貴方が苦しいのなら


貴方が辛いのなら


貴方が、悲しいのなら







それを私も一緒に、背負いましょう




だから、お願い

(泣かないで)




―――――――
―――――
―――











後悔なら、何度も経験している









「………ミリ…」








部屋の窓から覗く満月の月明りが、暗い部屋を仄かに照らす。窓から見える満月はその存在を主張せんばかりに、大きく空を占領している


レンはぼんやりと満月を見上げながら…腕の中で眠る、レンにとって掛け替えのない存在の頭を優しく、壊れ物を扱う程に優しく撫でる


彼女はレンの腕の中で静かに眠っていた。…目尻には溜まっていただろう涙が伝わった後が残り、首筋や鎖骨には…紅い華が咲き散らす。乱れるベット、衣服は無造作に散らばって…



その事を示すのは――










「…ミリ…ごめんっ…!」










一時の、感情


その感情はレンは知っていた




それは己に宿る、醜い感情


その醜い感情はレンの中を支配し、爆発させた





止められなかった


――止めれなかった






醜い感情はむき出しに

本能のままに


大切な存在に、牙を向けた










自分が正気に戻った時には…もう手遅れな状態にまでなってしまっていた










「本当に、ごめんっ…ミリっ…ごめん、ごめんな…!」










大切な存在に手をあげてしまった


大切な存在を泣かせてしまった



コレが一番ミリにとって辛いのは、分かっていた。古の記憶で苦しんでいる事も、知っていた


歯止めていた欲望が、醜い感情のせいで…







レンは眠るミリの身体に腕を回し、ギュッと強く抱き締めた。頭を擦りつけ、まるで懇願するかの様に…

フワッと香ったのはミリの優しい花の匂い



その匂いが鼻をかすめ…レンの頬に、涙が伝わった








「ミリ…ごめんな…」





伝う涙に気付かずに、レンはミリの額に――キスを落とす


そしてその涙はまっすぐに頬から落ち――







ポタリと、ミリの瞼の上に落ちた












「……ぅ……」

「!!……っ、ミリ…」

「ぁ……?レン…」









ピクリと身体が反応し、ミリの瞳が、ゆっくりと開かれた





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