此処はトキワの森の中








「迷ったい…」

「迷っちゃったね…」

「迷っちゃったな…」






薄暗い森の中に茫然と立ちすくむ三人の少年少女






「駄目じゃないかサファイア。いくら森があるからってターザンしたいが為に自分から森の中に入っちゃ!勝手な行動は謹んで欲しいね!」

「アタシが全て悪いとね!?ルビーだって可愛いイーブイを目にしたら同じように森の中に入ったたい!ルビーも同罪ったい!」

「あの可愛いイーブイだよ!?あのCuteな珍しい色をした白いイーブイだよ!?可愛いじゃないかあのイーブイ!僕はあのイーブイをもう一度見たい!」

「しるかぁあああ!全てお前らのせいだからな!追っかけてった俺の身も考えろ!あー、こうなるんだったらグリーンさんの所にいれば良かった!」






ギャーギャー言い合う三人の声は薄暗いトキワの森に大きく響き渡る。遠くに響く何かの咆哮やら何やらでビクッと三人は身体を震わせた




さて、まず此処で三人の紹介をしよう


珍しい色をした白いイーブイを見つけてテンションが上がった紅い瞳をした少年の名前はルビー。白い帽子がトレードマークの子だ。彼はホウエン地方コンテスト制覇者で、可愛い物を見ると見境が無くなってしまうのがたまに傷

野生に帰れる森にてターザンがしたいとテンション高く森の中に突っ込んで行った蒼い瞳をした少女の名前はサファイア。バンダナがトレードマークの子だ。彼女はホウエン地方ジムバッチ制覇者であり、バトルが大好きな女の子である。絶賛ルビーに片思い中


二人の身勝手な行動に振り回されてしまったある意味このメンツでは真面目な部類に入る翡翠色をした瞳をした少年の名前はエメラルド。クロワッサンみたいな重力に逆らった髪がトレードマークだ。彼もまた、ホウエン地方バトルフロンティア制覇者でもある。自分の身長をかなり気にしている

そんな三人を一纏めに合わせて「制覇トリオ」と呼ばれている(呼ばれてない!by エメラルド






「…お前らのせいだからな!」

「すまんち…」

「ごめん…」






さて、まずはどうしてこうなったか説明させてもらおう



理由は至ってシンプル。先程三人の会話で分かる通り、トキワの森にやってきた三人の内サファイアはターザンがしたいと森の中に行き、同じタイミングで森の中に白いイーブイを目撃したルビーは我も忘れて森の中へ。残されたエメラルドは慌てて二人を追うも、気付いたらこんな結末になってしまっていた

三人はホウエン地方からカントー地方までオダマキ博士の都合と自分達の先輩と再会するべく足を踏み入れていた。今回、サファイアの父であるオダマキ博士がオーキド博士の研究所に足を運んでいる間に自分達は散歩がてらトキワシティにいる先輩の内の一人であるグリーンに会いに行こう!という事になりマサラからトキワシティへ。ジムに着いた時、隣りには壮大な森がある為それを見たサファイアは…そして以下省略






「…これからどうするったい?」






不安げに問い掛けるサファイアに二人はどうするかと考え込む


三人にとって今回は予想外だった。それもその筈、三人の内ルビーとサファイアはこの土地は初めてだ。しかも運悪くポケギアも持っていなければタウンマップさえ持っていない。それはエメラルドも一緒だった。いくらこの土地に来たとしても、彼はジョウト出身でトキワの森には足を踏み入れていなかった。グルグル回って別の出口が見つかっても、果たしてそこが先程入った場所に着くかは分からない

しかもこれも運悪く、ダンジョンを抜け出すあなぬけの紐も持っていなければ、サファイアの手持ちである飛行ポケモンのトロピウス、トロロさえも今回手持ちに入れていなかった。むしろエメラルドはともかくルビーとサファイアは手持ちは今回少なかった。森を抜け出せる能力を持ったポケモンなんていなかった


