次の日が経った






「ミリ〜、そろそろ行くぜ〜」

「わー、待って待って」






マサラの自宅前

そこにはレンとミリの姿があった






「遅いぞミリ…って何だそのバスケット…でけぇ」

「お昼ご飯!近くのグレン島で皆で食べるの!大丈夫、ポケモン達の分もしっかりとあるからね!」

「…あぁ、だからハピナスとミルタンクがボールから出ていたのか。いつの間に…」

「エヘヘ、張り切っちゃった」





ミリの腕に抱えるのは、箱型の大きな大きなバスケットが、二つ

一つは勿論自分達が食べる分で、もう一つはポケモン達の分だ。自分達が食べるのよりポケモン達の方が重量が多いのはしょうがない。ポケモン達は自分達より数は多いし、体型も大きいポケモンが居る為、多く作らないと取り合いが勃発してしまう

それにミリ自身、皆で楽しく食べる為には!と張り切って作ったあまりこんな量に。人間でもこの量は多いのではないかと思う。が、大丈夫。大の男…しかも成人男性だ、結構食べる。現にレンもゴウキも食べる。取り合いになるほどに。どっちかと言えば日頃鍛えるゴウキの方が結構食べている

しかしそのデカいバスケットを重ねて持っている姿は結構危なっかしいのに、本人至って平然と、むしろルンルンと持ってしまっている。つまみ食いされない様に頑張った、と嬉しそうにミリは言う






「昼ご飯食べないで待ってて!って連絡しといたからね〜。スイクンの足なら丁度お昼頃で丁度良いし」

「そうだな。…どうせゴウキの事だ、早くに飯食っているから腹空かせて待っているだろうぜ。見た目はそんなに変わらねぇが」

「あはは、想像つく」






朝早くに起き、鍛練をしてご飯食べて鍛練鍛練鍛練鍛練…と繰り返していけば誰だって腹も減ってくる

腹が減ると無言になるゴウキを想像し、二人はプッと吹き出した






「さて、行くか」

「うん。…ねぇ、レン」

「ん?」

「辛かったら…無理しなくていいから」

「…大丈夫だ。ミリがいてくれるから、俺は平気だ」

「そっか…」

「だからそんな顔すんなって」

「あたっ(でこピン」






小さな痛みを額に受け、擦りたくてもバスケットが多き過ぎて擦れずに悶々とするミリに、レンは笑う

抱えていたバスケットをヒョイッと片手で持ち、もう片方の手をミリの頭の上に乗せ、くしゃりと撫でる。手持ちが急に軽くなり、パチくりと目を丸くするミリ。バスケットがレンの手に渡ったと気付くと、私が持つよ!と慌てて取り返そうとするがレンはそれを制した。撫でていた手を頭の後頭部に支え、自分を見上げるミリを視界に入れながら…レンは触れるだけのキスを落としたのだった











* * * * * * *










場所は変わって


此所は、グレン島――








「グレン島って確かカツラさんが拠点としていた島なんですよね!グレン島、通称グレンタウン!数年前に火山が噴火しちゃったせいでカツラさんのジム、ふたごじまに移転させたんですよね〜」




「「ブイブイィィ!」」
「…!」
「キュー!」
《白亜、黒恋、それは食べたいからやらんぞ。蒼華、奪うな》




「色々あったみたいですね!化石を復元したりポケモン屋敷とかあったり…聞いた話に寄ると、グレン島が初めて化石を復元出来た島だそうですね!そこで他地方もグレン島の研究を参考にしつつ連動して頑張っているらしいみたいですよ。ホウエンのデボン社がうんたらと…時代は最先端に進んでいきますね〜!うんうん」





「ハピハピ〜」
「リュー!」
「ミル〜」
「エルッ」
「ゴォオオ」
「フィー」
「フゥー」
「ブゥーバァ」
「ガルル!」
「キシシシシ」
「ゴルバッ」
「ジジジジッ」





