目を瞑っても瞑らなくても過去の記憶はまるで映画のフィルムの様に絶え間なく流れていく。どれもこれも過去は鮮明に私の「中」に入っていき、私の中を支配していく。そこには私という概念は無く、無情にも残酷にも私の記憶を、私自身の存在をも、侵していく

全ての記憶は【私】から、「私」にへと引き継がれていく。新たな物語の続きをスムーズに進めれる様に記憶が移植されていく。全てが全て――【私】が生まれてから死ぬまでの人生の流れを、私は視て、感じて、体験する。それから私は【私】と同化していき、【私達】になる


元々は同じ魂から

元々は同じ力から


区別なんてモノは無いに等しい

有っても無くても関係ない



それが私、それが私達







記憶は回る、グルグルと













******






「どうしてお前なんか生まれたのよ!どうしてお前が…!お前が!何で私の腹から出てきちゃったのよ!」






力を忌み嫌う両親から毎日の様に罵倒を浴びせられ、殴られ、蹴られ、また殴られる

抵抗しようとするならば、今度はナイフで切り刻まれる。それにもう日常になっているので、抵抗という字は私の中で風化していく。叩かれるのが当たり前、傷付くのも当たり前――


私はいつも、唯一の親からの暴力を堪えるだけで、精一杯た






「はは、さま…」

「気持ち悪い!わたしはお前の母様じゃないわ!お前みたいなキモチワルイ存在なんか生み落としてない!」

「はは、さま…」






そんな事言われても、生まれた子供は生んでくれる親を選べられない。今考えるとバカバカしいけど、昔の私は只黙って殴ってくる自分の母を見ているしかなかった

仮にも自分の母親で、仮にも自分をアイシテくれていた。今は豹変してこうなってしまったが、私はこの人を憎めなかった


可哀相、まさにこの言葉がピッタリな人だった






「餓死させようとしても、全然餓死にならないし食べ物食べなくても死にやしない!!」

「は、はさま…」

「ナイフを刺して刺して刺して刺して刺しても傷なんてすぐに治っちまう!!」

「……はは、さま」

「滝に突き落としても水に頭を突っ込ませても他の皆に暴力降られても色んな人に犯されてもお前はいつもいつも平気で生きている!!胸糞悪いわ、化け物よ!一番ムカつくのはどうしてそんなに美しくて歳をとらない!?悪魔!魔女!気持ち悪い!」

「はは、さま」

「一々そんな目で私を呼ぶなっ!!!」









叩かれているのは慣れている

蹴られるのも慣れている

殺される事も慣れている

犯される事にも、慣れている



私が何をされたって構わない





でも、切羽詰まった母の顔を見るのは――辛かった









「お前なんて…っ!!!」font>










生まれてこなければよかったのに――









******











また一つ、記憶が終わる







「……ははさま…」








【私】の心が死んでいく



「私」の心も死んでいく








「ははさま、貴女は可哀相なヒト。ははさま、貴女はとても憐れなヒト。ははさま、私を…生んでくれて、ありがとう…」








それと、ごめんなさい


私を生んだばかりに、貴女の人生を狂わせてしまった



ははさま ――…


私は貴女を、アイシテイマシタ







ごめんなさい、本当にごめんなさい








「私が生きる意味は、在る―…?」








存在意義を、私は知りたい





×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -