「―――――…、は?」




「カツラ、」

「これだね?」

「は?あ?おい、それ俺の荷物…」

「これも渡しておくよ」

「あぁ」

「ってそれ俺のボール…」

「はい、レン。これ、皆で撮った写真。手帳に挟んで…私の事、忘れないでね…!」

「あぁ、後これお土産ね。二人のお母様とお父様に」

「すまないカツラさん」

「有り難く頂く」

「…おい、一体どういう事なん…ってお前らもしや…!?」

「刹那、やれ」

《任せろ》

「Σおわぁあああああ!?」






リズム良く会話が続き、話が掴めないレンは目を点にするが――…ゴウキが言った内容、カツラ達の行動で瞬時に理解したレンであったは時は既に遅く、抵抗する前には刹那のサイコキネシスに捕まってしまった

全くもって動けない身体に冷や汗を流すレン。グィインと急に身体を超能力で動かされ、簡単にミリから引き離される。宙にピッタリと停止させられレンが見たものは――…不敵に笑う、ゴウキの姿があった

サッと、レンは顔を青くした






「お、い…ゴウキ、テメェまさか…!?」

「流石は白皇、察しが良いな。――…お前も俺達とシンオウに戻るぞ」

「テメェェエーーーーーッ!!やっぱりかぁああああーーーーッ!!」






レンを見上げ、不敵に笑うゴウキと苦笑を零すナズナ。面白そうに笑うカツラに…――泣いていたはずなのにニッコリと笑う、ミリの姿

この四人の顔を見れば、全員がグルだったのは一目瞭然だった





「おい、刹那!降ろせ!サイコキネシス止めやがれ!!お前ら俺を最初っからこうするつもりだったのか!?」

「人聞きの悪いぞ、白皇。これはマツバやミナキに刹那や黒恋の願いでもあり、俺の希望でもある。…舞姫に相談したらな、快く話を聞いてくれてな。許可も得た事だから…――それを実行したまでだ」

「Σはぁーーーーーーッ!?ゴルァアアアテメェらぁあああ!!何でそこにマツバとミナキがいるかは知らねぇが刹那!黒恋!お前らぜってぇーシバく!…それからミリ!!何勝手に話決めてやがんだよ!」

「てへっ☆」

「てへっ☆じゃねぇよ!何がてへっ☆だよ!?ざけんなよお前犯すぞ!!」

「やーんゴウキさんあの人こーわーいー!」

「そうだな、舞姫。言葉が悪い野蛮な奴にはこの俺が直々に手を下してやる」

「わーいゴウキさん頼もすぃー」

「「ブィ〜」」

「ナズナ、ゴウキ君…なんだか輝いて見えるね」

「そうだな…」

「離しやがれぇええーーーッ!!」






レンの叫びも虚しく、ゴウキが時杜の名を呼べば、ピシッと敬礼してレンの前に降り立つ時杜

時杜を見れば、レンの顔が驚愕に染まる訳で――開かれた空間の"先"を見れば、説明するまでもないだろう。あの時とは状況が違って――…本当に、今度こそ自分の知っているシンオウの景色が紅い空間の中に映っていたのだから






「――…強くならないと、と言った言葉を忘れたとは言わせない。お前の為に修業を付き合う俺の計らいに感謝するんだな。徹底的に鍛え直してやる」

「お、おい…おま…本気、で…」

「期間は…そうだな、約一ヶ月か。舞姫には悪いが、コイツの根性叩き直すにはしょうがない。連絡も暫く禁止だ、むしろ電波の届かないところで修業だ」

「ゴウキさん!頑張って下さいね!そしてレンをよろしくお願いします!」

「あぁ」

「おいおい…!マジふざけんなよ…!…っヤメロォオオオ!行くんだったらミリも道連れだ馬鹿野郎ぉおおお!!」






無駄な抵抗も、レンの叫びも虚しく身体は刹那の力で浮上していく訳で

在らん限りの力で抵抗しようとしても無駄で、そうこうしていく内にもう時杜が開いた紅い空間が目前に控えている。ぜってぇー帰ってやるか!と頭では思っていても、意味を成さない

後少しで、紅い空間に――…










「…―――レン、」









自分の名を呼ぶ愛しい声に、フワリと香る花の香り

紅い空間を映していた視界にミリの顔が入ってきたと思ったら――…唇に、柔らかい感触を感じ、レンは目を大きく開いた。視界いっぱいにはミリの顔、唇が離された彼女の表情は、微笑を浮かべていた





「ッ…ミリ」

「私の事は大丈夫だよ。――体調の関係で貴方を束縛させてしまったから、…貴方のしたい事に専念して」

「――――…」

「それに次は、私の番。――…一か月後、私は貴方を追いかける。レンが私を見つけた様に、私もレンを見つけるよ。…――絶対に」

「ミリ…」






レンの頬にミリの手が触れ、包み込む。クスリと笑うミリはまた一つ、レンの唇にキスを落とす。触れるだけのキスでも、会えない分まで、しっかりと

レンもまた、ミリの行動に目を大きく開かすも――…静かに瞳を閉じる。ミリと同じく、会えない分まで、しっかりと…――






「――…絶対、シンオウに来い。俺を見つけてみせろ、ミリ」

「絶対に貴方を見つけるよ、レン」







交わした、約束



次の旅への、ステップへ








「再会したら覚悟しろよ。…――倍返しにしてやるからな…!」

「わー、こわーい」

「そろそろ俺達も行くか。黒恋、舞姫をねんりきで降ろしてやってくれ」

「ブーイ」

「最後に良いモノが見れたな」

「青春だね〜」

「ゴウキテメェェエエ…!シンオウ着いたら覚悟しやがれ…!!再起不能にしてやるからな!!」

「分かった分かった」










これが別れとは、限らない



だからさよならは言わないよ










「―――…また会おうね、皆」










会った時には、また



ピクニックをしに、遊びに行こうね







「また会おう、舞姫」


「ミリさん、どうか元気で」


「――…絶対に来いよ、ミリ」







一人ひとりとまた消える


そして――ゆっくりと、空間が閉じられた








「ありがとう―――――……」







本当に、ありがとう





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