空はもう真っ暗だ。星空が綺麗に輝いている。流石にこの時間帯になれば野生のポケモン達の気配が全く感じられない。遠くで海のさざ波が聞こえる以外、静寂がふたごじまを包む






「それじゃ俺達は行くぜ」

「ここは任せたぞ」

「帰ったら早々に奴等のアジトを見つけ出してみせる」




「また会おう!」

「今度はミリちゃんと一緒にね」

「連絡を待っているよ」

「気をつけろよ」






カツラの研究所前で、彼等はいた

シンオウに戻るレンとゴウキとナズナ、それを見送るミナキとマツバとカツラとサカキに、本部に戻るゼル

これで彼等は別れた後、『彼岸花』壊滅の為にゼルの指示の元に各々動く事になる。こうして共闘する者同士仲良くするのはここまでだ。奴等の居所が見つかった今、早々に奴等との決着をつけなければ。気を引き締めて臨まないと、何をしでかしてくるのか分からないのだから






「サーナイト、まずはこいつらをテレポートしてやれ」

「サー」

「悪い、ゼルジース。少し待て」






サーナイトを従えてテレポートを指示しようとしたゼルを制したのは、ナズナで

不意にナズナは―――この場に姿を見せない存在に声を掛ける






「闇夜、……闇夜はいるか?」

《―――――此処にいる。最後の最後にまた何か聞きたいのか?》

「今まで聖蝶姫の過去にこだわり過ぎて聞き忘れてしまっていたが―――六年前、聖蝶姫は何故行方不明になったのかを教えてくれ。何故行方不明になり、何故記憶が忘却され…お前とミリさんが離れ離れになってしまったのかを」

《………………》






忌々しい事件や【氷の女王】の件、そして一週間前の事件の真相に目が行き過ぎて今まで触れる事が無かった話―――そう、この話もとても大切な話なのだ。聖燐の舞姫のミリを知っているだけあってやはり注目するのは一週間前の出来事、【氷の女王】の件といいインパクトがあり過ぎた為に忘れ去られたもう一つの謎。ナズナの口によって改めて掘り起こされた、誰もが知りたい聖蝶姫の真相

ナズナの問いに闇夜は暫く沈黙を通していたが―――闇夜は、首を振った






《………その答えには、答えられない》

「!何故、」

「今更ここまできて答えられないなんて、」

《本当に答えられない。これは意図的なのではない。………何も思い出せないのだ。つまり私自身もまた、記憶喪失の身なのだ》

「「「「「!!」」」」」






まさかそんな答えが返ってくるとは誰も思わなかったらしい

彼等は―――あのゼルも、驚きの表情で闇夜を見返した






「まさかお前も…」

「そんな…」

《主との思い出は確かにある。忘れられない暖かな思い出を。…しかし、ある日を境に記憶が無くなってしまっていた。…気付いたら私は、あの島にいた。あの島で…いいようのない孤独を感じながら、誰かを待っていた。それが主だと気付いたのが…半年ほど前くらいだ》

「「「………」」」

「あの島……しんげつじまか」

「…六年前、最後の記憶は?」

《断片的であるが…主の為に開かれた送別会が終わって、職員全員で見送りを受けたところまでは……その後の記憶が、》

「いい、その先は無理して言うな。……肝心なところが抜けてしまっているなると、確実にその後に何かがあったという事だな」

「あの三匹も記憶喪失となると………真相究明は、極めて難しいだろう」

「「「…………」」」






冷静に全員にあの時の真実を伝えていた闇夜にも、記憶を失ってしまった喪失感の中にいた。心中とても辛かっただろう。要件だけを伝えた闇夜はズズズッとまた影の中に潜り込んでしまう

短い時間、沈黙が広がった。ゴウキの言う通り―――たとえあの三匹が目を覚ましたところで、三匹は何も覚えていない。それこそ『彼岸花』と決着を着けない限り、全ての真実を明らかにする事は出来ない―――


時間だ。そう言ってゼルは覗かせていた懐中時計の蓋をパチンと閉じた






「―――いずれにせよ、全ては奴等『彼岸花』をぶっ飛ばし、ミリ様の無事を確保してからだ。聖蝶姫が行方不明になった件はひとまず後回しにしろ」

「あぁ…」

「話はそろそろ終いにするぞ。俺はこうみえて暇じゃねーんだ、さっさとお前等を郵送するぞ。サーナイト、」

「サー」

「おい、俺達は荷物かよ」

「荷物も大荷物、粗大ゴミにして捨ててやってもいいんだぜ?」

「「「ふざけんな」」」






そもそもこの俺のお陰で此処に来れたんだ、有り難く思ってもらわねぇとな

共に真相を追求する者同士、当然の事だと思ってもらいたいものだ

あぁ、全くだ

どうせお前、一人で行ったところでこの研究所に辿り着けられなかったくせに

おいテメェゴルァレンガルス余計な事言ってんじゃねーよ今此処で決着着けんぞ愚弟の分際がッ!

やってみろよ返り討ちにしてやんよぶっ飛ばす愚兄野郎がッ!






ぎゃいのぎゃいのぎゃいの…















そんなくだらない言い合いをしながら


四人はサーナイトのテレポートで帰っていったのだった






「当初は心配したものだが、結局仲が良くて安心したぞ。早くミリ姫に見せてやりたいぜ」

「若い奴等は元気でいいな。…あのナズナがイキイキしている。やはり環境によって人は変わるものだな」

「ハハッ、そうだね。私も随分影響されていて楽しいよ」

「やっぱり、次はミリちゃんも一緒がいいね」

《……………》








いつか、次会う時は


可愛い妹も、一緒に









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