「辛い、ですね」

「苦しかった、です」

「悲しい、ですね」

「痛かった、です」





共感する、通じ合う

互いの痛みを、言葉にして


涙にして――





「私は耐えます。耐えて、私は【貴女】になります。私は、【貴女】」

「【貴女】は、私」

「私達は、同じ」

「同じ魂、同じ人間」





「「受ける痛みも、同じように」」







私の視界が暗転した



―――――――――
―――――――
――――
――















『フフッ、そんなに警戒しなくても別に取って食べちゃう訳じゃないんだから。それに私は貴方の"中"で声を掛けているから回りに私なんか見つからないわよ?』






頭の中に響き渡ってきた不思議な声に俺は休んでいた身体を飛び起きさせ警戒心を露にしてすぐにエルレイドが入るボールに手を伸ばした――が、まるで金縛りに遇った様に動かない手に俺は驚愕する。頭の中にはクスクスと笑う女性らしき声が響いている。今日聞いた誰かのテレパシーとは違うソレに俺は辺りを見渡すが…俺の行動を読み切られているみたいで、楽しそうにソイツは言った

"中"で話し掛けているという事は、この声は俺だけしか聞こえねぇって事になる。確かにこの声は耳から入る感じじゃねぇ、頭に直接響いている感じだ。回りに気配が感じられない所をみると…コイツが言っている事は、本当らしい

姿形分からねぇ相手に現状を打開する手立ては無い。何もしてこないのは本当で金縛り以外何もしてきやしねぇ。このままだと埒が明かないと分かった俺は構えていた警戒心を解く。すると動かなくなった手が動き、しまいには身体まで動き始め、俺はソファーに座らされた。驚愕する俺を余所に女は面白そうに笑った






『物分かりが良くて聡い子ね、レンガルス=イルミール。いえ、白銀の麗皇って言った方が良い?それとも、皆に親しまれて呼ばれているレンって言った方が良いかしら?』

「どっちだって良い。…お前、一体何モンだ?」

『フフッ、悩みに悩む小羊の助言者…て所かしら?』

「ふざけてんのか」

『あら、ふざけてなんて無いわよ。本当の事でしょ?自分の不甲斐なさに路頭に迷い、どうする事も出来ない己に苛立ちを覚える貴方に、こうして私がわざわざ干渉してまで助けにきたんだもの。言い訳は出来ないわよ』

「…っ」







確かに、言い訳が出来ない

コイツの言葉は真っ直ぐに俺を突き刺した。何も言い返さない俺に女はクスリと笑う







『貴方とは一度話してみたかったのよ。運命って本当に面白いわ。まさか…【貴方】が、新たな姿になって帰ってきていたなんて、ね』

「……?」

『フフッ、こっちの話』







その内貴方も分かるわ、と意味不明な言葉を言う女に俺の眉間に皺が寄る






「お前は一体誰だ?どうして俺の頭の中に居る?どうして俺の名前を知っている?」

『フフッ、慌てないの。ちゃんと説明するから』






クスクス笑う女はこの現状を楽しんでいるらしい。こっちは楽しむ程正直余裕なんてねぇ。なんか手玉を取られた様な気分だ。言うならさっさと言ってくれ


…それにこの女の笑い方…










「(ミリ、みたいだな…)」








フフッ、と小さく笑うソレが特に似ている。クスクス笑うソレはミリの方が若干落ち着いている

声色はコイツの方が大人っぽい。…まるで大人になったミリと会話している気分だ。あー、きっとアイツ大人になったらどうなるんだろうな…(妄想と言う名の現実逃避←まて







『あらあら?こんな時でも頭の中はあの子の事?随分執着しちゃっているのね。私は嬉しいわ、そうやってあの子をちゃんと見てくれている事に』

「…プライバシーの保護を請求するぞゴルァ。考えていた事覗くなよ。てか……あの子、ミリの事を言ってんのか?」

『フフッ、だからちゃんと説明するから』









ポンポン、何かが俺の頭を撫でた

俺は驚いて自分の頭を触った。確かに触られた感触があったのに、後ろを振り向いても回りを見渡しても何も無い

女はさっきと変わらずに頭の中でクスクスと笑う。すぐに俺はコイツに頭を撫でられた事に気付くが、一体どうやって――






それにさっきの頭の撫で方は、俺がフラッシュバックで発作に近い症状を起こした時にミリがいつもしてくれていたソレに…あまりにも、似ていた














「レン…大丈夫だから、ね?」












…こんな状況でミリが浮かんでくるなんて、な















『…心配する気持ちは分かるわ。あの子は今、苦しんでいる。いにしえの古き記憶に左右され、自分自身も分からない程に』

「!!?」

『私が貴方にこうして干渉したのは、貴方を見込んで、貴方なら助ける事が出来ると思ったのよ』

「お前は、一体…」

『私の名前はフレイリ。詳しい素性は言えないけど、唯一言えるとすれば…そうね、






私はミリの全てを知る唯一の者であり、たった一人のミリの保護者でもある。同時に、彼女の幸せを一番に願っている者よ』










リン、と鈴が鳴った





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