カツン、カツン――――





誰かの足音が、響く






カツン、カツン――――






足跡が、滝壺の水面によって

音を、響かせる






「………っ、」






水の迷路にやっと開放され、滝壺に突き落とされた私

運が良かったのか…水の流れがかなり速くても、身体を強打する事は免れた。でも水の水温でかなり体力をやられた私は成す術もなく…そのまま滝から水と共に、落ちた

滝壺は深いお蔭で、水面強打するだけで助かった。正直、此処まで来て五体満足で多少傷があっても生きている自分に乾杯したい

けどその後が問題だった






「(ッ……力が…)」






岸に上がりたくても、身体が動かない

体調が悪い中での冷たい水ボッチャン、しかもあっちこっち引きずられていたから身体なんて悲鳴を上げている。力なんて、いつもなら有り余っているのに…お蔭様で力尽きてしまっている…

大方、その力は無意識に私の生命の維持に使われている様なものだから…そのお蔭で、私は長くこうして滝壺の中に平気で沈んでいける…






「どうしてよ!どうして…どうして水に沈めても死んじゃってくれないのよ!!」





ゴポゴポゴポ…






「死んでよ!自分から死んで!」

「…ガハッ、ゴホッ」

「…お願いだから、私をアンタから解放させて…!もう、嫌なのよ…!こんなことするのも、なにもかも…」

「カハッ…―――かあ、さま…」












カツン――――








「(ぁ……)」






水面に浮かぶ、人影が二つ


ゆらゆらと見える、私から見える二つの人影の内――一人は、あの時見たサーナイトな、気がする…緑色だし

もう一人は、男性…紫色のメッシュがこちらからでも良く見える



二人は、私を見ていた







「―――サーナイト、彼女を引き上げろ。サイコキネシス」

「サー」






彼らは、味方か…もしくは敵か

どうやら私を助けてくれるみたい




私の身体に光りが纏い、凄い力で引き上げられる。どんどん水面が近付いて来て――バサァアッ、と私の身体は救い出され、宙に浮いた

ポタポタと身体全体から水が滴り落ち、身体が一気に怠さを覚える。重力と水分を含んだ服のせいで、動かす気力さえも、湧かない…視界が霞む目で、私は二人を見る

隣りで私を宙に浮かしているのはサーナイトで間違いは無かった。隣りにいる…グラデーションに靡く赤と黒の髪、夜色の瞳を持ったこれまた端整な顔を持った軍服を着た男性が、私を見上げていた

その瞳の裏に宿る光りを見て…ゾクリとした何かが走った。寒さで走ったのか、そうじゃないのかは…分からない。彼はサーナイトに小さく命ずると、サーナイトは私を彼の前に移動させた






「ぁ…」

「意識はどうやらあるみたいで…安心しました」

「…っ」

「とにかく場所を変えましょう。…お風邪を召される」






フワッと身体が浮き、ポスッと簡単に私は彼の腕に収まる。逞しい腕は意図も簡単に私を軽々と持ち上げた。同時にブルッと寒さを覚え、くしゃみなんかをしてしまった

見兼ねたサーナイトがどっかから毛布を手に、私に被せてくれた。冷たい身体に毛布をかけると返って濡れてしまうのに…逆に申し訳ない気持ちでいっぱいだ






「ッ、サーナイト…ありがとう」

「…!…サー…」






君が岩壁を崩壊したのは分かっている

でもどうしてだろ…なんだかこの些細な気遣いに、勝手に言葉が洩れてしまったよ






「(あたた、かい…)」






毛布と、男性の温もりで緊張が解けたのか…意思に反して、瞼が勝手に落ちていく

今、ものすっごく…眠い






「(……レン……)」






あぁ、そういえば借りていたコートが…多分ボロボロになっちゃってどっかいっちゃった…後で、ちゃんと謝らないと。それか新しいの買ってあげようかな…日頃の感謝の気持ちとか込めて

あぁ、それと刹那には特製手作り料理とか作ってあげよっかな。それで皆と一緒に、ピクニックなんかして楽しむのも、アリだよね…?






「…サーナイト、行くぞ」

「サー」










気付けば私は瞳を閉じて眠りについていた







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