『そうね、まず何を説明しようかしら?話したい事は沢山あるのよね。話さないと、貴方は勘違いしてしまう部分もあるから、そこはしっかりと区別しておかないとね』 フフッと笑う口調は変わらないが、話す声色は先程のおチャラけた感じと一変した 『――もう知っていると思うけど、あの子は特別な力を持っている。持っているからこそ、あの子は深い闇を持っている。複雑な絡みがあの子を蝕み、苦しませている。…あの子にしか分からない苦しみは、誰にも分からない』 真剣に言葉を繋ぐフレイリと言う女に、俺はゾクリとした何かが背中に走った…気がした 『貴方にあの子を救う覚悟は、ある?』 今なら引き返せれる、とフレイリは言う。知らない真実を知って後から後悔されても困るし、ミリが可哀相だともコイツは言う それほどにまでミリの話は深いとフレイリは言った。『どうする?』と問い掛けるフレイリに俺は迷う事もせず「聞く」と答えれば、頭の中でフレイリが息を飲んだのが分かった 『…逃げないのね』 「逃げる?今更逃げるとでも思っていたのか?…だったらそれはお門違いだ。俺はお前の話を聞く」 『…後悔は、無いわね?』 「後悔するなら此所にはいねぇよ。俺は自分の意思で此所に来て、自分の意思でミリを救う。…俺はアイツを、ミリを、助けてやりたいんだ」 『……』 「俺が出来る事ならなんでもする。それでミリが深い闇から解き放たれて、あの太陽みたいな笑顔に戻ってくれる為なら――俺は一緒に闇に堕ちたって構わない」 『……』 「ミリを一人に、したくないからな」 そう、一人にはさせねぇ 今もアイツは一人で苦しんでいる 「知ってるかフレイリ。アイツ、ああ見えて結構寂しがり屋なんだぜ?」 俺も寂しがり屋だって分かったがアイツも結局寂しがり屋だった。アイツはいつも大丈夫だって言って一人に耐えていた 脳裏に浮かぶのは、俺の症状を気遣いながら俺の温もりを求めていたミリの姿。バレてないとでも思っているだろうが、俺は気付いていた。気付いていたからこそ、俺は一緒に寝る事を求めた。少しでもアイツを寂しさから救える様に あーでも俺良く耐えた頑張った← 『なら、最後に質問よ ――貴方は、あの子の事をどう思ってる?』 「俺はミリの事が好きだ」 初めは知らない振りを決め込んだ 今の関係にそれは必要ないと思っていたからこそ、この想いを封じ込めた でもミリに逢うたびに、ミリと一緒に行動して一緒に笑い合う中で――次第に抑えられない程に膨れ上がっていった 想っていても、今まで口には出さなかった。出してしまったら最後、本当に歯止めが利かない 「俺はミリを、愛している」 愛しているからこそ、ミリを救ってやりたい ――今度こそ もう、ミリが苦しんでいる姿は見たくない ――同じ過ちは繰り返したくない 「大好き、なんだ。俺はアイツを、ミリを。どうしようもなく――愛してるんだ」 口で言っちまったら、止まらない 止まらない――― 『貴方の覚悟、あの子を想う想い、しっかりと受け取ったわ ――ありがとう、レンガルス。貴方なら全てを話せれる、貴方ならミリを任せれる。…長い話になるわ、心して聞いて頂戴』 夕焼けが、沈んでいった → |