程なくしてナズナは私達研究チームから離れ、イーブイ研究のリーダーとして励むようになった。お互い研究するモノは違うが同じ研究員として、私達は目標の為頑張ってきた。ミュウツー計画の中でナズナの話は結構耳にしており、順調だと分かっていた。勿論、緑色のミュウツーの様子を見に来ていたらしいが、生憎その時は本職のジムの関係で席を離していた事が多々あり、結局ナズナと再会することはなかった。でも互いに休みが出来れば何時でも会える――そう、信じて疑わなかった


けど――








「ナズナが…逃亡した、だって…!?」






突然研究員に伝えられた言葉

その言葉はガツンと私に突き刺さった





「け、研究所は空っぽ…研究材料だったイーブイ達も居ません!連絡も一切入りません!今三幹部の方々がナズナさんの行方を追っているそうで…情報があればすぐに伝えるように、と」

「ナズナ…まさかお前が…」

「後、大変なんです!



 緑色のミュウツーが居ないんです!!」







慌てて研究所に行けば、二つの試験管の内一つは物の抜け殻の様に何もない、ソレ。液体とチューブは中にプカプカとあるだけで破壊などされていなかった

私は唖然とした。やられた、というよりも疑問が沸いた。何故ミュウツーまで持って行くのか、何故逃亡という危ない行動を起こしたのか――私はその場に固まる事しか出来なかった








それがロケット団が解散する前の丁度一年前だった

それから私は研究に嫌気をさし、ロケット団から脱退した。ミュウツーが逃げ出した事もあり、レッド君という少年の手を借りて私はミュウツーをゲット出来た。その後私は悪事から足を洗った。同時期にレッド君、グリーン君、ブルー君達の活躍とカントーのジムリーダー達のお蔭でロケット団は壊滅をした

その後も、私はナズナを心配し、ジムの仕事をしながらも彼を捜した。しかし一向に消息を掴む事が出来ずにいた


それから四年の歳月が流れた―――










「これを見て欲しい」





話をしていたカツラは、懐からある一枚の封筒を取り出し机の上に置く。滑らせる様に前に置き、それをミリが受け取った

シンプルな封筒、真っ白い封筒は多少汚れがついている






「この手紙は…」

「前にお前が言っていた、ナズナからの手紙だな?」

「あぁ、そうだ。…ミリ君、悪いがそれを読み上げて欲しい」

「はい、分かりました」






レンと繋がれていた手を離し、受け取った封筒を開け、中から便箋を取り出す

真っ白い便箋、しかしやはり四年の歳月は紙を汚した。レンとゴウキ、そして刹那とカツラが注目する中、ミリは静かに口を開いた






「親愛なるカツラさんへ――」












「親愛なるカツラさんへ




この手紙が届いている頃には俺はもう人として存在していないだろう。非礼を詫びたいと頃だが、どうやら俺には時間がないから単刀直入に言う

俺は今、狙われている

その内俺が今居る研究所は爆発の中で燃えて消えるだろう。勿論これは冗談なんかじゃない。私はそうなる前にこの手紙で真実を伝えようと手紙を送らせてもらった」







私の元に、一匹のクロバットが口に封筒を加えて現れた

そのクロバットは誰のクロバットかと悩む前にすぐに分かった。ナズナのクロバット――偉い遠くにいたのか、此所に着いた時はヘロヘロな状態だった






「驚くかも知れないが、俺は未来が視える力をもっている。いや…持った、と言った方がいいな。最後に酌を交わした時に言ったあの湖に行ってから――幼少の時失った目が、未来を視える様になった。正直言うがあまり良い物ではない。時期が時期だったから。俺は詠めていた、私が脱退してから一年後にロケット団が壊滅するのを。カツラさんの回りにあった事、全て。それから――俺の事も

勿論貴方が今手紙を読んでいるのも知っている。この後の未来も、全て。…すまないがクロバットを預けていて欲しい。程なくしてフーディン達が傷だらけでそっちに行くと思う。そいつらもよろしく頼む


話は戻る。同時に、少しだけだがポケモンの声が聞こえた事があった。微かだったが、確実に聞こえていた。今はもう、聞こえない。あの湖は何かしら俺に影響を与えていたんだと思う

そんな時、私はこのイーブイ達からある言葉を聞いた。…ある言葉は、俺がまた貴方と再会した時に言わせて欲しい。その単語はとても興味深い内容で、俺はイーブイ達とは別に調べ始めた。それが原因なのか分からないが、何者かが私の命を狙う予知夢を視た。実際に俺はやられるだろう、最後まで視えていたからな。だからってこれは遺書にはならないぞ。なってたまるか

命が狙われると分かった俺は、賭けで首領に話した。敵は強い、もしかしたらロケット団が全滅する恐れがある程に。全ては言わなかったが、首領は信じてくれて、逃亡と見せかけて隠してくれた。今ごろ同じ様に手紙が届き、真実を知った頃だろう。私はすぐに荷物をまとめ、最後にミュウツーに会いに行った。驚いた事にミュウツーに意識があって、共に行くと行ってくれた。だから勝手に持って行かせてもらった。今では良い話し相手だ


私は今、遠く離れた名も知らない場所で研究所を持ってひっそりと暮らしている。勿論、あの白と黒のイーブイとミュウツーも一緒だ。…此所で俺は来るべき日を、待っている」







一枚の手紙だけでも、衝撃は大きかった

ナズナは、未来が視えると同時にその恐怖と立ち向かい、尚且つ敵と対峙しようとしている

唖然とし、漠然とした

「フーディン達が傷だらけでそっちに行くと思う…」つまりそれは、戦った後の話

紙を持つ手が、震えた







「…貴方が今どんな気持ちでいるかは、視て知っている。そんな貴方にこんな事は酷かも知れないが…俺の最初で最後の願いを、聞いて欲しい


この話は、ある者以外にけして自分の事は話さないでくれ

貴方はふたごじまの研究所にあるテレビで、ある番組を見る。そこに映るトレーナー…対照的なイーブイを持つトレーナーにしか、話をしないで欲しい。…対照的なイーブイ、賢い貴方ならもう分かっただろう。程なくして俺はあの二匹を逃がす。死なせない為、殺させない為に。そんな二匹を、その者が救ってくれる。…彼女は特殊な人間だ。彼女でしか、話せないし理解は出来ないだろう


それと同時に、貴方には『錠前』の役目をして欲しい

あるモノの存在を守って欲しい。その存在はそのトレーナーからいずれ語られる。ソレは俺が俺に戻れる大切なモノ。貴方にしか、頼めない

対するトレーナーは、『鍵』だ。全ての鍵でもあり、全てを閉じる鍵でもある。その者でないと、話は進んでは行かない。…その者もまた、探しにくるだろう。この、俺を。きっと俺の異母兄弟も、白銀の麗皇もミュウツーもその者と共に貴方の元へ現れる。その時は、全ての材料が揃っている



…カツラさん、まだ全ての真実は答えられていない。それは時間が無いから。俺の視る力はこの先無くなるだろう。最近は視えていないからどんな状況になるかは分からない。けどこれだけは言える


俺はまた、貴方の前に現れる

どうかその日がくるまで、待っていて欲しい。トレーナーを、彼女を。俺は待っている、暗闇の中で解き放たれる日を。…再会したら、また酌を交わしたいものだ。今度は、全員で


   それでは、また――」







程なくして



私のもとに、傷だらけのポケモン達が現れた―――




















「それが――私が知っている、全てだ」








(長い話が、終わった)



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