荒波が、全てを飲み込む


渦潮に身体をとられ

成す術も、ない





「(――あぁ、そうだ)」





ポケモン達の為に


壊されたあの岩壁…直してあげないと






ガハッ、と口から全ての空気が抜けた



―――――――――
――――――
―――












後ろには、俺達を包むバリアーを避ける様に荒波が押し寄せる

先程より水量が上がったこの川

全てを飲み込む――巨大な渦潮






「っ、……ぁ……」






突然岩壁が、崩壊し


手を伸ばした俺達の間を裂く様に――







「ぁ…ミリッ……ミリッ!」







空を切る、俺の手



飲まれて消えた――愛しい存在






《………》

「ミリ君!」

「ッ舞姫!」






だらん、と腕が力なく垂れる

ガクッと俺はその場に崩れた






「白皇…」

「…俺のせいだ…」

「ッ、レン…」

「俺が、あの時…ミリの手を取っていたら…そうすれば、ミリは、ミリは!」






「……レン、―い――る」






「…早く、助けねぇと…」

「ッ白皇…」

「助けねぇと、ミリが…ミリが、風邪ひいちまう…そうだ、アイツは体調が只でさえ悪いんだ…あんな中に行っちまったら、ミリは、ミリは!」

「ッレン!落ち着くんだ!」






刹那が造るバリアーに向かって、俺はありったけの力を込めて殴り付ける

ガツン!と殴っても全然ビクともしねぇ。でも俺は関係なく殴り付けた。バリアーが殴るたびに揺れ、俺の拳が赤く変わろうが――そんな俺の腕を、ゴウキが掴んで止めた






「白皇!止めろ!今此処を出たらお前も二の舞いだ!」

「ッ離せ!その腕を離せ!」

「お前こそバリアーを殴るな!冷静になれ白皇!目的を見失うな!」

「目的だと!?ふざけんな!!早く助けねぇと――アイツが、ミリが、死んでしまうだろーが!!」






そうだ、早く助けねぇと


あの、愛しい存在を





――守ると決めたのに、俺は…









《このまま進むぞ》

「…!?ちょっと待てよ刹那!ミリはどうするんだよ!お前の主はあの中に飲み込まれたんだぞ!?」

《まずは冷静になれ、白銀の麗皇よ。少しは頭を冷やせ》

「これが冷静でいられるか!」






無表情でふざけた事をぬかすコイツを殴りたくなった。殴りたくてもゴウキが俺の腕を掴んでいる為、それは出来なかった






《…安心しろ、あの水路はそのまま最深部に到着する。ポケモン達に聞けば、水路の下には大きな滝と穏やかな水辺になるらしい》

「だからミリは無事だと言うのか?…馬鹿野郎!だからって安全なわけないだろーが!何を安心すればいい!?」

《主の事だ、自分の身は自分で守れる。時杜や蒼華、白亜や黒恋の力もある。主は、生きている》

「ざけんな!いくらアイツらがいても…助かるのも助からねぇだろ!!」







「いくら凄い力を持っていても、それが実際助かれるかどうかは分からないからね…トレーナーの私も、色々覚悟を決めておかないとね」







《主は私に命を下した。"何があっても、三人を守れ"、と》

「「「!!?」」」

《主は此処に着いた時から予感をしていた。何かが来る、と。お前達がこの渦潮をどう渡るかと悩んでいる時には、私にお前達の事を託していた。私のバリアーの中にいれば、安全だ》

「そんな…ミリ君が…!」

「舞姫…お前と言う奴は…!」

「………ミリ……―――ッ!?」










その時、俺は見た




刹那よりかなり後ろにいる一匹のポケモン






…悲しそうにこちらを見るサーナイトに、俺はありったけの衝撃を受けた







「な……」

「どうした、レン?」

「?何かいたのか?」

《……?》






俺の視線を辿り、三人はソレを見る

四人分の視線を受けたサーナイトは変わらない悲しそうにこちらを見るが、ペコリと頭を下げてテレポートで消えた

何なんだ?と頭を傾げる三人に…俺はそこから視線をそらす事は出来なかった





「あの、サーナイトは…」









「レン、見ろよ。この子達も俺らと同じ双子みたいだぜ」







「白皇、どうした」

「…いや、なんでもねぇ」

《とにかく私は主の命に従う。よって先に進める。異存はないな?》

「レン、君には酷だと思うが…ここは冷静になって、彼女の無事を信じよう」

「……あぁ」







「双子か…一緒だな。コイツ等か俺達の初めての相棒だな!」

「あぁ!これからもよろしくな、ラルトス!」

「「ラルー」」

「「あ、返事が一緒!」」

「「ルー」」

「あ?」
「お?」

「「ルー!」」

「「ぷ…あはははは!!」」










「ゼル…此処にお前が、いるのか…?」








カタカタと、エルレイドの入っているボールが揺れた






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