少しずつ、でも確実に

歯車は進んでいく












Jewel.32













グランドフェスティバル・コンテスト協会シンオウ支部

ホウエン地方発祥、且つ本部をホウエンに置き、シンオウを始め日本を主とした地方に支部を置く。グランドフェスティバル・コンテスト協会、通称GF・K―――創立は今から約数十年前、何百年と続く由緒あるリーグ協会と比べたら最近世に浸透したばかりと言ってもいい

名の通り、コンテストを主流とした競技を中心に活躍している。コンテストを中心に活躍するトレーナーを、コーディネーターと呼び、今となればコーディネーターという立派な職業と認められ、日本でも人気No.1を誇る

元々このコンテスト競技も、もっと前まではホウエン支部リーグ管轄が企画をし運営していたらしいが――――予想外に人気上昇し、コーディネータという職が新たに増えていくという事態を垣間見たホウエン支部は急遽本部に問い合わせる等をして、数十年前に正式に独立を果たし、今に至るという

此所、GF・Kシンオウ支部本拠地はヨスガシティに置いている。勿論、今回開催されるマスターランクコンテストもヨスガシティの会場で行われる。このコンテストで見事優勝を果たした者がGF・K協会シンオウ支部公認のトップコーディネーターとして名を馳せていく事となる










「―――…そして、トップコーディネーターでも最頂点がコンテストマスターデース。コンテストマスターになる為には各地方でトップコーディネーターになって、本部が主催する【グランドフェスティバル・ファイナルコンテスト】に出場し、見事優勝を飾った者がコンテストマスターの栄誉が与えられマス。いわばこの大会は通過点みたいなものデスよ〜」

「ほへー」

「前回の【グランドフェスティバル・ファイナルコンテスト】は七年前に開催されてマース。その時の優勝者はクレアという女性トレーナーデシタ。その時の彼女のパフォーマンスはパーフェクトで素晴らしいものデシタよ!あの感動はまさにエキサイティング!次の開催はまだ分かりまセンが、次の大会こそ出場してみたいデース!」

「ふむふむ」

「…」
「キュー」
「……」







此処はヨスガシティ

ヨスガシティの郊外に位置する、まるで西洋のお城をイメージした立派な建物こそが此処、GF・K協会シンオウ支部。ヨスガシティの中央通りにはコンテスト専用のコンテスト会場があったりと、ヨスガシティはまさにシンオウを代表するコンテストの街だと言ってもいい


その支部の中に、私達は居た







「なんかこう…今知った事ばかりで驚く事ばかりだよ。いやぁ、まさかリーグとコンテストが別々に存在するとは思わなかったっていうか……発祥はホウエンかぁ…へぇ〜」

「ワタクシからしてみれば、まさか協会の事もこの支部の事も知らないアナタに驚きデース」

「あ、あはー…自分無知な人間な者でして(ハッハー言えないよ何も知らないなんてね!)、それにリーグ協会の話は聞いてもこっちの業界の話とかあまり聞かなかったからさ〜。メリッサには色々と教えてもらわないと!」

「そーデシタか!ワタクシでよければ遠慮なく聞いてクダサーイ!」

「ありがと〜」








何故、私達が此処―――GF・K協会に居るのかというと、もうすぐ開催されるマスターランクコンテストの打ち合わせの為だった

つい先程まで、今回出場する総勢十五名のエントリーの皆さんと主催者である支部の皆さんと出演項目や出演順番、注意事項等、様々な会議をしてきた(ゲームは四人だったけど十五人は多いなぁ)(ちなみにこの後は衣装合せだそうな)(面倒くさいからワンピースだけでいいですか?←まて)。今までのコンテスト等の順番等はエントリー順だったりその時の大会で決まるものだけど、やはりシンオウ全土に渡る放送だけあって手の込み様が違う。マスターランクコンテストは、ヨスガシティ中央通りにあるコンテスト会場で行われる。今までの大会も同様にヨスガシティのコンテスト大会だったけど、やっぱりマスターランク、ハイパーランクとまた違うスケールに身を引き締められる思いだ

―――――…しかし困った事に、何度か出場しているにも関わらず、このコンテスト関係…つまりGF・K協会の話に全くもって無知識だった私。GF・K協会ナニソレ美味しいの?え、リーグとは違うの?え?…え?みたいな。メリッサがいなかったら私はなんにも知らずに協会の場所も分からずグルグル道に迷っていた事間違いなし。いやぁ、本当に盲点だった。盲目なだけに。あ、これギャグじゃないよマジな話

