決着が着いた

また一つ、終止符が着いた













Jewel.37













金色が、輝いている





漆黒の闇の先に煌めいている輝かしい黄金が、炎が燃え上がる如く激しく輝きを放っている。眩しい光だ、でも、温かい光……―――私には少々眩し過ぎて熱過ぎる光だ

触れられない、否―――触れてはいけない

暗い視界の先―――心夢眼の先に浮かび上がる黄金の炎。メラメラと激しく揺らめくその炎は、激しい激情で燃え上がっている。しかもその感情は私に向けられている。まっすぐに、純粋に

触れてしまったら燃えてしまう。この黄金は、私が触れてはいけない炎だ。絶望に染まった暗黒の闇に墜ちた私―――…この炎に触れてしまったら最後、あまりの強い光に私自身が炎上してしまいそうだ

この炎は、絶対に消してはいけない








「ガブリアス、ギガインパクト!」

「避けなさい。それから軌道を駆使してれいとうビーム」

「りゅうのいぶきで相殺するのよ!もう一度ギガインパクト!」



「ギシャァアッ!」

「…!」







始めは小さな淡い光だった黄金は、時を重ねていく事に成長し、手で眼を覆い隠したいくらい眩しい光へと変貌した。この光は今後も大きく輝きを増すだろう。様々な試練を乗り越え、様々な経験を重ねて、そうして辿り着いた先はきっと光が望む未来が待っているはず

―――…フフッ、笑っちゃう。本当は今そんな事を思っている暇なんて無いくらいに楽しいバトルをしているっていうのに、どうして今更こんな事を思っちゃうなんて







「本当に…―――強くなったね、シロナ」








こうして戦っているとよく分かる。チャンピオンになる目標を掲げ、日々切磋琢磨していた事を、日々努力を惜しまずまっすぐ突き進んでいた事を

私のした事は間違ってなかった。私の存在がいるお蔭で―――こんなにも、シロナは強くなってくれた

朱翔や水姫や風彩や闇夜を相手に、本当によくやってくれたと思う。でも蒼華に勝つ事が叶わないのは分かっているし、彼女達も薄々気付いているのかもしれない。でも、全ては結果だけじゃない。お互いが、このバトルを楽しめていればそれでいいんだよ

私はシロナという人間を評価したい。此処まで頑張ってくれたシロナを、ひたむきに頑張ってくれたシロナを。このバトルで、誠意を込めて答えてあげたい―――――……







――――ドッガァアアンッ!!








「ガブリアス、戦闘不能!スイクンの勝ち!






よって、このチャンピオンバトルの勝者は――ミリ選手の勝利です!」





ワァァァァァァ…!







『き、きききき………―――ッ決まったああああああッ!遂にッ!遂に決まったああああああッ!長きに渡るこのバトルに終止符を打ち、見事勝利の栄光を掲げたのはスイクン!即ちこの特設リーグ大会の勝者は―――トップコーディネーターである盲目の聖蝶姫、ミリ選手だぁああああッッ!お前らァァァァ!此処まで頑張ってくれた二人に、二人のポケモン達に盛大な拍手を贈ってやってくれェェェ!ブラボーブラボー!ブラブォォオオオオオッ!!俺達に感動を与えてくれてありがとおおおおお!』

「「「ワアアアアア!」」」








外は寒い筈なのに、ポカポカと身体が熱っつい

熱中していたお蔭からか、今まで観客の声が聞こえなかった。でも、試合が終わったと思ったら後からドッと耳に大歓声が響いてきた。普段だったら大音量過ぎて正直耳を塞ぎたくなるくらい痛かったのに…―――今は何故か、心地好く感じた

蒼華がフィールドから戻ってきた。ガブリアスの繰り出す技に何度か衝突し、傷を負っていても元気そうだった。良かった。おかえりなさい、お疲れ様と労いの言葉と共に蒼華の首を優しく撫でてやれば、彼は瞳を細めて静かに擦り寄ってくれた

カツン―――…、と歓声に混じってヒール音が耳を霞む

シロナが、こちらに向かってまっすぐ歩んでいた。その表情は、とても晴れ晴れとしていて、纏う感情のオーラも清々しいもので







「完敗よ、結局あなたに勝つ事が出来なかったわ。でも楽しかったわ、このバトル





――ありがとう、ミリ」








黄金が、輝いている

綺麗な金色の髪を靡かせて、素敵な笑みを浮かべて笑うシロナ。手を差し出す彼女はまさにチャンピオンとして相応しくて

黄金の炎はとても立派に、輝いていた









「こちらこそ、楽しいバトルをありがとう―――シロナ」









この光を、私は、愛しく思うよ

喩え私にとって大き過ぎる光だとしても、ね――――…







―――――
―――











閉会式が速やかに行われ、特設リーグ大会は此にて無事に幕を下ろした

一日だけの特設リーグ大会。大会はリーグの予想を、否、私の予想を遥かに超えた盛り上がりを見せてくれた。聞けば歴代史上最高の盛り上がりだとアルフォンスさんはいう。本家のリーグ大会を終わった矢先それでいいのかと思っちゃうけど、それだけ皆さんは私達のバトルの決着を待ち望んでいたんだと思うと、なんだかくすぐったい。ファンだとか、そういうのには全く興味は無かったけど、何だか今は、とても嬉しかった

