を防ぐ様なバリアー的な装置とかないの!?科学者ならパパッと造れちゃうよね!?」

「…物作りを舐めては困る。すまないが今の段階では不可能だ。今から作製するにしても早くても一ヶ月は有するんだ。…ミリさんの救出を最優先に考えれば、その一ヶ月の時間はとても待てるものではない」

「そんな…!」

「僕の会社と連携出来たらよかったけど、生憎あちらはあちらで手を貸せる余裕が残ってない。…すみません、ナズナさん」

「そちらのホウエンの事情は知っている。謝るな、気を落とさないでくれ」






まさに八方塞がりだ

この状況をどう打破すべきか―――彼等は判断を迫られた





その時―――








「――――ゼルジース様、如何致しましょう」

「だったら、あの怪電波が効かねぇポケモンを見つけ出し、そいつらに行ってもらうしかねーな」









後ろから現れた新たな気配








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