カツラからの朗報の知らせ。全員はカツラの案内の元、すぐにナズナがいる部屋へと駆け込んだ

ナズナはパソコンの前に座っていた。ポニーテールに髪を縛り、やり切ったとばかりに息を吐いている。その顔は清々しいものだった。やっと見つけ出せた、そんな表情を浮かべながらナズナは全員を迎えた





「「ナズナさん!」」

「ナズナ、」

「ナズナ、アジトが見つかったのは本当か?」

「あぁ…間違いない。見てくれ、これが奴等のアジトだ」





驚く顔、喜ぶ顔、真剣な顔、多種様々な表情を浮かばせながら迫る彼等を相手に、ナズナはパソコン画面を全員に見せる

―――その画面は、よく分からない文字の羅列が画面いっぱいに連なっていて

全員はビシィィッ、と固まった





「「「「…………」」」」

「…………うん、ゴメン。よく分からない」

「………私達には少々難しいようだ…」

「………生憎このパソコンはナズナの研究所と比べて古いモノだから、ナズナが以前作った報告書通りに表示される仕組みには、なっていないんだよね……すまない」

「……(溜息)。万が一にも供えて本部から最新のモノを届けさせてやる。だが設置までは面倒見ねぇぞ」

「ハハ…面目無い」





しかしこのよく分からない文だけで奴等のアジトが判明したと解るなんて、やはり元科学者は違う。敵にすると恐ろしいが、味方にすればこんなにも頼もしい

相変わらずの腕だ、とサカキは喉の奥でクツリと笑いナズナの背中を労いの意味を込めてバシッと叩いた






「で、ナズナよ。この画面で一体何が分かる?」

「はい、この画面で分かるのは―――奴等の、『彼岸花』のアジトはシンオウ地方にあるという事です」

「「「「!!」」」」

「!!…やはりシンオウ地方にあったか…!」

「出来したぞナズナさん!ミリ姫の手掛かりを無駄にせずよく見つけてくれた!」

「あぁ!シンオウなら三人のテリトリー!場所が分かればすぐにでも奴等を倒してミリちゃんを奪還出来るはずさ!」





やはり敵はシンオウに潜んでいた。つまり敵は眼の先にいたのだ。自分達が知らないところで、奴等は今も高見の見物をし続けている

回りは勿論喜んだ。声に上げて喜ぶ者、拳を握って喜ぶ者、安堵の息を吐いて喜ぶ者様々に。これでやっと奴等の目論みを潰す事が出来る。ミリを、救い出す事が出来るのだ

回りが各々喜んでいる中、一人だけレンは納得のいかない表情を浮かべていた





「…けどハッキングで色んなサーバーを経由して探していたのにも関わらず見つからなかったんだろ?なのにそのヘアピン一つで簡単に見つかるなんて、おかしな話だろ。…どうやって突き止めた?」

「…シンオウの全てのサーバーを飛んだつもりだったが…まだまだ読みが甘かったらしい」





そう、問題はそこだ

ナズナはこの二週間、ゼルの後ろ盾をいいように色んなサーバーに飛びまくり、『彼岸花』のアジトを突き止めようと必死になっていたのは記憶に新しい。自分の体調なんてそっちのけで、いつ倒れてもおかしくないくらいに

本来だったらすぐにでも見つけ出せたはずだ。しかしナズナは見つけ出す事が出来ずにいた。それだけ奴等は強敵で、簡単には尻尾を掴ませないくらい徹底していた

随分と舐められたものだ。ナズナは小さく悪態吐きながら全員に説明を始めた





「どうやら奴等は14年前の事件を機に俺のハッキング法を熟知していたらしい。色んなサーバーを経由する俺の飛び方を警戒、もしくは俺に対する挑戦状かは知らんが敢えて小さいサーバーを一つだけにし、痕跡を少なく、しかも縛りを強くさせる形で俺の眼から遠ざけ様としていた」

「縛りを強く…?」

「「…?」」

「自分にとって不利な契約や条件を重ねる事だ。一番分かりやすいのはインターネット環境でない事だ。パソコン自体インターネット使用不可のものだったりな。考え方次第では他にも色々ある。そんなサーバーがインターネットを繋げない限り、流石の俺も手の出しようがない」

「へ、へぇ…」

「奴等はこのヘアピンを使い、ミリさんの居所を見つける為にインターネットを常に繋げていた。探知機と盗聴機は人工衛星と繋がっている。つまり家の扉が解放状態だ。きっとコレが機能を失っていた事に気付いていたらすぐにでもインターネットを閉じていたはずだ。…ミリさんの、機転の効いたおかげだ。コレが無かったら今も俺は奴等のアジトを見つけ出す事は出来なかっただろう」





通常なら見つけ出す事が出来なかった

このヘアピンがあったからこそ、奴等のアジトを見つけ出せた

ミリはそこまで見抜いてヘアピンを闇夜に託したのだろうか。ナズナはミリを思い浮かばせる。映像で見る限り、ヘアピンに気付く素振りは無かったはず。気付くとしたら、もっと前になるはずだが―――真相は闇の中、ミリが見つからない以上余計な詮索は無用だろう。全てはミリが見つかったら詳しく聞けばいい

脳裏にミリの微笑をちらつかせながら、ナズナは小さく溜め息を吐いた






「…しかし用心深い奴等だ、このアジトはもしかしたら捨て駒同然のアジトかもしれん。中身を調べなければ全ては明るみにはならない。………少なくても聖蝶姫の情報を盗んだサーバーには間違いないだろう」

「「「「「!!」」」」」

「!それは本当だな?」

「あぁ、信用してもいい」






再度問い掛けるゼルに、ナズナはニヤリと不敵に笑う

敵はもう、見つかったのも同然

全員の表情は―――ナズナ同様に、不敵な笑みを浮かべていて







「ならナズナ、そのアジトは何処にある?」

「詳しい居場所は俺の研究所で再度調べなければ分からないが……その場所は―――」















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