「にしても、火山が噴火しちゃったのは残念かな。ポケギアには『押し流された過去の町』とか表記されちゃってるけど…自然の原理は人間を無情に巻き込むのが改めて良く分かる一面、て所かな。…お、アレってキャモメ達の巣かな?」





「あ゛!?テメェ人の皿に乗っていたモン奪うな!…つーか言ってるそばから食うな!返せゴルァ!」
「皿に乗せてあるだけで何時食うか分からん物を、ただ皿に乗せるなど可哀相だろ?舞姫の弁当と粗末に扱うなど出来ないからな」
「好きな食いモンは後から食べるんだよ俺は!」
「なるほど、それがお前の光源氏計画の同源力か………っ!?貴様…、俺の食い物を奪うとは…!この勝負、受けてたとうじゃないか!」
「ハッ!上等じゃねーか!表に出やがれゴウキ!ミリが作った食いモンは俺のモンだ!」





「考えてみたら私、グレン島を探索していなかったな〜。(時間があったら今度過去に行って楽しむのもアリだよね!)岩石と火山灰が積み重なって、でも樹々が少しずつ姿を見せるこのグレン島!新しい発見がきっとある!と、私は思うんだよね!皆もそう思うよね〜…








って、アレ(´∀`)?」


「ミリ君…グレン島を熱く語ってくれるのは嬉しいけど、皆食べ物取り合って聞いてないぞ…」

「安心してくれ、貴女の分はちゃんと確保しておいたから」

「あー…ありがとうございます…」








むき出した岩石、凝固した火山灰

人が足を踏み入れる事が無くなった、グレン島



わりかし安全な、それでいて見晴らしの良い場所にミリ達はいた。大きめのビニールシートを二か所敷き、その中心には大きなバスケットがあり、よりどりみどりな美味しそうな食べ物が……


嵐の如くに消え去っていた






「…アレー?皆さん結構食べると思って、余る事を想定しつつ張り切って作って来たんですけど…」

「確かに私達に取ってあの量はわりと多い気もするけど…」

「研究没頭していた俺達はカロリーメイトとかで済ませていた様なものだったからな…」

「ちょ、それ不健康」






「リュー!」
「!?デンリュウ、貴様いつの間に俺の食い物を…!!」
「リューッ!リュッ!」
「はは、ざまぁ」
「ブイブイ!」
「…って黒恋待てゴルァ!テメェも何盗み食いしてんだ!」
「ブイ!」






「何せこっちには良く食べる男二人がいる、しかも貴女が作った物だから。しょうがないさ」

「あ、あはは…」







「……は?あれ、おい!俺の皿にあった食い物何処にいった!?」
《お前達が乱闘中にハピナスが持っていって白亜に分け与えていたぞ》
「ハピナステメェェエエエ!!」
「ハッピー!」








「いやー、しかしまたミリ君の手作り料理を食べれる日が来るなんて嬉しいよ」

「あぁ、俺もこうして皆と食べれるなんて…昔の俺には考えられなかった。聖燐の舞姫…礼を言う。ありがとう」

「ナズナさん、私は何もしてませんよ。したとすれば…皆さんの笑顔が見たいが為に朝早くにコレ、作った事ですよ!」






ナズナが確保しておいてくれたサンドウィッチを口に含めながら、ミリは笑う

ナズナはミリの笑顔を見て、フッと小さく笑った。カツラもミリの笑顔を見て、ナズナが小さく笑う姿を見て釣られる様に笑った


辺りにはワイワイガヤガヤドカン!と若干聞き慣れない効果音が聞こえてきたが、三人の中はとても穏やかだった







「…また、こうして皆と食べたいものだな」

「出来ますよ、皆が生きている限り。その時はまた作りますから。取り合いにならないように」

「はは、生きている限りか…なら私も頑張って長生きしないとね。ミリ君の美味しい食べ物をまた、食べれる為に」

「俺もあの二人に負けないように頑張るか。ピクニック…またその機会があったらよろしく頼む、聖燐の舞姫」

「はい!」







「ブイブイ!(パクッ」

「「「あ」」」







心地の良い風が、吹いた





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