この空洞を明るく照らす、六角形の両端を左右に鈍角と長細く尖らせた形をしたクリスタル。宙に浮き、何物にも囚われない程の偉大さは目に余るもの。淡くも、力強い光は彼がまだ…生きていると言う証拠

カツラさんとゴウキさんはクリスタルの前に立ち、クリスタルを見上げた。その後ろに並ぶのは刹那で、初めて見る大きなクリスタルに興味津々だ。レンは私を抱き上げながら後ろに控えている。私もレンの腕に抱えられながら…後ろから、あの大きなクリスタルを見上げた






「これが、私が『錠前』役として此処で守ってきたモノだ。と言っても…守っていたのはナズナのポケモン達とこの地形のお蔭でもあるんだけどね」

「あれが、舞姫の言う"器"…デカいな。全長約150はありそうだ」

「私が此処に来た時は既にこの状態だったよ」






「デカいな…」

「………」





正直、私もアレはデカいと思う






「舞姫、これがナズナの"器"であっているか?」

「多分、ナズナさんの器であっているかと思います。ちょっとアレは私が思っているのと違うけど…あのクリスタルから出ている光は…、闇の中で会ったナズナさんの光と、同じですから」

「光は同じだが思っているのとは、違う…?」

「ミリ、どういう事だ?」

「私が知っている"器"は…本来ならば生身の人間なんです。そもそも"記憶の光"は生身から解き放たれたモノで…言葉を返せば、"器"はただの抜け殻なんですよ」






例を上げれば、魂と身体の関係…と言ったところかな






「"記憶の光"が放たれた人間は…そうですね、運が良ければ記憶喪失、運が悪ければ精神異常者か植物人間になっちゃいます。中には記憶のと一緒に、自分の魂まで放ってしまう人もいます。それこそ植物人間になっちゃうキッカケです。最悪…こう、ポクポクチーン、みたいな?」

「おま、サラッと恐ろしい事を…」

「何度かそんな人を見てきましたが…あれは生きた屍です。良くも悪くも…本人も、回りも…介護認定5の認知症の人や、知的障害者1級相手の介護をする位に大変ですね」

「…リアルだ…」

「やけに現実味が…」

「つーかそもそもな話、介護認定とか知的階級とか言われてもな…」

「あ、確かにいきなり言われたら分からないよね。詳しいお話、聞きます?」

「「「いや、遠慮する」」」

「あら残念(´∀`)」







タメになる話なのに(笑)


しょうがない、別の日に改めてじっくりと教えてあげましょうかね(ヤメロ







「まぁ、人数が少なくてもそんな人達ばかり見てきたからアレだけど…だからこそ、抜け殻の身体があんな綺麗なクリスタルに変わるなんて初めてで…これでも結構驚いているよ」






力がある人でも、記憶を飛ばしても身体をクリスタルに変える事なんて…多分、無理だと思う

どうやってあんな事が出来たのかは分からない。それはナズナさん本人に聞けば良い話だよね






「おい、カツラ。このクリスタルを守っていたナズナのポケモン達は一体何処にいる?お前がいるなら出て来ているはずだろ?」

「あぁ…そういえばそうだったね。おかしい…普通なら出て来ているはずなのに」

「ナズナのポケモンか…俺が知っているのはケーシィとメリープくらいだったな…ケーシィは無事フーディンに進化したのはカツラから話は聞いていたから分かるが…メリープは元気だろうか…」

「メリープ…可愛い…」

「ナズナはクロバットとフーディン、後はアリアドスを持っていたよ。あぁ、メリープは無事にデンリュウに進化していた。デンリュウがこれまたやんちゃで…私の頭をフラッシュ代わりとして遊んでいたよ」

「……そうか」




「レン、これは笑ってもいいのかな?今無性に笑いたいんだけど」

「たえろ。俺もぶっちゃけ笑いたい」









しかし考えてみれば回りに気配なんて感じない。カツラさんが言う、ナズナさんのポケモンの姿すら見えない

流石にカツラさんも様子がおかしいと気付いた様で、ポケモン達を捜しに向かう。ゴウキさんもそれに続く

私達も行こう、と動き出そうとした時だった





《主》

「あぁ、刹那!」

「刹那お前いつの間に何処に行ってたんだ?…まぁ、いい。これからナズナのポケモンを捜しに行くんだが、お前も――」

《あぁ、今見つけて来た》

「は?―――!!?」

「!?」






今まで会話に参戦しなかった刹那が、何かを宙に浮かせてやってきた




――それは、ナズナさんのポケモン達だった












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