見上げた空は綺麗な程に繊細な青い空。白い雲は流れる様にその姿を見せる。それを背にポッポ達の群れが空を飛び、列を成す。新鮮な空気が風と共に流れ、森の木々が揺らめく。サワサワとした音に、ポケモン達の仲良く戯れている姿。プリンやらオタチやウパーなど、森から漏れる日の光を浴びてぬくぬくと日向ぼっこをしている姿など見える。どれもこれも微笑ましい姿で見てると自然に口元に笑みを浮かべてしまう

その日の光を浴びながら白亜と黒恋は仲良く追いかけっこをしながら遊んでいる。お互いに戯れつき合いながら仲良くすり寄る姿を見て他のポケモン達も二匹に近寄って行き、いつしか二匹を中心に様々なポケモン達が仲良く遊び始めた

そんな微笑ましい姿をミリは家の庭にあるベンチに座りながら見つめていた






「…あらら、後でおやつでも作ってあげようかしら」






クスクスと口に手を当てながらミリは笑う。丁度その時白亜の上にプクリンが乗り潰れかかっている姿もあり、ミリの笑いを大きくさせる←

何も縛っていない漆黒の髪に、白いカーディガンを羽織り薄い黄色のロングスカートを穿いたソレは風によってフンワリと靡かせる。ミリはしばらく白亜と黒恋達の姿を楽しげに眺めた後、手にしていた本をパタンと閉じた。どうやら心地よい風を受けながら本を読んでいたらしい。確かにこの気候なら本を読むには最適だろう

本を閉じたミリはベンチから見える空を見上げた







「良い天気…」







生きた心地は自然の中に立って改めて感じるもの

そう思うミリの口元には笑みが浮かんでいる。もう一度クスリと笑うと、ポカポカする空の日差しと気持ち良い風の温もりに瞼を降ろす




一週間という短い期間だったが、長い期間でもあった満月の影響はミリを苦しみ続けた。力が増幅すれば身体は悲鳴を上げ、前世の記憶に苦しめられ、その関係で盲目になり恐怖の渦の中にさ迷わされた。まだ変わらずに満月影響は続いているが今日はどうやら体調がよろしいらしい。普通ならまだまだベットから抜け出して歩ける程まで復活なんて不可能だ。それはミリが一番に理解をしていた

しかし、此処までミリを元気になったのには訳があった






「此処に居たか、ミリ」







眩しかった視界が暗くなったと同時に、フワリと唇に感触を感じた。頭を優しく撫でられる心地良さに、ミリはゆっくり瞼を開かす

視界に入った白銀に、ミリは微笑を零す






「…レン」

「こんな所で昼寝をしたら風邪をひくぜ」






ポンポンとミリの頭を撫でる白銀の正体はレン。黒のTシャツに黒のズボンを身に包んだレンの白銀の髪は良く映える

ミリは座れる様に隣りにずれるとレンはそこに座る。腕を回してミリの肩を抱くとミリを引き寄せる。何も言わずに肩に頭を乗せるミリに、レンはその長い髪を手で掬いまた優しく頭を撫でた






「ん〜…」

「体調の方は大丈夫か?」

「大丈夫、今日は調子が良いんだ。…こうやって、レンのそばに居るだけでも」

「フッ、そうか」






レンに抱き着いて胸元に顔を埋めるミリにレンは微笑を零してその小柄な身体を包み込む様に抱き締める





ミリの体調が良くなったのは、何を隠そうレンのお蔭である。普段は全てにおいて苦しめられていたのに、レンが近くにいるだけで、レンとこうして抱き締めているだけでミリの体調は悪くなる所かむしろ良くなっていった

ミリはレンが【異界の守人】の生まれ変わりである事は知らない

しかしそれは時間の問題だろう。あの時、自分の闇にて来れるはずもなかった存在が、レンがやってきた時点でミリは薄々と理解しつつあった。けど何も知らずに、理解をしない様にしているのはレンの口から聞きたいから。同時に自分の中にあるその推測は、自分にとってある意味で聞きたくなく、理解もしたくない。そして恐ろしかったのもあった


それに今の関係が、とても心地良かったから






「そういえばさっきゴウキから連絡があった。グリーンに無事フルボッコして今日リーグに申請したらしいぜ。明日辺りこっちに顔を出す、って言っていたな」

「わ…流石ゴウキさん、本当にやっちまったね。ゴウキさんが来るならなんかお茶とか出さないと…」

「馬鹿、お前はまだまだ病人だからアイツにそんな事で気を使うな。アイツも分かっているから、むしろそんなことしたらかえって心配するぞ」

「えー…そう?」






折角来てくれるから少しは…とぼやくミリ。何を思ったかレンは耳たぶを指でくすぐる

くすぐったそうにクスクス笑うミリにレンは笑いながら今度は耳たぶをふにふにと掴む。福耳なミリの耳たぶはどうやら気持ち良さそうだ。今度は両耳の耳たぶをふにふにと掴めばミリは小さく声を上げて笑う






「ま、アイツに気を遣わさなくていい。茶ぐらい俺がなんとかする」

「あはは…なんか家の主がまるでレンみたいだよ。なんか家、最近変わってきたし」

「あのなー…お前の家は只でさえ生活感が無さすぎだから俺がなんとかしないとな」

「…返す言葉も無い…」





「「ブ〜イ」」






広場で野生のポケモン達と仲良く戯れていた白亜と黒恋がベンチに駆け寄ってくる。身体に葉や枝が付いている所を見ると結構揉みくちゃにされたみたいだ。白い身体をした白亜が若干汚れている

二人の前に着いた二匹は二人の膝の上に飛び乗った。白亜はレン、黒恋はミリの膝へ。尻尾を甘えてくる二匹をミリは微笑しながら身体に付いた葉や枝を取ってあげる

レンも白亜の身体に付いた葉や枝を取り、薄汚れた部分を払ってあげる。気持ち良さそうに甘えてくる白亜を撫でながら、レンはニヤリと口元に笑みを浮べた







「なぁ、ミリ」

「ん?何?レン」

「このまま一緒に住むのもアリだな」

「……え!?」







驚きこちらを振り向くミリを満足そうに笑うレン

白亜の目を塞ぎ、腕を伸ばして黒恋の目を塞ぎ、顔を真っ赤に染め上げるミリの唇にキスを落とした











バタバタと黒恋がもがいていた





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