GF・K協会こそ、私にとってオリジナルな存在―――…創立の日がまだ浅いから認知は少ないにしろ、特にコーディネーターの人達からしてみればGF・K協会こそ知っていて当たり前の常識範囲内。GF・K協会は正式名は言われず殆どコンテストで締めくくられているらしく、私が知らなくても当たり前かもしれないけど……それこそトレーナーで、コーディネーターの片腕背負っている人間が知っていなくちゃいけない事で―――…今までくまなく情報を収集してきたつもりだった。けれど、まだまだ不十分だったというわけだ

あー、頭がパンクしそうだ









「―――…ワタクシは嬉しいデス」

「ん?」

「ワタクシはアナタがリーグ大会に出場するかと思ってマシタ。それこそ金麗妃のシロナサンと決着を着ける為に。今回出場する他の人達も同じ事を言ってマシタ」

「でしょうね。テレビとか雑誌とか殆ど私とあの子が載っているって聞くし―――――…でもね、メリッサ。貴女も私にとってかけがえのないライバルなんだよ?そりゃメリッサはジムリーダーだから、ライバルなんてほど遠い存在だけどさ」

「!ミリサン…」

「他の人達もそう。私と戦った人、戦った事が無い人…此処には沢山の人達がいる。此処までこれるくらいだから相当な実力者なのは間違ない。同じ場所に立ち、同じ目的に向かって競い合う…―――私達は、この日をもってライバルなんだよ、メリッサ」









マスターランクコンテストは、「かっこよさ・うつくしさ・かわいさ・かしこさ・たくましさ」の部門それぞれをハイパーランクまで全て勝ち上がった者達が出場出来る最終競技

この場にいる、と言う事は私達は同じ実力の中にいて、共に競うライバルに代わりはない(てかこんなに出場者がいるとは思わなかったよ…!←

確かに、シロナは私のライバルだ。だけどシロナだけじゃない。トレーナーとして、コーディネーターとして、決着を着けるべき人間は沢山いる。それにシロナとは約束したんだ、「私達が頂点に立った時、決着を着けよう」。だから私達は急かしてリーグで決着しなくてもいい。そして私は、"此処"での決着を果たす

今回は、そう――――…目の前に座るメリッサや、他の十五名の出場者が、コーディネーターとして最後の華を飾る相手となる。私はただ、皆の力を信じて彼等との試合に臨むだけ








「―――――――……全てのストーリーは、ミリサン、アナタがワタクシのジムの扉を叩いた時からスタートしまシタ」

「?」

「ワタクシが今回のマスターランクに出場出来たのは、前々からリボンをゲットしていたからデース――――…しかし、アナタが現れてからというもの……ワタクシは一度も、アナタに勝利したことがありまセン。ソレは、他の人達も同じデス。だからワタクシには分かります………金麗妃が、聖蝶姫と決着を着けたいという強い思いを」

「…………」

「ですがワタクシも同じ気持ちデース。ワタクシも、聖蝶姫、アナタと決着を着けたいと。この最後の大舞台でアナタとバトルし、フィニッシュを決めたい―――…ワタクシの事もライバルだと思ってくれたアナタに、ワタクシは勝ちたい」

「――――――……私がこうしてこの場に立っていられるのも、メリッサ、貴女が私に名前を付けてくれたお蔭よ。今では異名になった「聖蝶姫」…私には十分過ぎて勿体ない名前だと思うけど、今ではとても誇りに思うよ」







異名なんて、本当はどうでもいい

所詮は他人が付けた名称だ。畏怖も畏敬も色んな感情が込められた、その者本来の存在を打ち消す様な不確かな名前なんて意味が無い

けれども、この名前には思い出がある

思い出が生まれた名前はいつしか一人歩きして、いつの間にか異名になった。異名なんてどうでもいい、けど、この名前には好感を覚えて、親しみを感じた。いつしか誇りに思い始めた――――…だから私は、この名に恥じない為に、フィールドを舞ってみせる








「メリッサ、コーディネーターとして、トレーナーとして、共にこのマスターランクコンテストを楽しみましょう」

「えぇ、ミリサン。そして決着を着けましょう。ワタクシ達の、最後のフィナーレとなる舞台へ」

「…」
「キュー!」
「……」











互いに手を取り合って、私達は最後の約束を笑顔で交わしたのだった









(今はただ、目の前の事を悔いなく終わらせよう)


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