(映像観戦中......) 「――――この映像のアングル…色々と際どいんじゃねーか?下手すりゃ見えちまうだろ。敢えてナニかは言わねぇけど。…おいお前等俺がいる手前間違っても変な事考えるんじゃねーよ」 「あー…それはずっと思っていたよ。何処見ていいのか正直戸惑う……にしてもミリちゃん綺麗な足してるよね」 「男の性というのはつくづく厄介なものだ…つい私もそっちを見てしまうというか……なんというか」 「言うな。自分達は男として試されているのだ。見るな。ヤメロ。変な目で舞姫を見るな。お前等落ち着け」 「気持ちは分かるがお前がまず落ち着け」 「……まぁ、影の中にいれば自然とそうなってしまうよね…」 「こいつらにしたら目に毒だな」 「あれは白だな」 ――――――― ―――― ―― 闇夜は全てを話した 本来なら不可能であった方法を使って、嘘偽りのない本当にあった事を全員に伝えた レンが求め、ゼルも求め、また全員が求めたミリの真実―――忌々しい事件、【氷の女王】になってしまった経緯を、彼等は望んだ。内容はとても悲しいものだった。確かにミリが、闇夜がずっと隠しておきたかった内容だったのは確かだろう。このまま隠しておいてもよかった葬られし真実―――しかしもう、本当の意味で葬られた真実は表舞台に明かされる事になったのだった ミリが最も望まない形で―――― 「どうせそうだと思っていたぜ。アイツは一人で溜め込んで、一人で解決しようとする。前もそうだ、俺達を巻き込ませたくないとか言ってバトルをふっかけてきやがった事があったからな。ったく呆れてモノが言えねーぜ、結局そうやって自分を追い詰める事になるんだからな。見つけ出したら…二度と同じ事を繰り返さねぇ様にたっぷりお仕置してやんねーとな(悪人顔1」 「全くだ。舞姫の性格を把握していたとはいえ此所までくると俺も呆れてモノが言えん。今まで相手に憤慨する事はあまり無かった。自業自得だと突き放すのは簡単だが―――舞姫に限ってはそういう訳にはいかん。舞姫には俺が直々に説教をせねば(悪人顔2」 「いつの日か、三人を決別を取らせてしまった身としては申し訳無い気持ちでいるが―――ミリさんの性格を把握していても今回の話は、流石の俺も黙ってはいられない。…ここは俺も長男として妹の仕置をしなければ(悪人顔3」 「…ロケット団首領としてミリにしてしまった責任は重いモノは重々承知だが………やはりアイツには正座して説教だな(悪人顔4」 「…今回ばかりは仕方無いね(悪人顔5」 「気持ちはすっっっごく分かるけど、君達顔がすごい事になってるよ……ミリちゃん泣いちゃうって…」 「決別って……一体四人の仲に何があったというんだ……。まぁ私もいい気分ではないから気持ちは痛いくらいに分かる。だがお前達恐いぞ」 悪人がいる。悪人が勢揃いしている 闇夜の明かされた真実は、結果的に全員に受け入れられた。受け入れて、真実に向き合う姿勢をとった。ただ意味も無しにミリが非道な行いをしたわけではないと分かっただけでもよしとしよう ―――と、言う訳にもいかず ミリの事を一番によく分かっていたからこその真実は、彼等にとって怒りを増幅させるに他ならない話だった。全員、顔が恐ろしい。此所にミリがいたら―――嗚呼、考えるのも恐ろしい。確実に全員に怒られる事は目に見えていれば、色んなお仕置が降ってくる事は間違いないだろう。どんなお仕置かは…割愛しよう。恐いから モクモクと黒いオーラが出ている中―――彼等の様子を呆れ気味に溜め息を吐いていたゼルが、座っていたソファーから立ち上がった 「話は聞けた。俺は一足先に帰らせてもらう」 「「「!!」」」 「!そうか、もうそんな時間帯か」 「いつの間に時間が過ぎていたね」 「先程ガイルからの連絡がきて明日にはジョーイが到着するはずだ。…それにそろそろ帰らねぇとアイツの小言がうるせぇし(ケッ」 「「(総監に小言を言う執事…)」」 「本部に戻ったら本格的に奴等の本拠地を見つけ出す。真っ先に優先するのはミリ様を救出だ。奴等の息の根はその次だ」 「ゼル、総監として私達に指示をくれ。私達は、何をすればいい?」 「今の段階では命令は出来ねぇ。まずは敵のアジトが正確に判明してからだ。しかし、今の段階で分かるのはミリ様のポケモンを守る事だ。ヘアピンの探知機が発動していなかったにしろ、奴等がいつポケモンの存在に気付くかは分からねぇ。こっちにくる前に言った命令に従え。叩き潰してやれ」 「分かった」 「任せろ」 「ナズナ、ゴウキ、レンガルス、お前等も行くぞ。先に俺のサーナイトのテレポートで家まで飛ばしてやるよ。帰ったら早々に動けよ」 「あぁ」 「すまない、頼んだ」 「………」 長い話は時間を忘れる。いつの間にか時間が過ぎていたらしい。時刻はもう、夜の10時を回っていた このまま話を続けていくのもありだが、生憎彼等には時間が無い。こんな事を続けているのなら早々に帰って次の手に進めなければ。