…破滅的過ぎる



仕方無い、とルビーは呟く






「僕はこのまま白いイーブイを見つける。白いイーブイを目撃しないで死ぬなんて僕には耐えられない!」

「Σ懲りてないし!」

「だって白いイーブイだよ!?あの潤んだ瞳に愛くるしい姿、溜め息が着く程艶やかな毛並み…!あぁあああ撫でたい!」

「たった一瞬でそこまで見抜いたのかすげぇな」

「ルビー、アンタは本当に可愛い物見るとテンション高くなるったいね…」

「あのパーフェクトの毛並みを持っているなら、あのイーブイは誰かのポケモンだと僕は思う。そのトレーナーに会って道を聞けばいい。僕はそのまま毛並みについて色々聞き出したい。むしろイーブイ触りたい」

「ルビー、戻って来い」

「駄目ったい。完璧自分の世界に入っているとね」







遠くを見つめキラキラ輝かし、コンテストモードにスイッチ入ってしまったルビーを尻目にサファイアとエメラルドは溜め息を吐く

しょうがない二人だけでも出口を捜すか、とエメラルドが言い、サファイアが木に飛び乗ろうとした時だった





ガサガサガサガサ…









「「「!?」」」







近くの草むらが揺れ出した

エメラルドとサファイアは瞬時に構え、自分の世界に行っていたルビーも現実に戻り二人に習って構える


チャキと手にするのは自分のポケモンが入ったボール。サファイアが手始めにボールを投げようとしたが、ルビーが慌ててソレを止めた






「待ってサファイア!」

「なんとねルビー!」

「白いイーブイだったらどうするんだ!」

「Σしるかぁあああ!!」






そんなエメラルドのツッコミが木霊する中、草むらはガサガサと揺れを強くする



そしてガサッとソレは現れる








「あ」

「お」

「な、ななななななな」

「白、じゃないとね」

「黒、だな」

「な、なんて可愛いんだーーーッ!!!」






「……、ブイ?」







草むらから現れたのは、ルビーがうるさい程騒ぎたいと言っていた白いイーブイとは違い、今度は黒いイーブイ

黒いイーブイは口に木のみを加えていた。そこにトレーナーがいるとは思わなかったイーブイはキョトーンと三人を見上げた。ルビーはともかく、流石にサファイアとエメラルドも黒いイーブイの可愛さにキュンときた






「ああああ…白いイーブイと同じ位にCuteな…!艶がある黒い毛並み、愛くるしい姿、潤んだ瞳…!どれもこれも最高だよ!」

「ほへー、アンタ珍しい色をしてるったいね。可愛いったいね」

「黒のイーブイか…クリスさんに見せたら喜ぶだろうなぁ」


「ブーイ」






サファイアがしゃがんで黒いイーブイの頭を撫でる。多少警戒をしていた黒いイーブイもサファイアの純粋さに警戒を解き、気持ち良さそうに喉を鳴らした(後ろでは「サファイア交代して!」とルビーが騒ぐがこの際気にしない方向で

その時またガサガサと草むらが揺れた






「ブイ!」


ガサッ


「ブイブイ!」
「ブイブイ!」




「白いイーブイきたぁあああ!」

「ルビーうるさいったい!」

「すげー、黒と白だよ」







新たに出現したポケモンにルビーのテンションがマックスに跳ね上がった

現れたのは今度こそ白いイーブイだった。白いイーブイは黒いイーブイに駆け寄るが、まさかトレーナーがいるとは思わなかったらしくキョトーンと三人を見上げる。黒いイーブイと同じ反応したソレに三人はキュンキュンだ。今度はエメラルドが白いイーブイに頭を撫でてあげれば気持ち良さそうに喉を鳴らした(ルビーが騒ぐがこの際気にしなry






「可愛いたいね〜、なんか双子みたいっちゃ」

「ブイブイ!」
「ブイブイ!」

「おぉ、同じ顔に同じ反応だよ面白いなぁ」

「ちょ、サファイアにエメラルド!僕にも触らせてくれよ!」

「「ブイ!」」

「Σわぁ!」






二人に頭を撫でられていた二匹は同時にルビーに飛び付いた。肩や頭に飛び乗った二匹は尻尾を振りながらペシペシとルビーの頭を叩く

どうやら懐かれたらしく、サファイアとエメラルドから笑いが起き、ルビーも嬉しそうに笑った



その時だった









「白亜、黒恋。お友達が出来たみたいだね」






リン、と鈴が鳴った





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