「【異界の守人】、か…」 『貴女にはまだ居ないのね』 「…居ませんよ。【私達】の関係する者達や【私達】が統べる者達が数多くいても…未だに【異界の守人】には巡りあってません…」 『私は居ると思います。彼が私に逢いに来てくれた様に、貴女にも、【異界の守人】が現れてくれる』 「………」 『信じましょう、闇を照らしてくれる存在を。【私達】にとって、必要不可欠な存在を』 希望を捨ててはいけない ――――――――― ――――――― ――――― ――― ― 「…【異界の守人】…」 『そう、貴方は【異界の守人】の転生した存在。貴方もまた、【守人】の魂を宿りし無垢な身体を持つ唯一の者』 「ミリと、同じ…」 『そうよ。あの子は魂と力と記憶を受け継いだと同じに…レンガルス、貴方も同じよ。魂と記憶を宿した、あの子の力を受け取る器の存在』 【異界の守人】という言葉は初めて聞いたにも関わらず、何処かでは俺はその言葉を知っていた …不思議と、馴染んだ言葉だった 「その【異界の守人】が俺の前世、【異界の万人】がミリの前世…か」 【異界の万人】 【異界の守人】 夢の中に出てくる女 夢の中に出てくる俺―― 「無事、再会出来ていたんだな」 何時の日か見た夢 崩壊されていく島で、命の灯を尽きて倒れていた女を抱き上げて泣き叫ぶ昔の【俺】 胸糞悪い夢だった。女があまりにもミリに酷似していたから、その時丁度"あの時"と時期が被っていたから―― 「" "様!!どうして、どうして俺を置いて逝かれたのですか!!」 『どうやら少し影響はあったみたいね』 「影響、か。…不思議な夢を見始めたのは俺とミリがまだ出会った当初、シオンタウンの時からだったな。…頭を撫でたら、不思議な感覚を覚えた」 『それが影響の始まりで、貴方の【異界の守人】の記憶が目覚めるキッカケでもあったのよ』 頻繁までとはいかないが、夢を見る様になった。まるで俺がその場で見て体験したみたいな、不思議な夢を 女とミリを錯覚する時があった。儚げに笑う二人の顔がとても締め付けられる思いだった。何も出来ない夢の中での俺は只、女を抱き締める事しか出来なかった 『ミリの手持ちにいるスイクンとセレビィの蒼華と時杜は、時空を越えて【異界の万人】の生まれ変わりであるあの子の前に現れた。あの子の仲間にまた、なる為に。イーブイの白亜と黒恋は前世のあの子が大切に育てていた卵から産まれた子達よ』 脳裏に浮かぶ色違いの仲間達 道理であの時から蒼華や時杜が初対面と感じられなかったし、白亜と黒恋が親が子を想う気持ちと同じ感じになったりと…思い返せば、沢山あった 疑問に思っていた事だらけで、しかし中々質問したくても質問出来なかった。…これで納得した。伝説や幻のアイツらがどうしてミリの前に現れ、慕い…ミリもまた、二匹に心を開いた理由も (俺は妬ましかった) (【俺】も妬ましかった) 『レンガルス、貴方にはまだ目覚めていない。記憶は少しずつ開化されてきてもね。…どうやら"力"までは受け継がれなかったみたいね。それが不幸中の幸いだったかもしれないわね』 「…力があったら、どうなる?」 『【異界の守人】は【異界の万人】の膨大な力を受け取る器。力があると、力と力が反発しあってしまう可能性があるのよ。前世の貴方達は、まだ前世のあの子の力が弱かった為にプラマイゼロで丁度良かったのよ。でもあの子の場合はその倍の力があるのよ。満月の影響も兼ねてね。器は何処まで持つかは分からない。…だからあの子には貴方みたいな力が無い器の方が均等出来るのよ』 「……俺、なんか弱そうだな」 『そんな事ないわ。その分、器の力が強いわ。モノの使い方によっては、あの子の力を吸収して自分のモノにも出来るし、力を蓄積しといて何かあった時の為にも使えるわ。貴方は力を使う方法は知っている。でも自分に力が無いだけで』 「その力の使い様で、俺はミリを守れるか?」 『勿論よ』 フレイリはフフッと楽しそうに笑う 『【異界の守人】は【異界の万人】にとって必要不可欠な存在であり、又【異界の万人】も【異界の守人】にとって必要不可欠…お互いがお互い必要とする存在。【異界の守人】が居ないと、【異界の万人】は力に溺れ潰れてしまう レンガルス、貴方が居るだけであの子は"紅い満月"の影響から逃れる事が出来て、貴方が居るだけで暗闇から解き放たれる事が、出来るのよ』 「それだけ聞けば、満足だ」 俺はドアノブを捻った → |