そろそろ時間も夜になりそうな時間帯で、ミリ達は切り上げ、時杜の力でふたごじまの研究所に戻った






「今日はカレーにするよー」

「おー」

「沢山作るから取り合いしないでね」

「それは無理だな」

「だな」

「えー…(´▽`;;)」






今日は泊まって行きなさい、と言うカツラの言葉に甘える事になったミリは、お礼に早速夕飯の準備に取り掛かった。お手伝いとしてハピナスとミルタンクを従えて厨房に消え、残された者達はそれぞれリビングの中で寛いでいた

ゴウキは自分の手持ちのポケモンが入ったボールを磨き、目が覚めて元気ピンピンなレンはスケッチブックにガリガリと絵を書いている。カツラはコーヒーを入れながら資料を見たりしていた






「……」

「「ブーイ」」





その中で、ナズナはソファーに座るも、目の前にある机の上に座ってこちらを見上げる二匹のイーブイ…白亜と黒恋に見つめられ、固まっていた

対になって座る白亜と黒恋は、同じ顔同じ表情同じ尻尾の振り方で、ただナズナを見上げてた。まさか自分の目の前に自分からやって来るとは思わなかった為、対処に困った。ピシッと固まるナズナに、二匹はただ尻尾を振るだけ

静かに、奥に溜め込んだ息を吐きながらナズナは口を開く





「……久し振り、と言うべきか…」

「「ブーイ」」

「…未来が視えた先で、お前達の活躍は知っていた。こんな事、今更言える立場では無いが……お前達が、無事で良かった」





もう言う言葉は無い、とナズナは二匹を視界から外す為に瞼を閉じた

顔向けが出来なかった。こうして、改めて対面する事を、自分の身勝手で、辛い思いをさせてしまったこのイーブイ達に。言葉を交わす必要は無いと思っていたし、もし交わすとしても果たして何を口に出していいか分からなかった





「ブイブイ」

「ブーイ」





ピョーン、と黒恋がナズナの膝に跳び移ったと思ったら、よじよじと腕を登って頭に乗った。白亜はナズナの膝の上に乗って、身体を擦り付ける

ハッ、としてナズナが白亜を見下げた時には、白亜は元気良く「ブイ!」と鳴いた。目を開くナズナに、頭に乗った黒恋もペシペシと頭を叩いて、同じく元気良く「ブイ!」と鳴いた

有り得ない、そんな表情で白亜を見下ろすナズナ。そんなナズナを、レンは小さく笑い、スケッチブックで絵を描いていた手を止めた





「…そいつらは、お前と仲良くなりたいそうだ」

「!!」

「「ブイブイ!」」

「ッ…俺は、お前達を辛い実験をさせた張本人だ。…特に白亜、お前は出来損ないとして処分させようとまで思ったんだぞ…!?」

「ブイ、ブイブイ…ブイ!」

「…"昔のわたしはあなたが怖かったし、わたしを処分しようとしていたのは知っていたよ。けど、今は違う、今あなたは優しい!"」

「っ…」

「ブイブイ、ブーイ!」

「"あるじ様が許すなら、ぼく達もおまえを許す!"」

「「ブイブイ!」」

「"許す代わりに、仲良くして!"……だとよ」

「お前達…ッ」





今度こそ、ナズナの目に熱い何かが走った

白亜と黒恋は成長した。ミリの手持ちになってから、バトルで強くなったと同時に、二匹の心も成長させていた

白い身体を抱き上げ、頭に乗った黒い身体を腕の中に引き寄せて、二つの存在を抱き締めたナズナ。小さく「ありがとう」と呟けば、白亜と黒恋は嬉しそうに尻尾を揺らした



見守っていたレンとゴウキとカツラは互いに視線を合わせ、静かに笑った。丁度レンが描き終えただろうスケッチブックには、白亜と黒恋が笑顔でナズナに飛び付く姿が描かれていた。プロ並に上手いその絵は、誰もが舌を巻く程だ。絵の中にいる白亜と黒恋も、目の前にいる白亜と黒恋も、両方とも…とても、幸せそうだった。厨房に消えていたミリも、いつの間にか戻っていたのか優しい表情を浮かべてナズナ達を見つめていた










「…ん?アレ…今、白亜と黒恋の言葉を代弁しなかった?」

「あぁ、彼はポケモンの言葉を分かるそうだ」

「………………、へ?」











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