ドアを開けて中に入った俺が真っ先に見たのはミリの姿。白い柔らかい素材のカーペットに座り込んだミリは、俺が入って来ても振り向こうともしない。流石に服は変わってくれていたが、しかし部屋と同じ真っ白い色をした…下着に近いワンピース(だと思う物)を着ていた。身体のラインがハッキリ見えるその背中を隠している唯一の髪は相変わらずサラサラと窓から入る風によって靡いている(男の性だからしょうがないが、もっと別の服を着てくれ頼むから


窓から覗く空は既に薄暗くなっていた。部屋も明かりが無い為若干暗い。明かりをつけるまでは必要ないが、何故か一瞬だけ不気味に感じた






「…ミリ」






ドアをゆっくり閉めた俺はミリの元に歩み寄り、ミリの横に座る。声を掛けても無反応なミリの肩を触れるだけ触って、引き寄せる

弱々しい身体は抵抗も無くこちらに寄り掛かってきた。フワッと香るのはミリの花の良い香り(俺はこの香りも大好きだ)に、サラサラとミリの髪が靡いた。コテン、と肩に頭が置かれる。顔を覗くとミリは小さな寝息をたてながら眠っていた

座って寝ていたんだな、と分かったのは時間もかからなかった。そのまま俺はミリを抱き上げて胡座をかいた上に乗せた。所詮は姫抱きスタイルだ。前よりも確実に痩せた存在は、本当に壊れそうな程だった






『あら…』

「どうかしたか?」

『いえ、そんなに接近して何も影響なさそうで、びっくりしただけよ』

「そうか」






影響っつーものはいまいち分からねぇが、俺は眠っているミリの顔にかかった髪を手で退けてやる。小さく「ん、」と呟くミリは顔をこちら側に向け、すり寄ってくる。その仕草が温もりを求める姿に見えて、あまりの可愛さに俺の口はニヤつくばかりだ

頭の中にいるフレイリはどうも納得してないそうで悩んでいるのが分かる。そんなに気になるもんなのか?フレイリはこの状態でも影響がある、ってさっき言っていたが…全然何も無いじゃねーか

むしろ可愛いさ通り越して愛しさを感じるミリ。俺は堪らずミリの唇に軽いキスを落としてやったら『なるほど、』と頭の隅で呟くフレイリの言葉が






「何か分かったのか?」

『えぇ、お陰様でね。見せつけちゃって困るわ。その調子だと深いのも?』

「あぁ、当たり前だ。ミリの唇はやみつきもんだぜ?たまんねぇ」

『あらあらあら』






クスクスと笑うフレイリは笑うだけでヤメロと制止の言葉が無かった。なのでもう一度軽いキスを落としてやる。くすぐったそうに眠るミリがマジで愛しいと感じる

そういえばフレイリの奴、ミリの唯一の保護者とか言っていやがったが…その保護者が何も言わねぇっつー事は、認められたって訳だ。よし、決まりだ←まて






『"紅い満月"の有無関係無くミリに力はある。舌は特に呪文とか呼を使うから力の通りは激しいのよ。見ていると、レンガルスが口を奪って、口内を舌で荒らして舌を交える事でこの子の力がレンガルスに伝わって…いつの間にか力に対する抗体が出来ていた、てことになるかしら』

「フッ、日々の行ないの賜物って訳だな。流石は俺」

『フフッ、無性にミリの唇を奪いたくなった時ってあったでしょ?それと無性にミリを抱き締めたいとか、無性にミリを求めちゃう事とか』

「手は出してないぜ。…まだ」

『とりあえずあったと受け止めとくわ。【異界の守人】は【異界の万人】の力の受ける器な分、【万人】の力が無いと生きていけないのよ。特にレンガルスは元々の力が無いから、気付かない内に力を吸収していたのよ』

「へぇ…」






だからか、だから無性にミリが恋しくなったり、抱き締めたくなったり、キスをしたくなったのか。無意識は恐ろしいな、知らなかったとはいえ……結構俺は、ミリ無しでは生きられないって訳か



それでも別に構わなかった








「フレイリ」

『何かしら?』

「俺はミリと共に生きる」








たとえミリが拒絶しても



俺はずっと、想い続ける


報われない、恋だとしても








「…もう、ミリを離したくねぇんだ」







それは昔の前世がそう想う様に

俺もまた、この腕に眠る存在を――もう二度と、手放したくなかった









『貴方はまだ、目覚めていない』

「目覚める目覚めねぇ関係無い。一緒にいる事に、前世も来世も関係無いぜ」

『言いたい気持ちも分かるわ。けど、あの子は目覚めつつある。目覚めると、最後まで一緒に居れるとは限らない。結局、対等で同等な立場に居ないとあの子と道を渡り歩けない』












「だったらフレイリ、俺をその【異界の守人】にしてくれ」












『…本気、なの?』

「あぁ」

『目覚めてしまったら、いつもと同じ生活が出来ないかも知れないのよ』

「それはミリだって同じだろ。俺だけのうのうとしてられるか。一緒に居れるなら、俺はミリと手を取り合って生きていく方を取るぜ」

『それを、この子が望まなかったら?』

「ミリは優しい奴だ。俺を苦しめない為にも普通な人生歩ませる気でいるのも想像はつく。…けど、俺の人生を決めるのは俺だ。誰にも左右はさせねぇ」

『…………』









「愛する者の為なら、一緒に闇に堕ちてって構わねぇ。…だからフレイリ、俺を目覚めさせてくれ」












その時、呻き声が聞こえた






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