『男の人の急所は分かりやすいよ。あそこを狙えば確実だもんね!!』

『貴方本当鬼ですね。仮にも恋人相手に容赦なさすぎです。流石の私も白銀の麗皇に同情しましたよ』

『やっぱり蹴られた姿を見ると伝染して自分も痛くなるものですか?ねえねえ痛くなるものです?ねえねえ痛くなる?後学の為にも次は貴方達のを蹴りあげてあげますよ!』

『止めて下さい年頃の小娘が笑顔でそんな事を言うんじゃありません!さらに夢に出てしまうじゃないですか!』

『そんな事言って実は蹴ってほしいんですよね?イヤもイヤも好きのうち!分かってますって!遠慮せず私に蹴られなさい!』

『…………。女王、もしかしてそっち系だったんですか?すると白銀の麗皇は………ふむ、人は見掛けによりませんね』

『……?よく分からないけどレンちゃんを生かすも殺すも私次第よー!』







《流石に全員の前で見せるのはためらった》

「アイツ戻ってきたら覚悟しやがれ」



―――――――
―――――
―――








闇夜が見せた、あの日あの時の出来事

闇夜視点で流れた映像は衝撃的な内容であり、揺るぎない真実。あんな事が起きていたら小島が荒れ放題になっていたのも納得いくし、また奴等の脅威を思い知らされる事にもなった

奴等を絶対に許してはならない

あの後のミリの行方がとても不安だ。あんな力があるのだったら闇夜達と一緒に逃げればいいものを。何故、立ち向かう選択肢を選んだのか―――その選択肢を選んだ事で、悲しむ者達が大勢いるのに

そしてミリは消えた

傷付いた仲間達と、小さな手掛かりを残して






「超小型探知機…ほう、なるほど。ご立派に盗聴機まで仕掛けられているとは敵も抜かりないな」

「…これを使いミリさんの居所を把握し、会話も聞いていたのでしょう。…ミリさんはそれに気付いてこれを闇夜に託した。…闇夜がカツラさんの元に辿り着き、俺の元にこのピンがいくのを分かった上で」

「ミリ君にはつくづく頭が上がらない。…ナズナ、この超小型探知機で逆探知は可能か?」

「壊れていなければ可能だ。…壊れていたとしても関係ない。ミリさんが最後に残した手掛かりだ…絶対に奴等を見つけ出してやる」






元ロケット団三人組、サカキとナズナとカツラ。闇夜から受け取ったヘアピンを真剣な面持ちで分析している

本当に小さいヘアピンだ。女の子ウケに良さそうで、ミリのイメージにピッタリだ。しかし中身を開けてしまえば物騒なモノがあるのだから恐ろしい。フタを被せてしまったら全く何も違和感がないから、人はこのピンの事には全く気付かないだろう

ミリはいつ、このピンが探知機やら盗聴機やら物騒なモノが付いていた事に気付いたのだろうか。真相は未だ闇の中、今の彼等には到底辿り着ける答えではない


不意にヘアピンを手に分析していたナズナの手がピタリと止まる






「…壊れてはいないみたいだが、少々違和感が…」

「待てナズナ、安易に解体するな。…俺に見せてみろ」

「!…いいだろう」






超小型探知機、そして超小型盗聴機はチカチカと赤い点滅を光らせている。しかし言い様の無い違和感を覚えたナズナが探知機を解体しようと手を動かしたその時、一連を見ていたゼルの制止の言葉で止まる

ナズナの手からゼルの手に渡ったヘアピン。カシミヤブルーの瞳は鋭く光らせながらヘアピンを注視する。暫くするとゼルはヘアピンを手の平に乗せた

―――するとゼルの手の平から淡い光りが輝き出し、ヘアピンを包み出したではないか

ミリがみせる暖色系の淡い光とは違った、白銀色の光。光はヘアピンを包み、フワリと浮かせた。ゼルが起こした突然の行動に回りの者達は驚愕した表情でその光景を凝視していた






「「「「――――!!」」」」

「…ゼル…君は……」

「…ミリ君に見せてもらったものとは、また違った光だ…」

「お前も不思議な力を持っているのか…?」

「詮索は後にしろ。………フッ。やはりな、俺の読み通りだ。この小型探知機、ミリ様のお力が使われている」

「「「「「!!」」」」」






ポウゥゥッ、とした光をそのままに

ゼルの口元には小さな笑みが浮かぶ






「この超小型探知機は現在進行形で作動している。闇夜の居場所や俺達の会話はおろか、本来だったら既に奴等の手がこちらに降り懸かっていたはずだ。しかし、ミリ様のお力で探知機も盗聴機も作動はしつつも機能を果たしていない。…奴等からしてみればミリ様や闇夜達は本当に行方不明になっちまったって事だ」

「……!なるほど、だからミリ姫はそれを見越した上で闇夜に託したのか」

「奴等の居所を…知らせる為に」

「「「「「………」」」」」






ゼルにしか分からない事が、このヘアピンに起こっていた。ゼルが居なかったら、ヘアピンの探知機の存在は気付けてもミリの意図に気付く事は無かっただろう

ミリの力のお陰で、探知機と盗聴機は作動していても機能はしていない。もし仮に壊れてしまっていたら、探知機からの逆探知で敵のアジトの割り出しが困難だったはず。分かっていてミリは力を使って闇夜に託した。自分達を、信じて

今もなお、力は発動されている。その意味は、ミリは生きているという証。レンの腕輪の件もある。もう誰も、ミリの"死"の可能性は全く考えていなかった

ゼルは力の発動を止め、いき場の失い降下するピンをパシっと手にする。それからそのピンをナズナに向かって軽く投げた






「―――ナズナ、分かっているな?」

「当然。言われなくても」






パシッと受け取ったナズナ

ナズナも、ゼルも、その表情には不敵な笑みが浮かんでいた






「頑張ってくれ、ナズナさん」

「ナズナさんだけが頼りなのだからな!」

「必ず見つけ出せ、ナズナ」

「はい、任せて下さい。…カツラさん、少しの間この研究所のパソコンを借りたい」

「勿論、好きなだけ使いなさい。逆探知機械も確かあったはず。案内しよう、こっちだ」

「あぁ」






こうしてはいられない、と足速にカツラの先導で部屋を出ていくナズナ

ミリが残した唯一の手掛かり。ナズナなら必ず奴等の居所を見つけてくれるだろう。ナズナのハッキングの実力は此処にいる誰もが認めている。もしかしたら数分足らずで見つけてくれそうだ。そんな淡い、期待


しかし、問題はまだまだ山積みだ






「―――問題は、白皇に似た奴だ」

「…………」

「ゴウキ、お前の眼から見てあのレンは……」

「あぁ。あの白皇は





 ―――人間ではない」










歪んだ笑みを浮かべた

レンと瓜二つの、存在





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