今日はかなりの収穫を得た、早く奴等との決着をつけなければいけないのだから シンオウに戻らないといけないナズナとゴウキは腰を上げ、帰る仕度に取り掛かる。レンも同様に腰を上げ、準備に取り掛かろうとするが―――去り際に、誰にも聞こえない声でゼルに言う 「ゼルジース、あの件だが…」 「分かっている。…アレに関しては俺に任せておけ」 「……」 この二人は、一体何に気付いたのだろう 今はまだ、謎のまま 重く暗い表情を浮かばせた二人であったが、それも一瞬の瞬き。すぐにレンはナズナとゴウキの後を追いゼルの元から離れていく ゼルもまた次の行動に移すべく腰からボールを取り出し、サーナイトを繰り出そうとする。が、《ゼルと名乗る者よ、》というテレパシーの声にズズズッとゼルの足下の影が動き、闇夜はユラリとその姿を現した 《…否、総監と呼ぶべきか?》 「好きにしろ。…用件は何だ?」 《本当の事を全て話した。全て話して、この者達は私達に対し譴責している。誰も私達を責める権利は無い、が………総監であるお前に聞く。私達のやっていた事は、間違っていたか?》 「…………」 ミリの真実を受け入れたにしろ、全員はミリに対して怒っている。一人で抱え込み、一人で苦しみ、救いの手を求めなかったミリ自身に対して その中で唯一怒る様子を見せなかったゼルに対し疑問にでも思ったのだろう。なによりゼルは総監という立場にある。そして一番に、この真実を聞いてはならない人物でもあった 闇夜の金色の瞳はゼルを写す。私達のやっていた事は正しかったのか、頂点に君臨する存在から見て私達の事をどう思うのかを――― 「……先程も言ったはずだ。これは全て、リーグの責任だとな。ミリ様をここまで追い込ませちまった、チャンピオンという立場の責務、そしてその事に気付かなかった当時のリーグの愚行がな」 《…………》 「だからミリ様は何も悪くねぇ。…………と断言したいところだが、一人の人間として言わせてもらうとしたら…―――誰にも頼らなかったミリ様の行為に関しては、間違ってるとしか言えねーな」 《……そうか》 「だからと言って俺はミリ様を責めるつもりはねーよ。………ポケモンマスターの資格を剥奪される心配があるなら、それはねーから安心しろ」 《………》 ゼルの言葉は総監の言葉 総監の言葉は正しい言葉 他人が色々言うより、彼が言うのならミリは間違っていたのだろう。歪んでしまった故の、行為に。しかし、もう手遅れだ。もう六年前の話、本人は記憶喪失になってしまった。この手の話は本当に闇に葬られたと同然の話なのだから 聞きたい事に満足したのかは分からないが、暫く闇夜はゼルを見つめた後、《奴等を見つけたら至急連絡をいれろ》という言葉を最後にズズズッと影の中に潜ってしまう さてそろそろサーナイトを、と次こそはボールの開閉ボタンを押そうとした時―――今度はマツバがゼルに近付いた 「ゼル、」 「あ?なんだよ次から次へと」 「今だから言っておきたい。……ミリちゃんが無事見つかったら、今日みたいに一緒に食卓を囲もう」 「………」 「………昔のレンと同じで今の君は一匹狼、総監という立場がそうさせてしまっているのかもしれないが、君の心は孤独だ。そんな君が何でミリちゃんに執着しているかは流石に分からない。勿論、さっき見たあの不思議な光景に関してもね。けどそれを抜きにしたって…少しくらい、ハメを外したっていいはずさ」 「…知った口を、」 「ミリちゃんもきっと、それを望むはず。…友達は増やしておいて損はないよ、ゼル」 「…………」 マツバは千里眼の修行者。尚且相手の心を見抜く力も持っている。そんな彼だからこそ、ゼルの内面に気が付いたのだろう 当然ゼルはマツバの力を知っている。マツバを見返したゼルは小さく舌打ちをし、「勝手に人の事情を覗き込むなよ」と睨み付ける マツバは笑っていた 「職業病てやつさ、許してくれ。…ま、僕としたらたとえ君が総監でも図々しく友達だと思っているんだけどね」 「……本当に図々しい奴だな。普通は総監とダチとか考えらんねーよ」 「やっぱり?ハハッ……でも、悪くないだろう?」 「……………………」 「――――…気が向いたら一緒に食べてやらねー事もねぇよ。そこにミリ様がいる前提でな」 「!」 「全てはミリ様が見つかってからだ。ミリ様を救出し、奴等をぶっ飛ばして全ての因果を終わらせてからだ。……………その時まで、俺達の関係が続いていたらの話だがな」 「…………」 自分達は所詮、利害一致の関係 上下関係とはいえ、本来出会わなかった存在 ミリが行方不明だからこそ出会えた。そのミリが見つかって、これからの事の行く末を決めるに当たってどう動くのか このまま結束するのか それとも決別してしまうのか――― 「……意外にゼルが友達いない事を見兼ねてミリちゃんがはりきっちゃいそうだけどね。友達百人出来るかなー、って」 「……………」 その言葉に返事は無かった → |