「(か、カッコいいったい…)」

「(うわ、今度はイケメンが来た)」

「(beautiful…絵になってる)」






「ブイブイ!」
「ブイブイブイ!」

「白亜、黒恋、お前ら人の帽子と頭で何やってんだよ。迷惑だから退いてやれ。…ったく、ミリ。消えたと思ったらこんな場所にいやがって、悪化したらどーすんだ馬鹿」

「あ、あはは…面目無い」






現れた青年、レンに三人はイケメンさにまた目を奪われる。そんなこと露知らずにレンはルビーの帽子の中にいた白亜とエメラルドの頭にいた黒恋を取り上げる。白亜は目をハートにして尻尾を振り、黒恋は嫌そうに尻尾を振る。同じ尻尾を振るでも意味が違ってある意味面白い光景だ

二匹を地面に下ろしたレンは、此処で三人に声を掛ける






「悪かったなお前ら。こいつらが迷惑かけたみてぇで」

「いえ!逆にこっちが助かりました!ミリさんが居なかったら僕らあのままトキワの森に…」

「そうったい!兄ちゃん、ミリ姉ちゃんを責めないで欲しいっちゃ!」

「そうだって!ミリさんが居なかったら本当に俺達迷っていたんだって!」

「なるほど、お前らトキワの森に迷っていたのか…。見た所、相当な実力を持っているのは分かるが…あの森はまだ凶暴な野生のポケモンが生息している。ある意味では良かったな、お前ら」

「「「(え゛)」」」

「さて、」






冷や汗を流す三人を置いといて、レンはてくてくとミリの前に歩み寄る。キョトンと見上げるミリの身体を抱き寄せて、そのまま姫抱きで抱き上げた

突然の行動に三人は目を点にする。ミリは顔を真っ赤にして慌ててレンに言葉を投げ掛ける






「レン!?ちょっと、何で此処でそれを!?それに自分で歩けるのに…」

「さっきより顔色が悪いのは分かってんだよ馬鹿。久々の外で疲れてんだろ?どうせ白亜と黒恋がどっか行って捜してたんだろうが…体調が悪化したら何の為に外に出たか分からないぞ」

「う…。でも、」

「でもじゃねぇ」

「……はぁい」

「「「(絵になってる…)」」」






イケメンと美人が何をしても絵になるのはご愛嬌。三人はもう完璧に傍観に入っていた←







「悪いがミリの体調の事もあるから俺達は帰らせてもらうぜ。気をつけて帰ろよお前ら」

「あ、はい!」

「ミリ姉ちゃん、また会える?」

「うん、また会ったら今度はゆっくり話そうね。サファイアちゃん、ルビー君、エメラルド君」

「「「はい!」」」






三人の大きな返事にミリは手を振った。足元にいた白亜と黒恋はピョーンとミリの腹の上に乗り、レンはフッと笑って背を向けた

レンの白銀とミリの漆黒が太陽の光に煌めいた。それがやけに印象強く、三人は二人の姿が無くなるまで見続けていた








「また会えると良いね」

「そうだな」

「そうったいね」







三人は笑った





* * * * * *












「うー…」

「ほらみろ、無理するからだ」






ルビー、サファイア、エメラルドから少し離れ、黒恋のテレポートで自宅に戻ったレンとミリ

やはり体調が悪化したのかミリの顔色が悪い。多少の怠さもあって動きが鈍い。レンの腕からいそいそと逃げようとするが、勿論それは叶う訳もなくそのままベットに直行。白亜と黒恋にはおやつを与え、蒼華と時杜を出して二匹を任せたレンに色んな意味で敵う訳がない(時杜は苦笑を零していた)(とりあえず手を振っておく

二階に上り、自室に入り抱き上げていた身体をゆっくりと横たわらせる。申し訳なさそうに顔を毛布に埋めるミリにレンは小さく笑う






「熱はなさそうだな。…目の方は大丈夫か?」

「大丈夫、ちゃんと視えてるよ」

「そうか」






安堵の溜め息を零しながら、ベットの縁に座ったレンはミリの頭を撫でる。暖かな手の温もりにミリは気持ち良さそうに目を細める


あの日から、何だか色んな事が変わった。色んな意味で。互いの気持ちが通じ合い、見事仲間から恋人に格上げした二人。恋人になるのは時間の問題だった

満月の影響で体調が悪化していたミリの身体は、レンの存在で収まりつつある。記憶の事も、今でも酷い記憶を見続けているがレンがそばにいるお蔭で自我放棄せずこれまで必死に耐えてきている。今こうして笑っていられるのもレンのお陰である。ミリが必死に耐えている中、レンはミリの看病をし続けた。高熱が出て苦しんだり、記憶で苦しんだり、盲目になり恐怖に苦しんだりと…どんな時でもずっとミリのそばに居た







「で、結局何があったんだ?勝手に居なくなっていたからマジで焦ったぜ」

「ごめん、白亜と黒恋がトキワの森に行っちゃって…追いかけたらこうなっちゃった。でもあの子達には悪気は無いの。ただ、あの子達は私に木の実を渡したかっただけなんだ」

「分かってる、だからってさっきも言ったがお前はある意味病人だ。体調崩したら元も子もない。…心配したんだぞ、ミリ」

「う…ごめんなさい…」






お陰様で独占欲と言う名の過保護になってしまったのはしょうがない事。ミリは病人になっても何しでかすか分からない。…元気になりかけるミリは本当に、危なっかしい。レンはいつもヒヤヒヤしていた

しかも今日なんて知らない少年少女なんかがいた。…とりあえず恋人らしい事をしたからあの少年二人(=悪い虫)が付く事はないだろう。と頭の片隅に思っていたりした←






「あ…そういえばゴウキさんは?」

「ゴウキはジョウトを制覇して今日はカツラの所で戦ったってな。近い内にマサラ名物のグリーンとジム戦するって言っていたぜ」

「わ、流石ゴウキさん…一か月掛かったバッチを一週間で全て制覇する勢いだなんて…」

「アイツはある意味では最強な奴だ。これくらい屁でもねーだろうな。…無理するな、って言っていたぜ。アイツと再会するまで早く元気になることだ、ミリ」

「はーい」






毛布をしっかりと掛けてあげて、レンはミリの額にキスを落とす。くすぐったそうに笑ったミリはゆっくりと瞼を降ろした。レンの温もりを感じながら――気付けば規則正しい寝息が聞こえてきた

レンはまたミリの頭を優しく撫でながら、小さくも幸せそうに笑った







「おやすみ、ミリ」








(暖かな雰囲気は二人を包む)



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