きっとこれは明日にでも朝ニュースで劇的に放送されまくるんだろうなぁ、と目の前にわんさかと溢れるマスコミの皆さんとファンの皆さんの前にしながらぼんやりと思う私(バトルの高騰感が中々抜けてくれなくて気持ちがまだふわふわしていた)。空はもう真っ暗、世間は家の中で温かい食卓を囲んでいる時間帯だっていうのに、皆さんよくやるよねぇ〜と徐々にやってくる空腹感を耐えながらしみじみ関心していたのはいい思い出←







「初めまして、リーグ幹部長、副幹部長。並びにこの場にいるリーグ役員の皆さん。私の名前はミリと言います。この度は、シンオウチャンピオンであるシロナとのバトルを認め、盛大に戦わせてくれた事を厚く御礼申し上げます」






そんな私は今現在、リーグ大会を開いた孤島から離れた場所にある、今回が二度目となるリーグ協会シンオウ支部にの中に居た






「貴女の噂は伺っています。盲目の聖蝶姫、そしてリーグ大会の別に開催されたコンテスト大会で見事優勝を飾ったトップコーディネーター。先程の白熱したバトル、とても良いものを見させてもらいました」

「我がチャンピオンであるシロナを倒し、見事殿堂入りを果たした事を、私達幹部共々リーグ役員全員は君の活躍を盛大に祝おう」

「光栄です」

「…」
「キュー!」
「……」







私達の前に対峙するのは、このシンオウリーグの責任者でもあり此処のトップの方々

私達に、盛大な大舞台を与えてくれた方々だ

まさかこんな形でお偉いさん方と対面する事になるなんて、誰が想像した事か。他にも私達の回りには此処に勤める役員の方々が勢揃いしていて、その中にも勿論、アルフォンスさんの姿もあった。沢山の人達に囲まれている中、この大会を作ってくれた張本人でもあるシロナは私の後ろで嬉しそうにニコニコしていて(可愛いなぁ!)、彼女の隣にはリーグ大会建設の会長さんで有名なタマランゼ会長がいた(本物見たの初めてだよ…!)。あまりの人数に圧倒されるばかり。大会を開く為にこんなに人が私達の為に力を貸してくれた―――…と考えると、本当に恐縮してしまう








「(終わったんだね…)」








この世界にやって来て、聖地から始まったこの旅はかれこれもう半年が経とうとしている

振り返ればあの時の私達は何も知らなさすぎて、右も左も分からなくて、無力だった。そう思うと自分達はいくらか成長出来たのかもしれない。まだまだ未熟だけど、今こうして立っていられる事は確かな証明になってくれるはずだから


――――…刹那が嬉しそうに感情を揺らしている。時杜も宙をクルクルと回っている。蒼華は相変わらずな反応だけど、影の中にいる闇夜も、ボールの中にいる朱翔も水姫も風彩も、皆何処か嬉しそうに反応を示していた。認めてもらえた事が、実力と存在を認めてくれた事が、皆にとって何よりの喜びだから


私も本当に―――…嬉しいよ








「聖蝶姫、貴女の活躍はこのシンオウに住むトレーナーの魂に火を燈してくれた。貴女の存在はシンオウにとって欠かせないものになったでしょう」

「シンオウリーグ一同は君の殿堂入りを認めよう。君と共に歩み、共に戦ってきた仲間達と共に、この日を忘れられないものにしようではないか」

「はい」









ポケモンの世界なら、目指すならポケモンマスターしかないっしょ!と始まった不安定で曖昧過ぎたこの旅。通過点として掲げた目標も、また一つと終止符が付こうとしている

一つは、コーディネーターとして目指していたトップコーディネーターへ

もう一つは、殿堂入りへ







「行こっか、皆」

「…」
「キュー」
「……」







今はまだ、先の事なんて考えないでこの祝福を受けよう

私達には時間がある。急かす人間なんて誰もいない。なら、ゆっくり気長に決めようじゃないか

私達が次に目指す、新しい道を







(それまで、ゆっくり休もう)


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -