「双子って意外に面倒くせぇもんだぜ?外見そっくりだから良く間違われるし、好きなモンも同じだったから取り合いに勃発するわ取っ組み合いが始まるしジャンケンしてもあいこばかりだしテストの点なんてまるっきり一緒だったな…特に困ったのは取っ組み合いでぶつけた痛みがこっちにもシンクロしてくるんだぜ?四倍だぜ四倍。何で双子はシンクロするんだろうな。一度聞いてみたいもんだぜ」

「双子マジックだね」









「…はぁ。まただ…何故毎晩何処にもぶつけてないのに身体中が蹴られたり殴られた様に痛いんだ…」

「ゼル様、湿布買っておきました」

「あぁ…悪いな」




毎晩レンとゴウキが取っ組み合いをしていた為のレンの痛みだったりする


―――――――
―――――
―――











長く、悲しい話が…終わった







語られた、レンとゼルの双子の非難に【白銀の麗皇】の全貌。それはとても悲しくて、とても辛い話だった

静かに黙って聞いていた全員は、何も言えなかった。ナズナ、カツラはともかく、親友であるゴウキは少なからず驚いていたから。今まで聞かなかった事実で――レンの話を聞いて、カチリとピースがハマった気がした。視線を落とし、沈黙を守る全員にレンは嘲笑を零す。こうなる事を、分かっていたんだろう。くしゃりと前髪を掻き分け、ふぅ、と息を吐く

チラリと視線を横にしてみれば、レンの瞳が大きく開き、嘲笑から苦笑に変わった






「おいおい、何泣いてんだよ…ミリ」






苦笑を漏らし、隣の存在の顔を良く見る為に横髪退かせば――ミリは、泣いていた

漆黒ではなく、蒼の瞳から大粒の涙が溢れ、頬を伝って衣類を濡らす。ぼんやりと、眼前にある机を見つめるその表情は、何処か無表情とも取れる。が、ギュッと握り返されるソレに、レンはまた苦笑した

互いに握っていた手を滑らせる様に引き寄せ、その手をやんわりと離し、細いミリの肩を抱かせる。握っていたミリの手を、今度はもう片方の手で握り、指を絡ませる。フワリと漆黒の髪が靡き、ピチャンと大粒の涙が頬から跳ねた音が静かに響いた






「…別にお前が泣く必要なんて無いんだぜ?…本当に、優しい奴だよな、お前は」

「………」

「…代わりに、泣いてくれて…ありがとな」

「……っ、レン…」






肩を抱いた手で、ポンポンとミリの頭を叩く様に撫でる。美しい顔が歪め、涙を流す愛しい存在。そっと抱き寄せて、ミリの頭に顔を埋める

柔らかい身体にフワリと薫るのは花の香。随分と長い話を、しかも自分の拭えない過去を話した事で、多少心が荒れていた。悲しみの興奮、そう言い換えれる憤りが、ミリを抱き締めた事で何処か落ち着いた気がした

レン、と消えそうな声で自分を呼ぶミリに、レンは静かに身体を離す。拭ってない涙はそのままに自分を見つめるミリを、見つめ返す

艶やかな薄い口がゆっくりと開かれる。言っていなかったんだけど…、と静かに言葉を呟く






「私…人の手から、相手の感情が分かるの。心の内を、感じ取る事も出来るんだ。だから今も…レンの気持ちが、感情が、分かるんだ」

「…そうか」

「……レン、」

「……」

「…辛かったね、悲しかったね」

「ッ…」




ドクン…――




「大切な人を失った気持ちは計り知れない。失った人にしか分からない。…でも、これだけは言えるよ









 ―――…レンは、一人じゃない」








その台詞は


一番…言われたかった言葉







「ッ…!」

「誰にも頼らず、一人で…孤独に。本当に、良く頑張って耐えてきたね」

「ミリ…」

「貴方はあの時から、一人で必死に耐えてきた、頑張ってきた。…でも、今は違うよね。…私達が居る。貴方の周りには…貴方を支えてくれた人達がいる。もう、我慢する必要は…無いんだよ」

「……ッ」






涙を流しながら自分に微笑むその姿はまるで女神そのもの

ミリから視線を外し、周りを見渡せば――ゴウキは小さく笑い、ナズナとカツラは静かに頷いた。そしてまたミリに視線を戻せば変わらないミリの表情に、目の奥からジワリと暖かい何かを感じた









「もう、一人で溜め込まなくていいんだよ」









パキン、

何かが、弾ける音がした



















気付いた時にはその細い身体を抱き締めて、声を荒げて泣いていた。ゼルジースを失い、両親を亡くしたショックから溜め込んでいた涙ごと、ミリの腕の中で泣いていた。頭の中に過ぎるのは、幸せだった頃の記憶、そして孤独になった記憶様々。走馬灯に流れる記憶は、涙として、ミリの腕の中にぶつけた

抱き締めてくる存在を、レンを包み込み、白銀の髪を撫でながら微笑を零すミリを、この場にいた三人は彼女を本当の女神だと思った。彼女の言葉や涙は、彼の心を溶かし、光りを差した







「…良かったな、白皇」






昔のレンを知っていたゴウキだからこそ、言える台詞

二人の姿をしばし視界に収めるとゴウキは席を立ち、続いてナズナとカツラも席を立った。互いに視線を向け、頷き、小さく笑みを零し…それからゆっくりと、部屋から立ち去るのだった







夜はまだ、暗い





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