「…」

《蒼華…今の人…》

「…」

《まさか、あの"従者"は……っ、いや…考え過ぎかな。僕らの、気のせいでありたいな…》

「…」










「ソウカ、トキト――お互い、考えている事は同じだな」



夜色の瞳が、紫色に歪んだ


――――――――
――――――
―――











「舞姫、無事で良かった…全く、本当にお前には心臓が幾つあっても足りんぞ」

「良かった、本当に良かった…ミリ君、傷を見せてくれ。私が手当てをしよう」

《主、無事で良かった》

「皆も無事で、なによりです…」






程なくして、レンが駆け付けて来た道からゴウキさんとカツラさん、そして刹那がやってきた

彼らは、レンの腕に抱かれている私の姿を見てすぐに駆け寄ってくれた。表情は安堵の色を浮かべ…冷静なゴウキさんでさえ、識別が分かる程、皆私を心配してくれていた

そんな私は、レンの胡座をかいた上に座った状態で身体を温めて貰っている。まだ服はびしょ濡れ、勿論髪も濡れていて…あ、くしゃみがでる(←)プルプルと身体を震わせる私に、寒いと思ったのかカツラさんは着ていた白衣を私に被せてくれた。なんか最初から最後まで申し訳ない気持ちでいっぱいだ

あ、服と言えば






「レン、ごめん…コート、どっかにいっちゃった…」

「あぁ…アレは滝壺の中にあったぜ。そんな事より、お前が無事の方が重大だ…」

「…ごめん…」






衣類の下に隠れる手を動かし、レンの手に触れる。トン、と触れればレンの大きな手が私の手を掴みキュッと握る

暖かいその手は私の冷えた手を簡単に暖かくさせた。見上げるレンの顔は…あぁ、まだ涙ぐんでいる。自分の髪を使って皆に見せない様にしているみたいだけど、それ皆にバレちゃってるよ?






「…ミリ君、彼は君が流され後…凄く心配をしていた。刹那のバリアーを破ってさえ、君を追いかけようとしていたよ」

「…レンもそうだけど、皆さんにはかなりの心配を…むしろ迷惑を…ごめんなさい」

「俺達の不注意のせいで舞姫をこんな目に遭わせてしまった。…お前が謝る事ではない、逆に俺達が言う言葉だ。…すまなかった」

「ゴウキさん…」

「舞姫…今は白皇のそばに居てくれ。その方が俺達も安心だし…白皇も、その方がいいだろう」






ポンッ、とゴウキさんはレンの肩に手を置く。やっぱりゴウキさん、レンの涙目に気付いているって。苦笑して、レンに顔を向ければ、レンも苦笑を零していた

ポタッと頬に生暖かい滴が落ちたのはレンの涙で…私もこの時やっと、身体の底から恐怖が一気に現れた

その拍子に私の身体が震え上り…涙まで流れてきた。何度も生死を彷徨った事はあったけど、どうして涙まで流れるのかは…分からなかった






「っ…ぅ、」

「…ミリ、ごめんな…怖かったな」

「無理もない。洪水に巻き込まれたんだ。…平気、と言うのが無理な話だ」






確かにアレは凄かった

いくら水ポケモンで、水に慣れ親しんでいる子達ばかりでも…流れが速すぎるから、きっと泳ぐ事は無理だったかも知れない






「(怖かった、なんて)」






言ったら最後、本当に自分が駄目になってしまう










私はレンの手を握り返した





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